Black Daiamond

Ray

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13, さて、どうしようか

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「…ブラック、何でこれ・・なの?」
    そうティアが水晶に現れたのを見ながらそう聞いてきた。
「…知らない。むしろ、私の方が聞きたい」
    ふるふると首を振りながらそう返した。
「…………」
    ルナは、水晶をじっと見て黙り混んでいる。



「うっわ、アイツ闇だぞ」
「え、マジ?」
「え、どいつ?」
「ほら、ピンクの髪のヤツの隣」
「クラス決めの時のヤツか」
「不吉~」
「しかも、あの家系の奴だぜ?」
「笑えねぇな」
「おい、アイツの髪と瞳の色真っ黒だぞ」
「だから闇なのか」
「恥ずかしくないのか?あんな髪色と瞳で」
「あんな色だから闇なんだよ」

「………」
    …五月蝿い。
「いい加減にして「何を騒いでいるのですか?」
    椅子を蹴り飛ばし、立ち上がったルナが大きな声を出した時、誰かの声がルナの声を遮った。──ゴシュナイト先生だ。
「何を騒いでいるのですか?」
    ゴシュナイト先生は私の水晶を見、僅かに目を見開き、もう一度同じ言葉を繰り返した。
「お前だろ?」
「いや、お前も言っていただろ?」
「私は、関係ないわ」
「お前も言ってたじゃん」
「はぁーー…!擦り付けるの?」
「そもそもお前が…」
「いや、お前も…」
    騒いでいた人達がまた、騒ぎだす。
「何を騒いでいるのですか?」
    三度目だ。さっきよりも声が低い。空気がさっと低くなる。いや、比喩ではない。実際に空気が低くなっていた。ゴシュナイト先生を中心にまわりがパキパキと音をたてまわりの空気を冷やしていき、凍っていく。霜もできてきた。「ヒッ…!」そう騒いでいた人達が声をあげる。
    違和感を感じ、他に得意属性を確かめていた人達も話を止め此方をじっと見る。
「それは私達の先祖“始まりの魔女”侮辱する行為です。“始まりの魔女”は、全ての属性を持ち、全ての魔法を使えたと言われています。
    あなた達の血にもその誇り高い先祖の血を微々たる量だとしても受け継いでいます。今後、そのような行為は控えなさい」
「そ、そんなつもりはありませんでした」
    1人の男の子が足をガクガクと震わせながらそう言った。よく、この状況でそれを言ったな。勇気あるな。
「そ、そうだ」
「侮辱をしようとはしてません…」
「そ、そ、そうだ!」
「そ、そんなのは、いちいちき、気にしているわけないじゃない」
    他の人もそれに続く。
    その言葉を聞き、ゴシュナイト先生は眉をひそめた。
「…………もし・・、そうだとしてもそんなの・・・・で、すむことではありません。
    此処は共に魔女・魔法使いを目指す者達が集まり、学ぶところです。再度言いますが、今後、そのような行為は、控えなさい」
「で、でも…」
「控えなさい」
    再び反論をしようとした男の子にもう一度言った。
「控えなさい」
「「「「「「……………はい」」」」」」





「面倒くさいことになったな」
「…そうですわネ」
    あの後、何だかんだ授業が終わりまわりの視線が少しきつかったから寮にある私の部屋に集まっている。
「…ねぇ、ブラック、さっきの君の悪口を言った人達ってさ……」
「あぁ、多分だが、反省などしていないしこちらを恨んでいるだろうな…」
    ティアの言葉を引き継ぐ形でそう答える。
「証拠にゴシュナイト先生が言って謝る形をしていたが、バッチリ此方を睨んでいたからな」
「…ブラック、僕、胃に穴が空きそうだよ……」
    胃の辺りを手で抑えそう言った。思わず笑ってしまう。
「………ブラック姉様…」
    暫く黙りこんでいたルナがそう声を出した。
「…何だ?」
    ゆるりと首を傾げ、促す。
「やはり納得がいきませんワ!!ブラック姉様は、なにもしていませんのニ!さっきもここに来るまでに他の学年の方々もブラック姉様を見て、何かしら言っていましたワ!それも悪意のあるものばかリ!ブラック姉様は何故、そんなことを言われてもそんなに堂々としておられるのですカ!!!」
    ルナは一気にそう話し、肩で大きく息をした。
「…『真っ黒な髪色に瞳、そんなだから闇属性なんだ!この学校から出ていけ!不吉な女!!』だっけ?あのあの男の子が言っていたのは」
    部屋に来る途中で同じ学年の男の子に言われた言葉を思い出す。そして、ルナを止めるのが大変だったのも思い出す。
「…そんなの出鱈目ですワ。髪と瞳の色は得意属性と全く関係がないことが171年前に証明されていまス。それに、闇属性はイメージ的に人に害を及ぼしたりする属性と言われていますが、全くそんなものではないはずだと存じていますガ…」
    そう、消え入れるような声で言った。
「確かに私のこの瞳の色は日本人でも珍しいな」
「でも…!」
「しかし、そうではないことを信じてくれる人がいればそれでいい。ルナの言うことももっともだ。確かにイラつくこともあった。だが、私はルナとティアが信じてくればそれでいい」
    途中でそう言ったルナの言葉を被せぎみでそう言いきる。
「……そう、ですノ…?」
「あぁ」










    夜になり、皆が寝始めようとした頃。1人の少女が深いフードのついたマントを着、自身の部屋から出た。

    それと同じ頃、ティアは物音に気がつき、自分の部屋の扉を開き、そっと廊下を確かめた。
    そこには、1人の少女がいた。
「……そこで何をしてるの?
───ルナ」
    少女──ルナは、ティアの方を振り返り、
「丁度タイミングが良かったですワ。ティア様も手伝ってくださいまセ」
    とても良い笑顔でそう言った。
    その言葉には疑問符がなく、拒否権が全く与えられていないことにティアは気が付き、強ばった顔で
「よ、喜んで」
    そう、言ってしまった。
    ティアの胃に穴の空くような音がした。









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