Black Daiamond

Ray

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5, 学校へ行こうか

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    卒業式も無事終わり、残りあっという間に月日は過ぎていき、5日、4日、3日、2日、1日そして、今日。

    ついでに言うと、魔法学校に行くかについてと寮生活らしく、入学準備とかその他諸々の許可が私の両親から必要らしい。買い物が終わった翌日にルーとエドが家に来て、両親に取ってくれた。どうやら外国の学校への留学と言う形になっているらしい。(実際にその仮の学校は存在するらしい。魔法界と密かに繋がっている学校で他にも幾つか存在するようだ)

    両親が送ると言ってくれたが、気持ちだけ受け取っておいた。多分そこには行けないと思うし。
    さて、それでどうやって行くかと思う?

    私に撫でてくださいとでも言うように体をスリスリとすり寄せて来た生き物を優しく撫でた。気持ち良いのか海のような氷のような透明感のある青の瞳を細めた。
    答えは分かっている人も多いと思うが、この生き物──ペガサスに乗って行く。マレーフ街で買ってもらったあのペガサスだ。
    名前は、スィニエークにした。愛称は“スィー”。ロシア語で『雪』を意味する。第一印象が雪のように真っ白だったからだ。
    何故ロシア語にしたのかと言うと最近、ロシア系の本を読んでいて、ロシア語のほうがカッコいいんじゃないか。と、思ったところから始まる。







   





「9時40分。…もうそろそろ行くか」
     私はそう呟き、マレーフ街で買ってもらったブラックダイヤモンドの埋め込まれている全体的に黒く、文字盤の文字と針だけが白い懐中時計を着替えた制服こと着物に付ける。「お古だ。使え。下界のリュックや鞄よりはずっとものが入るだろ」と、エドから貰ったトランクを手に持ち、(なんか、このトランク魔法がかかっているのか入れたものがミニチュア見たいに小さくなった。でも、トランクから出したら出した物がもとの大きさ戻った)部屋をぐるりと見渡す。
     6畳ぐらいの洋室にギュウギュウ詰めで殆どの場所を占領されている3つの机。
    3歳ずつ歳が離れているアイドルグッズで溢れかえっている机の姉の愛。最近、両親に内緒でガチャガチャとかのおもちゃを集めている机の妹の優。そして、ポッカリと今は殆ど何も置かれていない空間の私の机。
    何だか、暫く帰ってこれないとなるとどこか悲しくなってくるな。
    ふぅーと息をはき、
「…暫くの間、空けます。
    姉と妹をよろしくお願いします」
    誰もいない部屋で軽く頭を下げる。
    何処からか、風とともに子供の高い笑い声が聞こえてきたのは、きっと気のせいではないだろう。










「2回ほど長期休暇になったら帰ってくる。
    愛、スマホばっか見ずにしっかりと勉強しろよ。
    優、菓子を食べるのは程々にしておけ。
    母さん、からだ壊さないようにな。
    父さん、酒を呑むのは良いが程々にしておけよ」
    玄関の扉の前に立ち、もう卒業式が終わり、休みになった姉と妹、そしてもう少しで背を越すことが出来そうな母─志穂、やや大柄で最近出てきていた腹の肉減ってきている父─秋に一言ずつ話す。
「じゃあ、行ってくる」
    「行ってらっしゃい」と、手を軽く振ってくれた家族を視界の端で見ながら、ゆっくりと玄関の扉を開けた。











    アパートの階段を早足で駆け下りて、外で待っているスィニエークことスィーのもとへ急ぐ。なるべく余裕をもって魔法学校へ行く汽車に乗りたい。
「待たせたなスィー。行くか」
    スィーを軽く撫で、軽くジャンプをし、乗る。
    スィーは、私が乗ったのを確認すると翼を大きく羽ばたかせる。羽ばたかせたことで周りの風がビュオと、音をたてる。そして前足をジャンプをするときのように軽く踏み込み、地面から足が離れ、翼の羽ばたきがさらに速くなる。だんだんとスィーと私の体は浮いていき、ものの数秒で私達は家がミニチュアのように小さく見える高さまで来た。
    飛んだことによる風で私の結んでない髪が後ろに流れる。軽く手で押さえながら、トランクから小さなコンパスを出し、
「スィー、このまま3時の方向に進んでくれ。見えてくるはずだ」
    指示をだした。
    ルーとエドから聞いた話によるとまず、この前買い出しをした時に行った看板のない店に行くらしい。北にずっと進んでいくと見えてくるらしいが、あまりよく分からない。
     それに私、凄い方向音痴だから「全く違う所に行ってしまうかもしれない」と、エドに話したところ「心配するな。何処にでも存在するから間違えても必ず行ける」と、言われた。ますます意味がよく分からない。
    
    取り敢えず、スィーが方向とかが分かる賢い子で良かった。
     ついでに言うと、飛べるようになったのは夜な夜なスィーに乗る練習をしたからだ。夜の空から見る景色は街灯等の光で綺麗とてもだったということは、ここに記しておこう。

    そしてそこからマレーフ街に行き、ずっと奥に進んでいくと黒い汽車があるらしい。午前10時に汽車が出発するらしいから、その汽車に乗れば魔法学校に行けるらしい。

「……」
    暫く景色を見ていたが、夜に飽きるほど見ていたため途端につまらなくなり、他に何もすることがないため鞄から出した教科書を読むことにした。



[ルーウィックはふざけて人間たちの前で老人に化け、箒に飛行魔法をかけ謎の呪文らしきものを叫びながら飛んだと言う。
    それを見た人間達は呪文を本物だと思い、魔女・魔法使いは歳が老いていて箒で空を飛ぶと信じこんだ。
    すぐ魔法大臣からの指示により、忘却呪文で記憶を消させようとしたが、映画、本、アニメなどで既に広まりすぎてしまい、全ての人間の記憶を消すのは困難であり、ルーウィックに1週間の下界への入国禁止と言う軽い罰を与えた。
    その後、魔法の絨毯と言うものも生まれていた。その魔法の絨毯というものは──]



    スィーが速度を落としてきたため、『マーティスの社会日記』をパタンと閉じて、下を見る。
    あっ、見えた。
    スィーにあの看板のない店の前に下ろしてもらい、店の入口を壊さないように気を付けながらスィーも店に入れる。
「エメラルドの旦那とルビーさんと来ていた嬢ちゃんだよな。
    …そうか。今日は入学式だったか。しっかり頑張ってこいよ」
    店に入ると、豪快に笑うマダムさんだっけ?にそう応援のような言葉を投げかけられた。
    ペコリとお辞儀をし、前来たときの記憶を辿りに扉に手を掛けると、カチリと音がした。
「嬢ちゃん、エメラルドの旦那に会ったら『新酒が入った』って、伝えといてくれや」
    マダムさんに扉を開ける直前に言われた。覚えていたら伝えておこう。
    また、ゆっくりと扉を開けると幻想的な景色が広がる。1つ、感嘆の息をもらして、ゆっくりと目的場所に向かって歩き始めた。

    懐中時計を見ると9時50分。
    暫く歩いていたが、なるべく早く着きたいため、スィーに乗っていくことにした。
     スィーのように魔法生物に乗っていくのは別に駄目ではないらしく、空をみれば店で見かけたような魔法生物達が飛んでいた。

     5分ほど飛び続けると黒い汽車らしき物が見えてきた。…5分掛かるって広すぎじゃないか?
(あれか?)
    スィーに下りてもらい、汽車を見る。
真っ黒な艶があって、真ん中に真っ直ぐと赤い線が引かれているデザインの汽車だ。
    汽車のまわりには色々な髪の色、瞳の色、服装の人達が集まり、家族と別れを言ったり、友達と走り回ったり、様々なペットの声が聞こえたり、(これは五月蝿かった)映画のワンシーンを切り取ったような光景で見ていて面白い。
    そう暫く見ていたが、スィーに服をクイクイッと口で引っ張られ、気付く。
    あぁ、そうだ。早く乗らないとな。「ごめんごめん」と、言いながらトランクを車体によいしょっと持ち上げ乗せ、ふと、気が付く。スィー…どうしようか、と。
    スィーは、寂しがり屋で私と離れず、一緒に居たいらしいが、入れるのか?これ。
「……」
    取り敢えず、入ってみることにした。車体にぶつけないようにゆっくりと入れる。怒られたら怒られたらでまぁ、いいか。そう思いつつ。
    すると、


ポンッ


    そんな軽い音をたててスィーが小さくなった。
    そう、言葉通り小さくなった。でも動いているし、すりすりと私にすり寄って来ることから、間違いなくこれは自分のペガサスである、と考える。本当にただ小さくなっただけなんだろう。よく分からないが多分、エドから貰ったトランクと同じ原理なのだろう。
    取り敢えず席に着きたいからスィーを自分の掌から肩に乗せ、奥に進んで行く。どうやらこの汽車の席は座席とかではなく個室のようだ。
    扉の向こうから話し声やらかが聞こえているため、殆ど埋まっているのだろう。それに、看板がかかっている。
     個室があるということは長いこと揺れ、動くということだと思い、空いている個室を探すため、更に奥に進んで行く。


    一番、奥の車体まで来た。ここら辺なら、空いているか?












「……?」
    何か怒鳴り声が聞こえてくる。どうしたんだ?
    気になったため、声のする方に足を進めることにした。1歩、2歩、近づくごとに声が大きくなっていく。
(いた…)
    一番奥の通路だ。
    それを塞ぐようにして、がたいのいい男子が数人集まっている。声の主はコイツらだったみたいだ。…五月蝿いな。
    更に近づいてみる。遠くから見ては分からなかったけれども、がたいのいい男子に囲まれるように女の子がいた。



「………」
    ほぉーう。
    男子でよってたかって女の子をいじめているのか?感心できないなー。


    私は、まだ喚き散らしている一人男子の肩にそっと手を置く。
    そして普段通りに自然に笑い、
「何をしているんだ?」
     そう声をかけた。







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