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第三章 火の勇者 激突編

八十.ドワーフロリっ子勇者の奥の手

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 魔族長ブネリの居城。広い中庭に突如現れた魔物化したビーン。風の勇者リーズがグレモリーと激闘を繰り広げている最中、こちらの闘いも激化していた。


「シネェ~シネシネシネェ~~」

 魔物化したビーンの異形と化した口より、怒りに任せて放たれる妖気砲。しかし、単調な攻撃のため、ポポロンはハンマーを持っているとは思えない軽快な動きで躱し、ビーンとの距離を詰めていく。

 中庭は既に地形が変わっていた。地面は隆起し、視界も遮られていく。ポポロンは、大胆かつ着実に、自我を失ったビーンを追い詰めていた。

「これはマロンの分だよっ!」

 ハンマーによる強烈な一撃。腕を交差させて防御したにもかかわらず口から血を吐き出すビーン。それだけポポロンの攻撃力は凄まじいものだった。

「さぁ、次はドロップの分行くよっ!」

「あが、あがががが。うごぉおおおおお!」

 ポポロンが次なる一撃を放とうとしたその時、突然ビーンが苦悶の表情となり、血走った瞳をグルグルさせ、口から涎を垂らし、地面に転がりのたうち回り始めた。

「おっとっと。ちょっと、大丈夫? 君」

 ポポロンが打ちおろそうとしたハンマーを止めた瞬間、ビーンの全身から目に視える妖気オーラが放たれ、ポポロンが吹き飛ばされる。土煙で視界が遮られる中巨大な腕・・・・が伸び、彼女の身体より何倍も大きな掌が、土の勇者を壁へ叩きつけた!

「っと……びっくりしたぁ」

 ハンマーで衝撃を和らげたポポロンだったが、土煙が収まった場所には体長五メートルはある巨大な異形が立っていた。六本の腕が一気に伸び、土の勇者を押し潰さんと迫る!

「土属性スキル――土隆障壁どりゅうしょうへきだよっ!」

 地面へハンマーを叩きつけ、土壁を創る事で巨大な腕から身を守る土の勇者。しかし、壁は一瞬にして崩され、続けて放たれる先程より何倍も強力となった妖気砲にポポロンの身体が吹き飛ばされてしまう。

「いやぁ~すごいねっ!  ボクを吹き飛ばすなんて、中々出来ないよっ。……かはっ!」

 どうやら内臓を痛めたらしい。口から血を吐き出すポポロン。土壁によって巨大な腕を躱しても、妖気砲がある。そもそも回避しつつ近づこうにもリーズほどのスピードが彼女にはないのだ。

 ビーンが巨大化した事で、戦況は逆転……したかに見えた。

「シ……シネェ~~!」

「もう~~しょうがないなぁ~普段はあの子シャイだし、家が壊れる・・・・・から呼び出さないんだけど、今日は誰も居ないし、いいよね?」

 ポポロンがそう呟いた瞬間、彼女の全身が黄色い光を放つ。妖気砲が弾かれ、黄色い光がだんだんと彼女の背後で巨大な何かの形を成していく……。

【お呼びですか、ご主人様】
土精霊ノーム。出番だよっ! 金剛合体・・・・だよっ!」

 それは例えるなら大地を護る黄金の巨人。ビーンと同じ大きさの全身黄金色の巨人。そして、胸の当たりに空洞が出来、ポポロンが吸い込まれていく。ノームと彼女が一体になった瞬間、土精霊ノームの瞳孔が黄色く光り、黄金の巨人が此処に顕現した――

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