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幼年期
#23 騒然とする闘技場
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さぁさぁ今年もやって参りました、主席次席対抗トーナメント、解説はこの私、レイ=グラントがさせて頂きます、よろしくお願いします。
あ、そうそう、今年からルールが少々変わり、AとBの2つに別れ、昨年の優勝タッグと最上級生はそれぞれのシード枠となるそうです、少し……暇ですね。
と、俺は客席でク○ス·ペプラー風に解説を始める。
おっと……そうこうしているうちに最初の対戦カードの発表です!
一回戦は3年対1年!!
おっと……これは1年生、不利な展開です……どう切り抜けるの……
そこで俺の脳内解説は途切れる。
「ど、どういうことだ?」
ふいにそんな言葉が口から溢れた。
似ていた、あまりにも似すぎていた。
1年、主席クルシュ=リバリンスの顔が、かつて記憶の奥底に眠っていた“南幹太”その人に。
「もしかして……俺や四爪さんと同じで転生か転移でもしてきた……のか?」
ありえる……ありえる!!
その瞬間嬉しさで頭が一杯になる。
まず、何から話そう、まずはお礼と謝罪しなきゃだよな……今のうちに考えとかないと。
色々と考え事をしているとターシャが下を向く俺の顔を覗き込み話しかけてきた。
「なにブツブツ言ってるの?早く控室行こ?」
「あ、おぉう」
考え事に夢中になっていた俺はターシャに話しかけられ、やっと我に返る。
今はトーナメントに集中集中!
そうして、俺達二人は自分たちBグループの試合が行われる、第二闘技場へと向かうのだった。
________________________________________________
第二闘技場はもう4年対5年の試合が始まっていた、結果はそれはそれはあっけなく5年の勝利。
まぁ一昨年までならこれが普通であっただろう、一昨年“まで”は。
「選手の入場です!」
その掛け声と共に歓声が上がる。
その歓声は俺とターシャ、5年の二人が出てくると更に大きくなる。
そして、解説が去年と同じように俺達の紹介をする。
中心近くで俺達4人は向き合う。
すると5年の主席が口を開く。
「ねぇ、お二人さん、ここは勝ちを譲ってくれねぇかな?」
「は?何言ってるんですか」
「いやいや、もし後輩に負けたら恥ずかしいじゃん?だから……」
主席が続けてなにか口にしようとしたその時、ターシャがそれを遮る。
「フフフ、上級生の主席が八百長とは……そんなに怖がっていてほんとに勝負なんて出来るんですか?おっとすみません、口が滑ってしまいました」
そう言ってターシャは、舌をペロッと出す。
おお、煽る煽る。
するとその言葉に釣られた主席は頭に青筋を浮かべこちらを睨む。
「畜生……ちょっと顔が良いからってバカにしやがって……もうそんな口を聞けないようにボロボロになるまでいたぶってやる……」
ケケケ、と主席が笑う、とてもいやらしい目だ。
おいおい死んだわコイツ。
俺は静かに心の中で手を合わせる、南無阿弥陀仏……
そして、ターシャに顔を向けると……悪い顔をしていた、それはそれは悪い顔を。
きっと思い通りの反応をしてくれたからだろう。
ターシャ、お主も悪よのう……
「両者!構えて!」
その掛け声に合わせて俺達は構え、戦闘態勢をとる。
「はじめ!」
その掛け声と共に俺は〔光壁〕で防壁を目の前に張り、相手の出方を見る……はずだった。
「へぶっ!?」
そんな声を出して人が激突した、うん、主席が光壁に激突した。
きっと風魔法で加速したあとターシャに突撃するつもりだったんだろう、まぁそれも悪手だが。
光壁にぶつかった主席は鼻血を吹き出し、うつ伏せに倒れた、手足が痙攣しピクピクしたその様はマヌケそのものだった。
会場全体が騒然とする、もちろん俺達も、相手の次席も。
そんななか、いち早く正気を取り戻した俺は人を殺せない程度に出来るだけ低出力にした〔アイシクルストーム〕を放つ。
もちろん相手はポカーンとしたまんまだったため、避けれるはずもなく、氷の嵐に包まれ、その場に倒れ込んだ。
もちろん歓声など上がるはずもなく、上がっても、「お、おお……」程度だ、ここまでになると、もういっそ笑い飛ばしてくれた方がマシなんだが、笑いなど一つもない。
そんな状況で審判がこう下す。
「し、勝者、レイ=グラント、ターシャ=シルフィンドペア……」
どうやら審判でさえこの状況に動揺しているようだ。
でくのぼうの様になってしまっている。
「わ、わーい」
「やったー」
俺と、ターシャもこの程度のことしか言えなかった。
これも全部全部、あの主席のせいだ、うん、そうなんだ。
それからその主席の渾名が「激突くん」「自爆兵」というものになったのは秘密。
________________________________________________
場所は変わり、第一闘技場。
第一闘技場は第二闘技場とは別の理由で騒然としていた。
今、第一闘技場は恐怖で満たされていた。
「さぁて……次は誰が、僕の遊び相手かな?」
そう彼……クルシュ=リバリンスは不敵に笑うのだった。
第一闘技場決勝進出者
1年主席クルシュ=リバリンス
1年次席レイラ=ロランディア
あ、そうそう、今年からルールが少々変わり、AとBの2つに別れ、昨年の優勝タッグと最上級生はそれぞれのシード枠となるそうです、少し……暇ですね。
と、俺は客席でク○ス·ペプラー風に解説を始める。
おっと……そうこうしているうちに最初の対戦カードの発表です!
一回戦は3年対1年!!
おっと……これは1年生、不利な展開です……どう切り抜けるの……
そこで俺の脳内解説は途切れる。
「ど、どういうことだ?」
ふいにそんな言葉が口から溢れた。
似ていた、あまりにも似すぎていた。
1年、主席クルシュ=リバリンスの顔が、かつて記憶の奥底に眠っていた“南幹太”その人に。
「もしかして……俺や四爪さんと同じで転生か転移でもしてきた……のか?」
ありえる……ありえる!!
その瞬間嬉しさで頭が一杯になる。
まず、何から話そう、まずはお礼と謝罪しなきゃだよな……今のうちに考えとかないと。
色々と考え事をしているとターシャが下を向く俺の顔を覗き込み話しかけてきた。
「なにブツブツ言ってるの?早く控室行こ?」
「あ、おぉう」
考え事に夢中になっていた俺はターシャに話しかけられ、やっと我に返る。
今はトーナメントに集中集中!
そうして、俺達二人は自分たちBグループの試合が行われる、第二闘技場へと向かうのだった。
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第二闘技場はもう4年対5年の試合が始まっていた、結果はそれはそれはあっけなく5年の勝利。
まぁ一昨年までならこれが普通であっただろう、一昨年“まで”は。
「選手の入場です!」
その掛け声と共に歓声が上がる。
その歓声は俺とターシャ、5年の二人が出てくると更に大きくなる。
そして、解説が去年と同じように俺達の紹介をする。
中心近くで俺達4人は向き合う。
すると5年の主席が口を開く。
「ねぇ、お二人さん、ここは勝ちを譲ってくれねぇかな?」
「は?何言ってるんですか」
「いやいや、もし後輩に負けたら恥ずかしいじゃん?だから……」
主席が続けてなにか口にしようとしたその時、ターシャがそれを遮る。
「フフフ、上級生の主席が八百長とは……そんなに怖がっていてほんとに勝負なんて出来るんですか?おっとすみません、口が滑ってしまいました」
そう言ってターシャは、舌をペロッと出す。
おお、煽る煽る。
するとその言葉に釣られた主席は頭に青筋を浮かべこちらを睨む。
「畜生……ちょっと顔が良いからってバカにしやがって……もうそんな口を聞けないようにボロボロになるまでいたぶってやる……」
ケケケ、と主席が笑う、とてもいやらしい目だ。
おいおい死んだわコイツ。
俺は静かに心の中で手を合わせる、南無阿弥陀仏……
そして、ターシャに顔を向けると……悪い顔をしていた、それはそれは悪い顔を。
きっと思い通りの反応をしてくれたからだろう。
ターシャ、お主も悪よのう……
「両者!構えて!」
その掛け声に合わせて俺達は構え、戦闘態勢をとる。
「はじめ!」
その掛け声と共に俺は〔光壁〕で防壁を目の前に張り、相手の出方を見る……はずだった。
「へぶっ!?」
そんな声を出して人が激突した、うん、主席が光壁に激突した。
きっと風魔法で加速したあとターシャに突撃するつもりだったんだろう、まぁそれも悪手だが。
光壁にぶつかった主席は鼻血を吹き出し、うつ伏せに倒れた、手足が痙攣しピクピクしたその様はマヌケそのものだった。
会場全体が騒然とする、もちろん俺達も、相手の次席も。
そんななか、いち早く正気を取り戻した俺は人を殺せない程度に出来るだけ低出力にした〔アイシクルストーム〕を放つ。
もちろん相手はポカーンとしたまんまだったため、避けれるはずもなく、氷の嵐に包まれ、その場に倒れ込んだ。
もちろん歓声など上がるはずもなく、上がっても、「お、おお……」程度だ、ここまでになると、もういっそ笑い飛ばしてくれた方がマシなんだが、笑いなど一つもない。
そんな状況で審判がこう下す。
「し、勝者、レイ=グラント、ターシャ=シルフィンドペア……」
どうやら審判でさえこの状況に動揺しているようだ。
でくのぼうの様になってしまっている。
「わ、わーい」
「やったー」
俺と、ターシャもこの程度のことしか言えなかった。
これも全部全部、あの主席のせいだ、うん、そうなんだ。
それからその主席の渾名が「激突くん」「自爆兵」というものになったのは秘密。
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場所は変わり、第一闘技場。
第一闘技場は第二闘技場とは別の理由で騒然としていた。
今、第一闘技場は恐怖で満たされていた。
「さぁて……次は誰が、僕の遊び相手かな?」
そう彼……クルシュ=リバリンスは不敵に笑うのだった。
第一闘技場決勝進出者
1年主席クルシュ=リバリンス
1年次席レイラ=ロランディア
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