レイジングブレイクス

建月 創士

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ミラスラス誘拐編

#4 少年、異世界のロボットを知る

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 耀が目蓋を開けると案の定そこには整った秋穂の顔があり、すぅーすぅー……と静かに寝息を立てている。
 流石にビンタを食らうのは嫌なため耀は秋穂を起こさないようにベッドからそろりそろりと体を引く。
 
「先に起きれた、ラッキーだな」

 ふぅ……と息をつき、窓を覆うカーテンを開ける。
 窓から日の光が差し込み、部屋を照らす。
 その光に反応したのか秋穂は少し眉をひそめ、小さく呻く。
 その様子に耀はなるべく秋穂を起こさぬよう静かに着替え、部屋を出る。
 すると部屋の前にレイモンドが立っており、耀の姿を見てから丁寧にお辞儀をする。

「おはようございます、イクタ様、お食事の準備が出来ておりますが、ミナガワ様はまだ眠ってらっしゃいますか?」
「まだ寝てますね、起こしたほうが良いですか?」
「後々一人でお食事をとってもらうわけにはいけませんので……」
「それなら起こしてきます」
「すみません、お手数をお掛けします」

 そうして耀は踵を返し、部屋に蜻蛉帰りする。
 そして秋穂の頭に手を乗せ、よしよし、と2往復程度撫でる、幼少期から秋穂をこれが一番手っ取り早くて楽だと知っている、正直原理はよくわからないが。
 数秒後、むくむく、と寝ぼけた様子で秋穂が上体を起こす、そして耀が「おはようさん」と声をかけると、秋穂は「ん……」と返事をし自分からベッドを降り、行動をしだす。
 あとは簡単、部屋を出て出てくるのを待つだけだ。
 そのため耀は部屋から出て、レイモンドと待つ。
 約10分後、いつも通りのAチームの作業服を着て工具箱を片手に持った秋穂が出てきた、その目はもう完全に覚めている。

「お待たせしました」
「それでは、食事をとりに行きましょう」

 こうしてミラスラスでの新生活2日目が始まった。
_______________________________________________

「さぁ!食事もとったことだし!ドックに行きましょ!早く早く!」

 食事を終え、真っ先に飛び出したのはそんな言葉だった。
 そしてその言った主の2つの瞳は光り輝いている、もちろんそれは言うまでもない、秋穂の瞳である。
 耀は少し苦笑いを浮かべ、目線でレイモンドに確認を取る。
 するとレイモンドは笑顔を浮かべ、こう言う。

「良いですね、行きましょう、ここ、ミラスラスのことについては歩いているときにでも話しましょう」
「やった!」

 そうして耀達三人は食堂を出て、ドックへ向かう。
 

「さて、まず何について聞きたいですか?できる範囲でお答えしますよ」

 歩き始めてからすぐレイモンドは二人にそう聞く。
 耀はまずずっと気になっていた魔法について聞く。

「まず最初にこの星には魔法が存在してるんですよね?どんな活用の仕方をしてるんですか?」
「魔法だけでなく、魔術というものも存在してます、魔法と魔術は私達の生活の中枢、例えばこの建物内の明かりを灯しているのは魔術公式と呼ばれるものですし、腐りやすいものを守るため物を冷やすこと、あとは身を守るための護身術で魔法を習う方も多くいます、それと……そうですね、ミナガワ様のとても気になっている“アレ”にも魔法や魔術は活用されています」
「へ~地球でいうところの電気みたいな役回りってわけか」
「レイモンドさん!そんなことより!ロボットのことを教えてくださいよ!」

 秋穂はレイモンドに詰め寄り、急かす。
 すると「しょうがないですね……」と困った顔をし、話し始める。

「あのミナガワ様のロボットと呼んでらっしゃる物は正式名称[エーテルジャイアント]通称[AG]です」
「え!?何そのネーミング!ダサい!もっとなんかあったはずでしょう!あんなカッコいいんですから!」

 正直耀もダサいと思ったため秋穂の主張に何も口を挟むことができない。
 するとその言葉にレイモンドは落ち込んだ顔で謝る。

「……すみません、今更変えることなど出来ないのです」
「い、いえ!大丈夫です!……ほら!秋穂も言い過ぎたこと反省しろ」
「だって、耀も思ったでしょ!?」
「……俺も反省するから……レイモンドさん、続きよろしくお願いします……」
「は、はぁ……えー、AGはすべて魔法や魔術で構成されてると言っても過言では無いほどその2つを活用して構成されています、フレームの駆動系から装甲の硬度や装備まで、すべてがです」
「あ、そこでの疑問なんですが、そんなに完全に出来上がっているAGがあるのにレイジング作ろうと?AGをそのままレイジングブレイクスに出せば良かったのでは?」
「良いことを聞いてくれました、先程AGは魔法や魔術で構成されていると言っても過言ではないとお伝えしましたが、その2つには魔力エーテルが必要不可欠になるのです、しかし、その必要な魔力が地球には確認できないのです、そのため我々のAGは地球で行われるレイジングブレイクスには出場できない、ということになります」
「はいはい、そして?」
「本音を言ってしまうと、こちらに出れるだけの技術があるのにあんなに楽しそうな遊戯に出場できないなどとても悔しい、だから地球との貿易で豊かになってきた今、レイジングを作れば出れる、と思った代表が国王に進言してみたところ、了承されまして、現在に至ると言うことです」

 レイモンドがそう言い終わると秋穂が焦ったように口をだす。

「ち、ちょっと待ってください、つまりこの世界に電気という概念は存在しない、と?」
「地球の方がハツデンキというものを動かしているのは見たことがありますが、どんなものかはよく知りません」
「これは……面倒ね……」
「電気が無いとレイジングは動かせないからな……」

 そうして歩いているとドックについた。
 そして、秋穂は焦った様子でドックに急いで入り、ドック内のみずしらずの人間に大声で聞く。

「今AGの設計図はありますか!?あるなら持ってきてください!できるなら本物のAGも欲しいので、あるならそれも持ってきてください!」

 その瞳にはウキウキ気分の輝きはなく、瞳の奥に眠る熱き真剣そのものの眼差しのみその瞳には残っていた。
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