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カウドゥール
6世とナッちゃんで節分
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「どうもこんにちは、Pお兄さんです。今回は2月3日という事で“地球”という世界の“日本”という地域での『節分』なる行事を行(おこな)ってみたいと思います」
穏やかに微笑みながら、Pが手持ちの編みカゴに手をつっこみ、中に入っている“何か”をかき混ぜた。
……どうやら、会話から察するにカゴの中には“豆”が入っているらしい。
「人に豆をぶつけるだなんて、乱暴な行事ですねぇ」
豆をぶつけられるためにPの向かいに立って、渋々身構えていた護衛兵・Znが呆れる。
「鬼は外、だなんてアイツでいいじゃないですか。あの黒髪赤瞳。お似合いじゃないですか。鬼、というかもう、あのクソ」
Znが吐き捨てる。彼は、諸事情あってKが大嫌いである。
「Kさんに豆をぶつけるだなんて、可哀想だろ」
Pがぷぅ、と憤る。
「……私は可哀想ではないのですか」
「うっせぇな。俺の幸せ・ゲン担ぎのために豆くらい黙って投げつけられてろよ」
Pは屈託のない笑顔でそう言うと、目の前のZnに向かって、思いっきり“豆”を投げつけた。
ところで、Znも“地球”という世界の“日本”の行事の事は、調べて知識として多少は知っている。
………我が王が自らに向かって投げた“豆”は、明らかに……
「~~~~マカダミアナッツ!」
想像していたよりも明らかに大きい“モノ”が投げつけられたZnは、思わずこれを避けた。
「ちょ、何よけてんだよ。当たれよ。鬼。災厄」
「ちょっと待って下さい! 投げるのは大豆という、小さい豆でしょう!? 何ですか、マカダミアナッツって! でかいですよ! ……って、痛い!」
喋り散らすZnに向かって、問答無用でPはマカダミアナッツを全力で投げた。
「でかい豆の方が効果ありそう」
「変わらねぇよ! やめろ! っつーか、マカダミアナッツなんていつ用意したんだよ! さっき、机の上にあった“大豆袋”はフェイクか、ちきしょう!」
「……そう? 仕方ないなぁ……」
Znの必死のツッコミに、P様が舌打ちをしながら机の方に歩み寄り、何やら用意を始めた。ZnからはPの背中で、Pが何をしているのかが見えない。
ふと、嗅ぎ覚えのある匂いがした。
「…………納豆はやめろよ………?」
Pの背中に向かって、Znが呟く。
それを受けたPが、いぶかしげに振り向いた。その顔は、苦悶に彩られており美しい。Pが振り向いたおかげで彼の手元が見えたが、そこにはやはり、納豆があった。
「……マカダミアナッツもダメ。納豆もダメ、ときたら一体どうしろというんだ……」
美しい苦悶の表情から放たれる会話の内容ではない。
「……おとなしく大豆使えよ……」
「納豆も大豆だぞ……」
「やかましい」
「じゃあ、“コレ”はどうよ」
Pが楽しそうに笑いながら、机の上にあった袋に手を伸ばした。
あぁ。今年も安定の漫才やり取りだなぁ、と、Znは“投げつけられて床に落ちたソラ豆”を踏んづけて滑って転んだ状態で、天井を見上げたまま思った。
ソラ豆は臭かった。
穏やかに微笑みながら、Pが手持ちの編みカゴに手をつっこみ、中に入っている“何か”をかき混ぜた。
……どうやら、会話から察するにカゴの中には“豆”が入っているらしい。
「人に豆をぶつけるだなんて、乱暴な行事ですねぇ」
豆をぶつけられるためにPの向かいに立って、渋々身構えていた護衛兵・Znが呆れる。
「鬼は外、だなんてアイツでいいじゃないですか。あの黒髪赤瞳。お似合いじゃないですか。鬼、というかもう、あのクソ」
Znが吐き捨てる。彼は、諸事情あってKが大嫌いである。
「Kさんに豆をぶつけるだなんて、可哀想だろ」
Pがぷぅ、と憤る。
「……私は可哀想ではないのですか」
「うっせぇな。俺の幸せ・ゲン担ぎのために豆くらい黙って投げつけられてろよ」
Pは屈託のない笑顔でそう言うと、目の前のZnに向かって、思いっきり“豆”を投げつけた。
ところで、Znも“地球”という世界の“日本”の行事の事は、調べて知識として多少は知っている。
………我が王が自らに向かって投げた“豆”は、明らかに……
「~~~~マカダミアナッツ!」
想像していたよりも明らかに大きい“モノ”が投げつけられたZnは、思わずこれを避けた。
「ちょ、何よけてんだよ。当たれよ。鬼。災厄」
「ちょっと待って下さい! 投げるのは大豆という、小さい豆でしょう!? 何ですか、マカダミアナッツって! でかいですよ! ……って、痛い!」
喋り散らすZnに向かって、問答無用でPはマカダミアナッツを全力で投げた。
「でかい豆の方が効果ありそう」
「変わらねぇよ! やめろ! っつーか、マカダミアナッツなんていつ用意したんだよ! さっき、机の上にあった“大豆袋”はフェイクか、ちきしょう!」
「……そう? 仕方ないなぁ……」
Znの必死のツッコミに、P様が舌打ちをしながら机の方に歩み寄り、何やら用意を始めた。ZnからはPの背中で、Pが何をしているのかが見えない。
ふと、嗅ぎ覚えのある匂いがした。
「…………納豆はやめろよ………?」
Pの背中に向かって、Znが呟く。
それを受けたPが、いぶかしげに振り向いた。その顔は、苦悶に彩られており美しい。Pが振り向いたおかげで彼の手元が見えたが、そこにはやはり、納豆があった。
「……マカダミアナッツもダメ。納豆もダメ、ときたら一体どうしろというんだ……」
美しい苦悶の表情から放たれる会話の内容ではない。
「……おとなしく大豆使えよ……」
「納豆も大豆だぞ……」
「やかましい」
「じゃあ、“コレ”はどうよ」
Pが楽しそうに笑いながら、机の上にあった袋に手を伸ばした。
あぁ。今年も安定の漫才やり取りだなぁ、と、Znは“投げつけられて床に落ちたソラ豆”を踏んづけて滑って転んだ状態で、天井を見上げたまま思った。
ソラ豆は臭かった。
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