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第92話【幕間】ペンバートン家の焦り
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アズベルとロミーナが学園に到着する少し前――来年度の新入生を迎え入れるための準備が着々と進められていく中、ペンバートン家の姉妹は学園内にある一室に呼びだされた。
その部屋を用意し、彼女たちをここへ招き入れたのは母親であるヘレナ・ペンバートンであり、彼女はふたりの優秀な娘に末っ子であるロミーナを今後どうしていくのか、その計画の一端を説明した。
「ほ、本気ですのね、お母様……」
まず、次女のカテリノは驚きの表情を浮かべる。
これまで何度かロミーナを陥れる作戦を考案し、実行してきたがことごとく失敗。さらに腕利きの魔法使いまで雇い、ウィドマーク家を襲撃させたが、それすら失敗に終わっていた。
こうした事情から、もしかするとペンバートン家が抱えている闇をロミーナに押しつけて追いだすという作戦自体をあきらめたんじゃないかと考えていたが、母親のヘレナはむしろ躍起になっていた。
おまけに今回の作戦はいつもの母親とは違い、冷静さを欠いているように映った。
なので、カテリノとしては少し疑問を抱いたまま作戦に臨まなければならず、モヤモヤした気持ちが残ってしまった。
一方、対照的に長女のエクリアは乗り気だった。
彼女はどちらかというと母親の気質に近いタイプの人間なので、思考回路も似通ってくるのか「まさに自分が思い描いていた展開」とばかりに珍しく興奮気味であった。
姉妹と親子間でわずかな温度差が生じているものの、ヘレナはそれをまったく気にすることなく説明を続ける。
「今回がラストチャンスだと思いなさい。失敗すればもうこれまでのような生活を送れなくなってしまう……それを肝に銘じておくのよ」
いつになく厳しい母の口調に、姉妹の背筋はたまらずピンと伸びる。
同時に、それほど追い詰められている状況なのだと改めて認識した。
本来であればウィドマーク家もろともロミーナは沈んでいるはずだったのが、ここへきて妙な踏ん張りを見せている。
誤算としては、辺境領主と侮っていたウィドマーク家に思いのほか抵抗する力があったことだ――が、それは些細なものだとヘレナは深く気にしていない。
こちらがきちんと対策を講じれば、次こそ封じ込めると信じて疑わなかった。
「さあ……いきなさい、ふたりとも。ペンバートンの明るい未来はあなたたちふたりで築いていくのですよ」
「「はい」」
母親から檄を飛ばされたエクリアとカテリノは部屋を出ていく。
これまで通りの生活を維持するため、姉妹は末っ子ロミーナをこの学園で奈落の底に突き落とす決意を固めたのだった。
その部屋を用意し、彼女たちをここへ招き入れたのは母親であるヘレナ・ペンバートンであり、彼女はふたりの優秀な娘に末っ子であるロミーナを今後どうしていくのか、その計画の一端を説明した。
「ほ、本気ですのね、お母様……」
まず、次女のカテリノは驚きの表情を浮かべる。
これまで何度かロミーナを陥れる作戦を考案し、実行してきたがことごとく失敗。さらに腕利きの魔法使いまで雇い、ウィドマーク家を襲撃させたが、それすら失敗に終わっていた。
こうした事情から、もしかするとペンバートン家が抱えている闇をロミーナに押しつけて追いだすという作戦自体をあきらめたんじゃないかと考えていたが、母親のヘレナはむしろ躍起になっていた。
おまけに今回の作戦はいつもの母親とは違い、冷静さを欠いているように映った。
なので、カテリノとしては少し疑問を抱いたまま作戦に臨まなければならず、モヤモヤした気持ちが残ってしまった。
一方、対照的に長女のエクリアは乗り気だった。
彼女はどちらかというと母親の気質に近いタイプの人間なので、思考回路も似通ってくるのか「まさに自分が思い描いていた展開」とばかりに珍しく興奮気味であった。
姉妹と親子間でわずかな温度差が生じているものの、ヘレナはそれをまったく気にすることなく説明を続ける。
「今回がラストチャンスだと思いなさい。失敗すればもうこれまでのような生活を送れなくなってしまう……それを肝に銘じておくのよ」
いつになく厳しい母の口調に、姉妹の背筋はたまらずピンと伸びる。
同時に、それほど追い詰められている状況なのだと改めて認識した。
本来であればウィドマーク家もろともロミーナは沈んでいるはずだったのが、ここへきて妙な踏ん張りを見せている。
誤算としては、辺境領主と侮っていたウィドマーク家に思いのほか抵抗する力があったことだ――が、それは些細なものだとヘレナは深く気にしていない。
こちらがきちんと対策を講じれば、次こそ封じ込めると信じて疑わなかった。
「さあ……いきなさい、ふたりとも。ペンバートンの明るい未来はあなたたちふたりで築いていくのですよ」
「「はい」」
母親から檄を飛ばされたエクリアとカテリノは部屋を出ていく。
これまで通りの生活を維持するため、姉妹は末っ子ロミーナをこの学園で奈落の底に突き落とす決意を固めたのだった。
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