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第18話 乱入者
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森の中で発見したのは俺たちの慎重を遥かに超える超巨大な蕾だった。
もしかしたら、ローエン地方で起きている凶作の原因なのではないかと予測した俺はそいつを調査するため近づいていくのだが、ここで思わぬ乱入者たちが。
「あれは……猿?」
見上げた先には木々から伸びる枝が複雑に絡み合っているのだが、その上に小さな影がいくつか存在していた。
目を凝らしてみると、その正体は無数の猿。
体毛は紫色をしているため、通常の猿とは異なる――言ってみれば、猿型のモンスターであった。
「ソリス様! こいつらは魔猿です!」
「ま、魔猿?」
「以前とある森でこいつらとは別の群れと遭遇し、苦戦を強いられました! 通常の猿よりも獰猛でかなり手強いですぞ!」
前線に出ていた頃の体験談を語ってくれたローチ。
おかげでヤツらの正体がハッキリした。
魔猿。
騎士団でさえ手を焼くような相手というなら、素人集団である俺たちでは太刀打ちできないかもしれない。
――だが、みんなは意外とヤル気満々だった。
「やってやろうぜ、領主様!」
「きっとあの蕾が俺たちの農場をめちゃくちゃにした元凶なんだ!」
「ヤツらがそれを守ろうっていうなら容赦はしねぇよ!」
血気盛んな村の男たち。
さらにミリアを守っていたリタも続く。
「戦闘でしたらおまかせください。かつてグリンハーツ家を陰から支えた偉大な先人たちが残したメイド流格闘術でお相手します」
「そんなのあるんだ……」
「でしたらこちらはアースロード執事流格闘術をご覧にいれましょう」
「こっちにもあった!?」
いつの間にか執事のスミゲルも臨戦態勢となっている。
……これマジで正面からぶつかり合っても勝てるんじゃないかな。
心配なのはミリアだけだ。
「ミリア、君はこっちへ――ミリア?」
俺の方へ呼び寄せようと声をかけるが、そのミリアはずっと魔猿たちを見つめて立ち尽くしている。
それは決して恐怖から足が動かなくなったとか、そういうわけではなさそうだった。
一体どうしたというのか。
すぐに彼女の手を取ってこちらへ引き寄せようとしたのだが……その時、ふとある事実に気づく。
「こいつら……全然襲って来ない?」
魔猿たちは赤い目をギラつかせてこちらの様子をうかがっているが、あちらはあちらでまったく動かないのだ。
ローチからの情報では通常の猿よりも獰猛で討伐に苦戦したという。
それ自体は事実なのだろう。
……けど、この森の魔猿はそういった獰猛さとか野蛮さとはかけ離れていた。
冷静に状況を分析している。
さっきまではいつ襲われるか分からないと焦っていたけど、落ち着いて振り返ってみたら向こうは何もしていないじゃないか。
とはいえ、何も理由がないのにこれだけの数が集まってくるとも思えない。
そこには必ず何か理由があるはずなのだ。
「となると……やっぱこいつしかないか」
魔猿をここに集結させたのも、この巨大な蕾なのか。
「ミリア、君はこの植物について何か知っているんじゃないか?」
なんとなくそうじゃないかって予感はしたが――それは合っていたらしい。
もしかしたら、ローエン地方で起きている凶作の原因なのではないかと予測した俺はそいつを調査するため近づいていくのだが、ここで思わぬ乱入者たちが。
「あれは……猿?」
見上げた先には木々から伸びる枝が複雑に絡み合っているのだが、その上に小さな影がいくつか存在していた。
目を凝らしてみると、その正体は無数の猿。
体毛は紫色をしているため、通常の猿とは異なる――言ってみれば、猿型のモンスターであった。
「ソリス様! こいつらは魔猿です!」
「ま、魔猿?」
「以前とある森でこいつらとは別の群れと遭遇し、苦戦を強いられました! 通常の猿よりも獰猛でかなり手強いですぞ!」
前線に出ていた頃の体験談を語ってくれたローチ。
おかげでヤツらの正体がハッキリした。
魔猿。
騎士団でさえ手を焼くような相手というなら、素人集団である俺たちでは太刀打ちできないかもしれない。
――だが、みんなは意外とヤル気満々だった。
「やってやろうぜ、領主様!」
「きっとあの蕾が俺たちの農場をめちゃくちゃにした元凶なんだ!」
「ヤツらがそれを守ろうっていうなら容赦はしねぇよ!」
血気盛んな村の男たち。
さらにミリアを守っていたリタも続く。
「戦闘でしたらおまかせください。かつてグリンハーツ家を陰から支えた偉大な先人たちが残したメイド流格闘術でお相手します」
「そんなのあるんだ……」
「でしたらこちらはアースロード執事流格闘術をご覧にいれましょう」
「こっちにもあった!?」
いつの間にか執事のスミゲルも臨戦態勢となっている。
……これマジで正面からぶつかり合っても勝てるんじゃないかな。
心配なのはミリアだけだ。
「ミリア、君はこっちへ――ミリア?」
俺の方へ呼び寄せようと声をかけるが、そのミリアはずっと魔猿たちを見つめて立ち尽くしている。
それは決して恐怖から足が動かなくなったとか、そういうわけではなさそうだった。
一体どうしたというのか。
すぐに彼女の手を取ってこちらへ引き寄せようとしたのだが……その時、ふとある事実に気づく。
「こいつら……全然襲って来ない?」
魔猿たちは赤い目をギラつかせてこちらの様子をうかがっているが、あちらはあちらでまったく動かないのだ。
ローチからの情報では通常の猿よりも獰猛で討伐に苦戦したという。
それ自体は事実なのだろう。
……けど、この森の魔猿はそういった獰猛さとか野蛮さとはかけ離れていた。
冷静に状況を分析している。
さっきまではいつ襲われるか分からないと焦っていたけど、落ち着いて振り返ってみたら向こうは何もしていないじゃないか。
とはいえ、何も理由がないのにこれだけの数が集まってくるとも思えない。
そこには必ず何か理由があるはずなのだ。
「となると……やっぱこいつしかないか」
魔猿をここに集結させたのも、この巨大な蕾なのか。
「ミリア、君はこの植物について何か知っているんじゃないか?」
なんとなくそうじゃないかって予感はしたが――それは合っていたらしい。
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