上 下
11 / 22

第11話 これからのこと

しおりを挟む
 俺の婚約者である伯爵家の御令嬢と、その御令嬢がずぶ濡れになるのもいとわず川へ飛び込んで村の子どもを助けた――というなんとも情報量が多すぎる話はあっという間にリーノ村中に知れ渡ることとなった。

 やっぱり村の人たちにとっては婚約者って部分がめちゃくちゃ気になるだろうな。

 ゼリオル村長の他、イノシシ狩りの時に行動をともにしたノアンやハーヴェイからもいろいろと質問されたが、とりあえずあとでしっかり説明をするとだけ話してミリアを屋敷へと案内する。

 ……説明といっても、俺自身がまだ彼女がどんな人間であるのか、まったく知らないんだよなぁ。
 自分の服がダメになるのも構わず子どもを助けるために川へ飛び込めるという点では、とても優しいし勇敢であるとも言える。

 ただそうなると、どうしてこんないい子が俺との婚約を認めたのかっていうのが気になるんだよな。

 厳密に言うと、婚約を決めたのは彼女の父親か。

 伯爵家であるグリンハーツ家は、なぜミリアのようないい子を貴族でもないアースロード家の長男と婚約させたんだ?

 うちとしては伯爵家と身内の関係になれるっていう超メリットがあるのだが、向こうにはまったくそれがないように思える。

 間違いなく政略結婚なんだろうけど、相手の企みが見えてこないという妙な不気味さがあったのだ。

 それさえなかったら、彼女は文句なく最高の相手と言えるんだけどなぁ。

 
 場所をアースロード家の屋敷へ移し、改めて自己紹介を始める。
 
 さすがに相手は公爵家の御令嬢なのでかしこまった挨拶を――と、思ったのだが、それは本人からあっさりと拒否される。

 それよりも彼女は屋敷の窓から見える広大な畑に関心があるようだった。

「凄く広い……あれすべて先ほど女の子を送っていったリーノ村で管理を?」
「そうなんだ」
「事前に聞いたお話だと収穫量が乏しいとのことでしたが……村の様子を見る限り、あまり悲観されているわけではないようですわね」
「今はみんなで収穫量アップのために試行錯誤を繰り返している最中なんだ。その成果が少しずつ出始めているというのも大きいかな」
「なるほど」

 窓の外を眺めながら顎に手を添え、何やらじっくりと考え込むミリア。
 しばらくすると、ようやくこちらへと振り向き、

「わたくしも農業をやってみたいですわ!」
 
 高らかにそう宣言する。
 ……この子はこういうノリの子なのかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仕方なく開拓者になったけど、膨大な魔力のおかげで最高の村ができそう

Miiya
ファンタジー
15歳になり成人を果たし、兵士としての採用試験に挑んだが、なぜか村の開拓者となった。そんな彼には最強の賢者にも負けない魔力があり、そんな彼の魔力に魅了されたモンスター達に助けられながら最高の村を作っていく。いつか王国を超える村ができるかもしれない。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》  社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。  このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

悪役令嬢の味方をしたら追放されました

神崎 ルナ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインに転生してしまったあたし。ざまあは嫌なので頑張っていたんだけど、え? 追放ってマジですか(白目)。……追放されました。うせやろ。……魔の森、って人住めたんですかね? 何故かそこに隠者のように住むイケメンさんと旅することになってますが――。 エブリスタ様でも公開しています。

処理中です...