139 / 168
連載
第292話 修行の間に休息を
しおりを挟む
シルヴィアとの結婚式。
その具体的な日取りや招待客などの細かな決め事については、俺が取り組んでいる無属性魔法の強化が成功してから行うようにした。
季節は巡り、気がつけば冬は目前に迫っている。
ジェロム地方へ来てから初めて迎える冬だ。
フルズさん曰く、麓の方は雪の影響をそれほど考えなくてもいいらしい。ただ、他の土地に比べて気温は下がるらしいので暖房器具の準備は必要となってくる。なので、今日も朝からテスラさん、エイーダ、フィーネのメイド三人衆が薪割りに勤しんでいた。
彼女たちは斧を使って木を切っているが、その横ではシルヴィアが華麗な剣さばきで次々と薪を割っていく。
「お見事ですね、シルヴィア様」
「すごーい!」
「さすがです!」
「ふふっ、ありがとう。小さな頃から修行の一環で兄さんたちとよくやっていたんだ」
楽しそうに作業するみんなを眺めつつ、俺は無属性魔法のひとつである結界魔法の強化を実現するために修行を重ねていた。
いきなりすべてがうまくいくとは思っていない。
小さなことから積み上げ、やがて大きな山とする。
そういう心意気が大事なのだと、無属性魔法の書物にも書いてあったし。
しばらく魔法修行に集中していたのだが、ふと視線を外へやると、
「えっ?」
俺は驚きに思わず手が止まる。
窓の外にはもくもくと立ち上る白い煙があったのだ。
もしや火事なのでは、と思って急いで外へ出ると、そこには焚火をしながら談笑しているシルヴィアたちがいて、さらにダイールさん、レオニーさんも加わっていた。
「? どうしたんだ、ロイス。そんなに慌てて」
「あぁ、いや……何をやっているのかなぁって」
「ダイールさんたちが持ってきてくれた芋を焼いていたんだ。できたらロイスも呼ぼうと思っていたんだ」
「そ、そうなのか」
あの白煙は焚火の煙だったのか。
それにしても……焼き芋とは風情があるな。
前世の世界にも、焚火で芋を焼くという行為はあったけど、異世界でそれをやるとなんだかまた違った雰囲気だ。
「さあ、できましたぞ」
「ありがとうございます」
ダイールさんから焼き立ての芋をもらうも、かなり熱いのでしばらく冷ましてから食べることに。その味は――
「うまっ!」
なんとも言えない甘味とホクホク感……この芋はジェロム地方の農場で収穫された物のようで、今年は豊作だったという。農場主が後日改めてうちに収穫の報告へやってくるとダイールさんから告げられるが、これならアスコサで売っても大人気間違いなしだ。
「夕飯前ですから、食べすぎにはご注意ください」
「はーい!」
「って、エイーダさん、それで三個目じゃないですか!?」
メイド三人衆も楽しそうに焼き芋を頬張っている。
「おいしいな、ロイス」
「うん。これは毎年秋の風物詩にしてもいいくらいだ」
俺もシルヴィアと一緒に芋を食べながら話し込む。
おかげで、修行へのモチベーションがさらに上がったよ。
その具体的な日取りや招待客などの細かな決め事については、俺が取り組んでいる無属性魔法の強化が成功してから行うようにした。
季節は巡り、気がつけば冬は目前に迫っている。
ジェロム地方へ来てから初めて迎える冬だ。
フルズさん曰く、麓の方は雪の影響をそれほど考えなくてもいいらしい。ただ、他の土地に比べて気温は下がるらしいので暖房器具の準備は必要となってくる。なので、今日も朝からテスラさん、エイーダ、フィーネのメイド三人衆が薪割りに勤しんでいた。
彼女たちは斧を使って木を切っているが、その横ではシルヴィアが華麗な剣さばきで次々と薪を割っていく。
「お見事ですね、シルヴィア様」
「すごーい!」
「さすがです!」
「ふふっ、ありがとう。小さな頃から修行の一環で兄さんたちとよくやっていたんだ」
楽しそうに作業するみんなを眺めつつ、俺は無属性魔法のひとつである結界魔法の強化を実現するために修行を重ねていた。
いきなりすべてがうまくいくとは思っていない。
小さなことから積み上げ、やがて大きな山とする。
そういう心意気が大事なのだと、無属性魔法の書物にも書いてあったし。
しばらく魔法修行に集中していたのだが、ふと視線を外へやると、
「えっ?」
俺は驚きに思わず手が止まる。
窓の外にはもくもくと立ち上る白い煙があったのだ。
もしや火事なのでは、と思って急いで外へ出ると、そこには焚火をしながら談笑しているシルヴィアたちがいて、さらにダイールさん、レオニーさんも加わっていた。
「? どうしたんだ、ロイス。そんなに慌てて」
「あぁ、いや……何をやっているのかなぁって」
「ダイールさんたちが持ってきてくれた芋を焼いていたんだ。できたらロイスも呼ぼうと思っていたんだ」
「そ、そうなのか」
あの白煙は焚火の煙だったのか。
それにしても……焼き芋とは風情があるな。
前世の世界にも、焚火で芋を焼くという行為はあったけど、異世界でそれをやるとなんだかまた違った雰囲気だ。
「さあ、できましたぞ」
「ありがとうございます」
ダイールさんから焼き立ての芋をもらうも、かなり熱いのでしばらく冷ましてから食べることに。その味は――
「うまっ!」
なんとも言えない甘味とホクホク感……この芋はジェロム地方の農場で収穫された物のようで、今年は豊作だったという。農場主が後日改めてうちに収穫の報告へやってくるとダイールさんから告げられるが、これならアスコサで売っても大人気間違いなしだ。
「夕飯前ですから、食べすぎにはご注意ください」
「はーい!」
「って、エイーダさん、それで三個目じゃないですか!?」
メイド三人衆も楽しそうに焼き芋を頬張っている。
「おいしいな、ロイス」
「うん。これは毎年秋の風物詩にしてもいいくらいだ」
俺もシルヴィアと一緒に芋を食べながら話し込む。
おかげで、修行へのモチベーションがさらに上がったよ。
43
お気に入りに追加
5,717
あなたにおすすめの小説
引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~
【書籍化決定!】
本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました!
第1巻は10月下旬発売!
よろしくお願いします!
賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。
その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。
一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。
こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。
かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。
ついでに魔法を極めて自立しちゃいます!
師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。
痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。
波乱万丈な転生ライフです。
エブリスタにも掲載しています。
異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。