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第276話 お別れ会前日
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あとから聞いた話だけど、例の青騎士の存在をクリスティン会長から教わった日の夜――シルヴィアはめちゃくちゃ怯えて眠れなかったらしい。
普段の勇ましい彼女からは想像できないが……テスラさんが教えてくれたのでよっぽどだったのだろう。しまいには「今から男子寮に潜り込めないだろうか」となんとかして俺に会おうとしていたらしい。
「愛されていますね、ロイス様」
相変わらず表情の変化は乏しいが……間違いなく、心中ではニヤついているだろう。
……まあ、俺もトナージ副会長と一緒であれはただの噂話の域を出ないと思っている。
この世界には死霊魔術師と呼ばれる人たちがいるため、幽霊の存在自体を否定するつもりはないが、もし今回の騒動に絡んでいるとするなら、魔力を使用した段階で誰かに気づかれるはずなのだ。
それがないということは――青騎士はいない。
いたとしても、生きた人間の仕業であると言えるだろう。
お世辞にもいい趣味とは言えないな。
とはいえ、直接この目で見たわけじゃないし、そもそも青騎士の存在自体を疑っているのだが……この学園にいられるのも明日までなので調査のしようもない。
学生に直接的な被害が出ているわけじゃないから、教職員としても動きづらいのだろう。
このまま何事もなく、お別れ会が行われると願おう。
次の日も、特に目立ったトラブルなく一日が終わった。
明日は午前中にお別れ会をし、午後にはジェロム地方へ向けて帰還する予定となっている。
なので、授業を受けるのは実質今日が最後となるのだ。
「あっという間だったな、ロイス」
「あぁ……なんだか、離れるのが名残惜しいよ」
本来ならば、俺もシルヴィアもまだ学園に通っている年齢だ。
ここにいる間に、年の近い友人がたくさんができた。
できるなら、ここでもっといろんなことを学んでいたい――しかし、今はジェロム地方の領主として、果たすべき仕事がある。今だって、きっといろいろと起きているのだろう。
正直、それが気になっているところもある。
妙なトラブルが起きていなければいいんだけど。
最後の授業が終わってからも、クラスメイトたちは教室に残って下校時間になるまで語り合った。
ジェロム地方に戻れば、彼らと再会できる機会はグッと減るだろう。
まだあと半日あるとはいえ、俺たちは名残惜しむように時を過ごしたのだった。
みんなとの最後の交流が終わり、寮へと戻ってきた。
すでに辺りは薄暗くなりつつあり、門限も迫っている。
「最後の最後で門限を破るわけにはいかないな」
「そうだな。急ごう、シルヴィア」
お互いに走りだした――その時、
「うん?」
何か、物音が聞こえた気がして俺は足を止める。
「どうした? 早くしないと――」
「待ってくれ。……何か、音が聞こえる」
「音?」
俺の言葉を受けて、シルヴィアも耳を澄ます。
すると、遠くから「ガシャン!」という金属同士が触れ合うような鈍い音がわずかに聞こえた。
「……ちょっと見てくるよ」
「あっ! ロイス!」
その音が無性に気になった俺は、聞こえた方向へと駆けだした。
普段の勇ましい彼女からは想像できないが……テスラさんが教えてくれたのでよっぽどだったのだろう。しまいには「今から男子寮に潜り込めないだろうか」となんとかして俺に会おうとしていたらしい。
「愛されていますね、ロイス様」
相変わらず表情の変化は乏しいが……間違いなく、心中ではニヤついているだろう。
……まあ、俺もトナージ副会長と一緒であれはただの噂話の域を出ないと思っている。
この世界には死霊魔術師と呼ばれる人たちがいるため、幽霊の存在自体を否定するつもりはないが、もし今回の騒動に絡んでいるとするなら、魔力を使用した段階で誰かに気づかれるはずなのだ。
それがないということは――青騎士はいない。
いたとしても、生きた人間の仕業であると言えるだろう。
お世辞にもいい趣味とは言えないな。
とはいえ、直接この目で見たわけじゃないし、そもそも青騎士の存在自体を疑っているのだが……この学園にいられるのも明日までなので調査のしようもない。
学生に直接的な被害が出ているわけじゃないから、教職員としても動きづらいのだろう。
このまま何事もなく、お別れ会が行われると願おう。
次の日も、特に目立ったトラブルなく一日が終わった。
明日は午前中にお別れ会をし、午後にはジェロム地方へ向けて帰還する予定となっている。
なので、授業を受けるのは実質今日が最後となるのだ。
「あっという間だったな、ロイス」
「あぁ……なんだか、離れるのが名残惜しいよ」
本来ならば、俺もシルヴィアもまだ学園に通っている年齢だ。
ここにいる間に、年の近い友人がたくさんができた。
できるなら、ここでもっといろんなことを学んでいたい――しかし、今はジェロム地方の領主として、果たすべき仕事がある。今だって、きっといろいろと起きているのだろう。
正直、それが気になっているところもある。
妙なトラブルが起きていなければいいんだけど。
最後の授業が終わってからも、クラスメイトたちは教室に残って下校時間になるまで語り合った。
ジェロム地方に戻れば、彼らと再会できる機会はグッと減るだろう。
まだあと半日あるとはいえ、俺たちは名残惜しむように時を過ごしたのだった。
みんなとの最後の交流が終わり、寮へと戻ってきた。
すでに辺りは薄暗くなりつつあり、門限も迫っている。
「最後の最後で門限を破るわけにはいかないな」
「そうだな。急ごう、シルヴィア」
お互いに走りだした――その時、
「うん?」
何か、物音が聞こえた気がして俺は足を止める。
「どうした? 早くしないと――」
「待ってくれ。……何か、音が聞こえる」
「音?」
俺の言葉を受けて、シルヴィアも耳を澄ます。
すると、遠くから「ガシャン!」という金属同士が触れ合うような鈍い音がわずかに聞こえた。
「……ちょっと見てくるよ」
「あっ! ロイス!」
その音が無性に気になった俺は、聞こえた方向へと駆けだした。
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