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第246話 迫りくる影

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 鉄道都市バーロンに潜む謎の男――ブラック。
 そいつが、フィーネを狙った黒幕らしい。

 テレイザさんは長らくそのブラックを追っていて、今回、フィーネが巻き込まれた奴隷商事件を解決するため、バーロン自警団のリーダーを務めるデュセイさんとその部下たちを連れて一斉捜査に乗り出す方針を固めた。

 そのため、俺たちも迂闊には町へ出られない状況となる。
 ここからジェロム地方まではかなり距離があるから、帰路の途中で狙われることも十分想定できた。そう思うと、俺たちはブラックという男のホームグラウンドに誘いだされた形になる。

 ヤツは……俺がテレイザさんのもとを訪れるって予期していたのか?
 もしそうなら、貴族の親族関係まで網羅しているかなりの情報通だ。

 いずれにせよ、俺たちは一度引き返し、テレイザさんの屋敷で待機することとなった。

「歯がゆいですな」

 窓の外から見えるバーロンの景色を眺めていた俺に、ダイールさんが声をかけてきた。
 
「あぁ……」
「まさかとは思いますが……ロイス様も例のブラックという人物を捜そうと?」
「本音を言えば、そうしたいところだけど」

 俺の無属性魔法に、みんなのダイールさんたちの剣術があれば大抵の敵には負けないだろう。
 だが、ヤツらには地の利がある。
 バーロンにはこれまで何度も来たことはあるが、それも両手で数えきれるほど。ここでの非合法な商売を生業にしているブラックたち裏の組織は、いざ戦闘になったらきっと俺たちの土地勘のなさを狙ってくるはず。
 そうなると、テレイザさんたちへ迷惑がかかってしまう。それだけはなんとしても避けたかった。

 結局、フィーネを含む俺たちジェロム地方組はここにとどまるのが正解だろう。
 やがて、ポツポツと雨が降ってきた。

「ついに降ってきてしまったか」

 窓の外を眺めていた俺の横へシルヴィアがやってくる。

「さっき町にいた時も、雲が多かったからね」
「そういえばそうだったな。……しかし、こうなってくるとさらにジェロム地方へ戻るのが遅れしまう」
「大丈夫だよ。フルズさんもいるし」
 
 領主としてすぐに戻りたいという気持ちもあるが、俺がいなくてもすぐにどうにかなるものでもない。信頼している仲間がいてくれるからその辺は安心だ。

 それよりも、今はどうやってここから安全に脱出するか……そちらへ意識を持っていかなくてはならないだろう。

 ――と、その時、

「うん?」

 本格的に降りだした雨の中に、気配を感じた。

「まさか……」

 俺は無属性魔法のひとつである探知魔法を展開する。

「? どうかしたのか、ロイス」
「……この屋敷に迫ってくる者たちがいる」
「なっ!?」

 俺はそのことをダイールさんやレオニーさんにも告げ、屋敷の周りの警備を強化してもらうことに。
 ――とはいえ、これはひとりやふたりって数じゃない。
 少なくとも二十人以上は近づいている。

「ロイス……」
「俺たちも行こう、シルヴィア」
「その言葉を待っていた!」

 シルヴィアはもうだいぶ前から臨戦態勢をとっていた。
 テレイザさんやデュセイさんは出払っているし……ここは俺たちが対処するしかないだろうな。
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