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第244話 強襲
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フィーネの記憶に関する情報を手にするため、俺たちが次に目指すのは王都のアルヴァロ城に決まった。
――が、ここから王都まで行くにはかなり距離がある。そのため、日を改めて向かうことになり、今日はテレイザさんの家に泊まらせていただくことに。
翌朝。
情報を提供してくれたテレイザさんに礼を告げて、俺たちは屋敷をあとにする。
「ごめんなさい……私なんかのために……」
あちこち移動することになったのが気になったのか、預けてある馬車を受け取りに行く途中でフィーネが申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べる。
だが、彼女は何も悪くない。
俺たちが好きでやっていることだ。
きっと、彼女がジェロム地方の森の中で保護されたのも何かの縁だろう。悪い子じゃないみたいだし、それに――本当に違法とされている奴隷商が絡んでいるとするなら、解決する必要もあるしな。
「気にしなくていいさ、フィーネ」
「ロイスの言う通りだ。自分のことが分からないのは困るだろ?」
「おふたりとも……」
俺とシルヴィアの言葉を受けて、フィーネの目が涙ぐむ。
ダイールさんとレオニーさんに肩を優しく叩かれて、フィーネはようやく落ち着きを取り戻した。
その後、厩舎へと到着し、受け取りの手続きをしようとした――その時だった。
「うん? 誰だ?」
俺たちの馬車の前に、五人の男が囲むように立っている。全員、漏れなく人相が凶悪であり、その雰囲気はどう考えても一般人じゃない。おまけに、彼らの手には剣や斧といった武器が握られていた。
――すぐに、フィーネを狙ってきた者たちだと分かった。
「……ロイス様、シルヴィア様、それにフィーネ殿、お下がりください」
危険を察知したダイールさんが、そう告げる。続いて、レオニーさんも腰に携えた剣へ手を伸ばした。それとほぼ同じタイミングで、向こうがこちらの存在に気づく。すると、男たちは目の色を変えて近づいてきた。
やはり、連中の狙いはフィーネか!
俺たちとの距離が詰まると、男たちは武器を構えて襲い掛かってくる。
問答無用かよ!
「シルヴィア!」
「分かっている!」
ダイールさんには後ろにいろと言われたけど、さすがにこの数をレオニーさんとふたりで相手にするのは分が悪い。しかも、相手はかなりの手練れと見える。ここは俺とシルヴィアも加勢すべきだ。
とはいえ、もちろんフィーネを守ることにも意識を向ける。
もしかしたら、どこかに新手が隠れて様子をうかがっているかもしれないからな。
――が、心配していた増援はなく、男たちは五分も経たないうちに全滅。
まあ、重力魔法で動きを封じてしまえばそれまでだ。
彼らは腕っぷし自慢であるようだけど、こちらの魔法を無効化する手段を持ち合わせていなかったようだ。
「な、なぜ邪魔をする……」
ダメージを負った男のひとりが、恨めしそうにそう語る。
「それはこっちのセリフだな。なぜフィーネを狙うんだ?」
逆にそう尋ねるが、相手からの返事はない。
俺は拘束魔法で男たちの動きを完全に封じると、自警団へその身柄を差しだした。
……そこで何か分かればいいのだが。
――が、ここから王都まで行くにはかなり距離がある。そのため、日を改めて向かうことになり、今日はテレイザさんの家に泊まらせていただくことに。
翌朝。
情報を提供してくれたテレイザさんに礼を告げて、俺たちは屋敷をあとにする。
「ごめんなさい……私なんかのために……」
あちこち移動することになったのが気になったのか、預けてある馬車を受け取りに行く途中でフィーネが申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べる。
だが、彼女は何も悪くない。
俺たちが好きでやっていることだ。
きっと、彼女がジェロム地方の森の中で保護されたのも何かの縁だろう。悪い子じゃないみたいだし、それに――本当に違法とされている奴隷商が絡んでいるとするなら、解決する必要もあるしな。
「気にしなくていいさ、フィーネ」
「ロイスの言う通りだ。自分のことが分からないのは困るだろ?」
「おふたりとも……」
俺とシルヴィアの言葉を受けて、フィーネの目が涙ぐむ。
ダイールさんとレオニーさんに肩を優しく叩かれて、フィーネはようやく落ち着きを取り戻した。
その後、厩舎へと到着し、受け取りの手続きをしようとした――その時だった。
「うん? 誰だ?」
俺たちの馬車の前に、五人の男が囲むように立っている。全員、漏れなく人相が凶悪であり、その雰囲気はどう考えても一般人じゃない。おまけに、彼らの手には剣や斧といった武器が握られていた。
――すぐに、フィーネを狙ってきた者たちだと分かった。
「……ロイス様、シルヴィア様、それにフィーネ殿、お下がりください」
危険を察知したダイールさんが、そう告げる。続いて、レオニーさんも腰に携えた剣へ手を伸ばした。それとほぼ同じタイミングで、向こうがこちらの存在に気づく。すると、男たちは目の色を変えて近づいてきた。
やはり、連中の狙いはフィーネか!
俺たちとの距離が詰まると、男たちは武器を構えて襲い掛かってくる。
問答無用かよ!
「シルヴィア!」
「分かっている!」
ダイールさんには後ろにいろと言われたけど、さすがにこの数をレオニーさんとふたりで相手にするのは分が悪い。しかも、相手はかなりの手練れと見える。ここは俺とシルヴィアも加勢すべきだ。
とはいえ、もちろんフィーネを守ることにも意識を向ける。
もしかしたら、どこかに新手が隠れて様子をうかがっているかもしれないからな。
――が、心配していた増援はなく、男たちは五分も経たないうちに全滅。
まあ、重力魔法で動きを封じてしまえばそれまでだ。
彼らは腕っぷし自慢であるようだけど、こちらの魔法を無効化する手段を持ち合わせていなかったようだ。
「な、なぜ邪魔をする……」
ダメージを負った男のひとりが、恨めしそうにそう語る。
「それはこっちのセリフだな。なぜフィーネを狙うんだ?」
逆にそう尋ねるが、相手からの返事はない。
俺は拘束魔法で男たちの動きを完全に封じると、自警団へその身柄を差しだした。
……そこで何か分かればいいのだが。
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