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第239話 記憶をたどる旅

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 愛羊のマック。
 そして完全武装のダイールさんとレオニーさん。
 
 これで、記憶を失った少女――フィーネがどのようにしてルトア村近くの森にたどり着いたのかを調査する。

「フィーネ、君はまだ本調子じゃないからマックの背中に乗るといい」
「あ、ありがとうございます」

 彼女には自分の歩いてきた経路を進み、そこで記憶を取り戻してもらう――というのはさすがに出来すぎかもしれないが、何か自分に関する情報を少しでも思い出してもらえたらと考えていた。

 と、いうわけで、俺たちは森の中を進んで行くのだが、

「う~ん……いい天気ですね」
「気を緩めてはなりませんぞ、レオニー」
「あっ!? す、すいません!」
「とはいえ……そう思ってしまう気持ちは痛いほど分かりますぞ」

 ダイールさんの言う通り、穏やかな日差しにプラスして森の中を流れる爽やかな風――絶好の昼寝日和といえた。こんな日はのんびりとピクニックするのもいいだろう。

 ――っと、俺まで気が緩んでいたみたいだ。

 そうこうしているうちに、ディランさんたちがフィーネを保護した場所へと到着した。

「ディランさんたちは、この大きな岩がある場所で君を見つけたと言っていたけど……この場所に覚えは?」
「ご、ごめんなさい……何も思い出せなくて」
「い、いえ、大丈夫ですよ。ここから、君がこの場所へたどり着くまでに歩いていたと思われる道を進む。何か思い出したら、教えてくれ」
「は、はい」

 ここまでは大体想定通り。
 問題はここから――記憶につながるヒントを得られればいいんだけど。


 その後、俺たちはフィーネがたどってきたと思われる川沿いのルートを調べていった。
 どれだけ進もうと、そこに転移魔法陣を設置しておけば、すぐにアダム村の屋敷前に到着できる。
 おかげで、日をかけて記憶をたどる旅ができるというわけだ。
 
 しかし、事態は思ったよりも深刻だった。

 歩きはじめてから一時間が経過しても、フィーネは何も思い出せなかった。それが罪悪感につながったのか、何かを思い出そうと必死になっているようだ。
 俺は……これが悪循環につながっているように思えた。

 このまま進み続けても大丈夫だろうか。
 そう思い始めた矢先のこと、

「あっ!」

 突然、フィーネが短く叫んだ。

「どうかしたのか?」
「い、いえ……この音……どこかで聞いたような……」
「音?」

 どうやら、フィーネの記憶に関係のある「音」が、どこかから聞こえてくるらしい。
 俺たちは耳を澄ましてその音の正体に迫った。

「あっ、確かに音が聞こえるな」

 最初に反応を示したのはシルヴィアだった。
 彼女にも音が聞こえるらしい。
 ――が、俺やダイールさん、それにレオニーさんもその音を聞き取ることができなかった。
 
「シルヴィア、フィーネ、音のした方向へ案内してくれ」
「分かった!」
「はい!」
 
 俺たちはシルヴィアとマックに乗るフィーネのあとを追い、音がするという方向へと突き進んでいく。
 それは、想定していたルートから大幅に外れるものであった。
 しばらくすると、

「む?」

 俺の耳に、ある音が聞こえてきた。
 これって……もしかして――
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