86 / 168
連載
第239話 記憶をたどる旅
しおりを挟む
愛羊のマック。
そして完全武装のダイールさんとレオニーさん。
これで、記憶を失った少女――フィーネがどのようにしてルトア村近くの森にたどり着いたのかを調査する。
「フィーネ、君はまだ本調子じゃないからマックの背中に乗るといい」
「あ、ありがとうございます」
彼女には自分の歩いてきた経路を進み、そこで記憶を取り戻してもらう――というのはさすがに出来すぎかもしれないが、何か自分に関する情報を少しでも思い出してもらえたらと考えていた。
と、いうわけで、俺たちは森の中を進んで行くのだが、
「う~ん……いい天気ですね」
「気を緩めてはなりませんぞ、レオニー」
「あっ!? す、すいません!」
「とはいえ……そう思ってしまう気持ちは痛いほど分かりますぞ」
ダイールさんの言う通り、穏やかな日差しにプラスして森の中を流れる爽やかな風――絶好の昼寝日和といえた。こんな日はのんびりとピクニックするのもいいだろう。
――っと、俺まで気が緩んでいたみたいだ。
そうこうしているうちに、ディランさんたちがフィーネを保護した場所へと到着した。
「ディランさんたちは、この大きな岩がある場所で君を見つけたと言っていたけど……この場所に覚えは?」
「ご、ごめんなさい……何も思い出せなくて」
「い、いえ、大丈夫ですよ。ここから、君がこの場所へたどり着くまでに歩いていたと思われる道を進む。何か思い出したら、教えてくれ」
「は、はい」
ここまでは大体想定通り。
問題はここから――記憶につながるヒントを得られればいいんだけど。
その後、俺たちはフィーネがたどってきたと思われる川沿いのルートを調べていった。
どれだけ進もうと、そこに転移魔法陣を設置しておけば、すぐにアダム村の屋敷前に到着できる。
おかげで、日をかけて記憶をたどる旅ができるというわけだ。
しかし、事態は思ったよりも深刻だった。
歩きはじめてから一時間が経過しても、フィーネは何も思い出せなかった。それが罪悪感につながったのか、何かを思い出そうと必死になっているようだ。
俺は……これが悪循環につながっているように思えた。
このまま進み続けても大丈夫だろうか。
そう思い始めた矢先のこと、
「あっ!」
突然、フィーネが短く叫んだ。
「どうかしたのか?」
「い、いえ……この音……どこかで聞いたような……」
「音?」
どうやら、フィーネの記憶に関係のある「音」が、どこかから聞こえてくるらしい。
俺たちは耳を澄ましてその音の正体に迫った。
「あっ、確かに音が聞こえるな」
最初に反応を示したのはシルヴィアだった。
彼女にも音が聞こえるらしい。
――が、俺やダイールさん、それにレオニーさんもその音を聞き取ることができなかった。
「シルヴィア、フィーネ、音のした方向へ案内してくれ」
「分かった!」
「はい!」
俺たちはシルヴィアとマックに乗るフィーネのあとを追い、音がするという方向へと突き進んでいく。
それは、想定していたルートから大幅に外れるものであった。
しばらくすると、
「む?」
俺の耳に、ある音が聞こえてきた。
これって……もしかして――
そして完全武装のダイールさんとレオニーさん。
これで、記憶を失った少女――フィーネがどのようにしてルトア村近くの森にたどり着いたのかを調査する。
「フィーネ、君はまだ本調子じゃないからマックの背中に乗るといい」
「あ、ありがとうございます」
彼女には自分の歩いてきた経路を進み、そこで記憶を取り戻してもらう――というのはさすがに出来すぎかもしれないが、何か自分に関する情報を少しでも思い出してもらえたらと考えていた。
と、いうわけで、俺たちは森の中を進んで行くのだが、
「う~ん……いい天気ですね」
「気を緩めてはなりませんぞ、レオニー」
「あっ!? す、すいません!」
「とはいえ……そう思ってしまう気持ちは痛いほど分かりますぞ」
ダイールさんの言う通り、穏やかな日差しにプラスして森の中を流れる爽やかな風――絶好の昼寝日和といえた。こんな日はのんびりとピクニックするのもいいだろう。
――っと、俺まで気が緩んでいたみたいだ。
そうこうしているうちに、ディランさんたちがフィーネを保護した場所へと到着した。
「ディランさんたちは、この大きな岩がある場所で君を見つけたと言っていたけど……この場所に覚えは?」
「ご、ごめんなさい……何も思い出せなくて」
「い、いえ、大丈夫ですよ。ここから、君がこの場所へたどり着くまでに歩いていたと思われる道を進む。何か思い出したら、教えてくれ」
「は、はい」
ここまでは大体想定通り。
問題はここから――記憶につながるヒントを得られればいいんだけど。
その後、俺たちはフィーネがたどってきたと思われる川沿いのルートを調べていった。
どれだけ進もうと、そこに転移魔法陣を設置しておけば、すぐにアダム村の屋敷前に到着できる。
おかげで、日をかけて記憶をたどる旅ができるというわけだ。
しかし、事態は思ったよりも深刻だった。
歩きはじめてから一時間が経過しても、フィーネは何も思い出せなかった。それが罪悪感につながったのか、何かを思い出そうと必死になっているようだ。
俺は……これが悪循環につながっているように思えた。
このまま進み続けても大丈夫だろうか。
そう思い始めた矢先のこと、
「あっ!」
突然、フィーネが短く叫んだ。
「どうかしたのか?」
「い、いえ……この音……どこかで聞いたような……」
「音?」
どうやら、フィーネの記憶に関係のある「音」が、どこかから聞こえてくるらしい。
俺たちは耳を澄ましてその音の正体に迫った。
「あっ、確かに音が聞こえるな」
最初に反応を示したのはシルヴィアだった。
彼女にも音が聞こえるらしい。
――が、俺やダイールさん、それにレオニーさんもその音を聞き取ることができなかった。
「シルヴィア、フィーネ、音のした方向へ案内してくれ」
「分かった!」
「はい!」
俺たちはシルヴィアとマックに乗るフィーネのあとを追い、音がするという方向へと突き進んでいく。
それは、想定していたルートから大幅に外れるものであった。
しばらくすると、
「む?」
俺の耳に、ある音が聞こえてきた。
これって……もしかして――
67
お気に入りに追加
5,717
あなたにおすすめの小説
当然だったのかもしれない~問わず語り~
章槻雅希
ファンタジー
学院でダニエーレ第一王子は平民の下働きの少女アンジェリカと運命の出会いをし、恋に落ちた。真実の愛を主張し、二人は結ばれた。そして、数年後、二人は毒をあおり心中した。
そんな二人を見てきた第二王子妃ベアトリーチェの回想録というか、問わず語り。ほぼ地の文で細かなエピソード描写などはなし。ベアトリーチェはあくまで語り部で、かといってアンジェリカやダニエーレが主人公というほど描写されてるわけでもないので、群像劇?
『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。
引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~
【書籍化決定!】
本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました!
第1巻は10月下旬発売!
よろしくお願いします!
賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。
その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。
一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。
こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
勇者パーティを追放されそうになった俺は、泣いて縋って何とか残り『元のDQNに戻る事にした』どうせ俺が生きている間には滅びんだろう!
石のやっさん
ファンタジー
今度の主人公はマジで腐っている。基本悪党、だけど自分のルールあり!
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのドルマンにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ドルマンの物で、全員から下に見られているのが解った。
だが、意外にも主人公は馬鹿にされながらも残る道を選んだ。
『もう友達じゃ無いんだな』そう心に誓った彼は…勇者達を骨の髄までしゃぶり尽くす事を決意した。
此処迄するのか…そう思う『ざまぁ』を貴方に
前世のDQNに戻る事を決意した、暗黒面に落ちた外道魔法戦士…このざまぁは知らないうちに世界を壊す。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。