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第140話 魔獣の力
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普段は文官として働いているティオグ。
その主な職場は城内だ。
俺が再会した場所も城の中庭だったしな。
そんなティオグが駆りだされた理由は、彼が契約する魔獣の能力にあった。
死千蝶《ゴースト・バタフライ》――美しい花々が咲き乱れる城の中庭で暮らしており、パッと見は普通の蝶と大差ない。
ノエリーの鋼鉄魔人《アイアン・レイス》やメイの亡霊竜《ファントム・ドラゴン》に比べると、見た目のインパクトという点では遥かに弱い。というか、強いというイメージが湧かないのだ。
それでも、死千蝶《ゴースト・バタフライ》もまたSランクの魔獣。
俺の知る限り、この魔獣の特徴としては猛毒の鱗粉を群れになってばら撒くことによる広範囲攻撃と羽の色を変化させる迷彩機能くらいか。
なので、ティオグがこの場に呼ばれる理由がよく分からなかった。
「指示役のふたりがテイマーで、おまけにここで戦闘をしたというのが大きかったですね」
「そうなのか?」
「魔獣の痕跡を追うことで、彼らがこの町に来る前の行動が読み取れます」
「っ! じゃ、じゃあ、ヤツらが俺たちと会う直前まで顔を合わせていた人物にも――」
「死千蝶《ゴースト・バタフライ》の能力を駆使すればたどりつけますよ。きっとそいつが黒幕でしょう」
なるほど。
それが死千蝶《ゴースト・バタフライ》の隠された能力のひとつというわけか。
鱗粉による広範囲攻撃もなかなかえぐいのだが、この魔獣の能力はやはり諜報活動に特化しているな。見た目にインパクトがないというのは言い換えたらそれだけ周囲に溶け込めるというわけだし。
「では、初めていきましょう」
ティオグは召喚術で城の中庭から死千蝶《ゴースト・バタフライ》たちを呼びだす。それから指示を飛ばしてしばらく待っていると、蝶たちが戻ってきた。
集めてきた情報をティオグは分析しているが……その表情は徐々に険しくなっていく。
「これは……由々しき事態かもしれません」
いつも真面目なティオグだが、今日はそれに輪をかけて真剣――というより、深刻な顔つきで告げた。
「穏やかじゃないな。何があったんだ?」
「蝶たちはテイマーふたりが町へ来る前に立ち寄った場所をここから北にある屋敷だと言っています」
「ここから北にある屋敷? ま、まさか……」
今度はミネットの顔が青ざめる。
フィオナはぴんと来ていないようだが……俺にはその先に何があるのか把握していた。
「北の屋敷……ダルフォス家の屋敷か」
この土地を収める評判のいい領主が住む屋敷であった。
その主な職場は城内だ。
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俺の知る限り、この魔獣の特徴としては猛毒の鱗粉を群れになってばら撒くことによる広範囲攻撃と羽の色を変化させる迷彩機能くらいか。
なので、ティオグがこの場に呼ばれる理由がよく分からなかった。
「指示役のふたりがテイマーで、おまけにここで戦闘をしたというのが大きかったですね」
「そうなのか?」
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「っ! じゃ、じゃあ、ヤツらが俺たちと会う直前まで顔を合わせていた人物にも――」
「死千蝶《ゴースト・バタフライ》の能力を駆使すればたどりつけますよ。きっとそいつが黒幕でしょう」
なるほど。
それが死千蝶《ゴースト・バタフライ》の隠された能力のひとつというわけか。
鱗粉による広範囲攻撃もなかなかえぐいのだが、この魔獣の能力はやはり諜報活動に特化しているな。見た目にインパクトがないというのは言い換えたらそれだけ周囲に溶け込めるというわけだし。
「では、初めていきましょう」
ティオグは召喚術で城の中庭から死千蝶《ゴースト・バタフライ》たちを呼びだす。それから指示を飛ばしてしばらく待っていると、蝶たちが戻ってきた。
集めてきた情報をティオグは分析しているが……その表情は徐々に険しくなっていく。
「これは……由々しき事態かもしれません」
いつも真面目なティオグだが、今日はそれに輪をかけて真剣――というより、深刻な顔つきで告げた。
「穏やかじゃないな。何があったんだ?」
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今度はミネットの顔が青ざめる。
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