32 / 115
第32話 悪徳商会
しおりを挟む
俺たちが訪れた商会の代表は、事前にガナン村長から聞いていたイメージとはあまりにもかけ離れていた。
「ハッ! 泥臭い田舎モンが持ってきた物を置かせてやる店はうちにねぇよ! 店の前に置いた積荷を運んでとっとと失せな!」
「ま、待ってください! 話しが違うじゃないですか!」
食い下がるレスケル。
これには他の村人も、そして俺も納得がいかない。長い付き合いがあったはずなのになぜ急にこのような態度をとるのか――と、その時、俺は店内に置かれたある看板に目がとまった。
「エイゲンバーグ商会……?」
妙だな。
確か、うちが懇意にしていたのはこのグラッセラで百年以上商会を営んでいる老舗のドレスロー商会だったはず。もしかしたら店の場所を間違えたのかもしれないと考え、レスケルにこの事実を告げようとすると、
「そういや、何日か前にカーティスとかって村の村長から手紙が来ていたが……なるほど。おまえらドレスローのジジイが相手にしていた連中か」
「ど、どういう意味ですか!? ここはドレスロー商会じゃないんですか!?」
「そこはとっくに潰れたよ。厳密にいえば、うちが買収した形だ」
「ば、買収!?」
初めて聞く話に、俺たちは騒然となった。
「そんな……ドレスロー商会が……」
「あのジジイの考え方は古かったんだよ。今時の商売に義理も人情も必要ねぇ。儲かるか儲からねぇか、それだけで十分だ」
「うぅ……」
レスケルはショックを受け、その場に膝から崩れ落ちた。他の村人たちもどうしていいのか分からず、対応に困っている。
「おら、理解したのならとっとと消えろ。目障りなんだよ」
「で、でも、あの野菜を売らないと村の人たちの収入が!」
「おまえらの事情なんか知るかよ。ご丁寧に護衛の騎士までつけて乗り込んできたみたいだが残念だったな」
直後、商会代表の視線が俺へと移る。
「名前も聞いたことがねぇ田舎町に飛ばされた騎士ってことは……大方、どこかで致命的なミスをやらかしたか、サボってばかりの怠慢野郎ってオチだろう? ボケッと見てないでこいつらを連れて帰りやがれ」
……好き放題言われているな。
でも、俺としてもこのまま帰るわけにはいかない。
あの野菜はカーティス村のみんなが一生懸命育てた野菜だ。いくら商会の存在そのものがなくなってしまったからといって、すんなり引き下がれない。
それに……この商会には他にも問題があるようだ。
「早くしろ! うちはてめぇらみてぇな貧乏くさい田舎モンと違って忙しいんだよ!」
「違法とされている種の武器を売買して法外な利益を得ているってところか」
「っ!?」
俺がそう告げた途端、エイゲンバーグ商会代表の顔つきが一変する。
「何を根拠にそんなことを……?」
少し焦りの見える表情でそんなことを言うので、俺は自分が立っている場所で足踏みをしてみる。
「ここだけ床の音が違う。恐らく、下は収納用にスペースが設けられているんだろう。得意先が来店したら、そこから商品を出して受け渡す算段か。下手に部屋の奥へ案内させると怪しまれるから、あくまでも店頭に並べられている商品をわたしているだけと装っているあたりが狡猾だし、何より手慣れている。もしかして、他の国で同じようなことをして国外追放の処分にでもあったか?」
「なっ!?」
分かりやすく動揺するエイゲンバーグ商会代表。
まあ、ありがちな手口なんだよなぁ。
王都ではもう何軒か摘発されているし。
――俺が指摘したのとほぼ同時に、武器を手にした屈強な男たちが店の奥からぞろぞろ出てきた。
※本日も18時と21時にそれぞれ投稿予定!
「ハッ! 泥臭い田舎モンが持ってきた物を置かせてやる店はうちにねぇよ! 店の前に置いた積荷を運んでとっとと失せな!」
「ま、待ってください! 話しが違うじゃないですか!」
食い下がるレスケル。
これには他の村人も、そして俺も納得がいかない。長い付き合いがあったはずなのになぜ急にこのような態度をとるのか――と、その時、俺は店内に置かれたある看板に目がとまった。
「エイゲンバーグ商会……?」
妙だな。
確か、うちが懇意にしていたのはこのグラッセラで百年以上商会を営んでいる老舗のドレスロー商会だったはず。もしかしたら店の場所を間違えたのかもしれないと考え、レスケルにこの事実を告げようとすると、
「そういや、何日か前にカーティスとかって村の村長から手紙が来ていたが……なるほど。おまえらドレスローのジジイが相手にしていた連中か」
「ど、どういう意味ですか!? ここはドレスロー商会じゃないんですか!?」
「そこはとっくに潰れたよ。厳密にいえば、うちが買収した形だ」
「ば、買収!?」
初めて聞く話に、俺たちは騒然となった。
「そんな……ドレスロー商会が……」
「あのジジイの考え方は古かったんだよ。今時の商売に義理も人情も必要ねぇ。儲かるか儲からねぇか、それだけで十分だ」
「うぅ……」
レスケルはショックを受け、その場に膝から崩れ落ちた。他の村人たちもどうしていいのか分からず、対応に困っている。
「おら、理解したのならとっとと消えろ。目障りなんだよ」
「で、でも、あの野菜を売らないと村の人たちの収入が!」
「おまえらの事情なんか知るかよ。ご丁寧に護衛の騎士までつけて乗り込んできたみたいだが残念だったな」
直後、商会代表の視線が俺へと移る。
「名前も聞いたことがねぇ田舎町に飛ばされた騎士ってことは……大方、どこかで致命的なミスをやらかしたか、サボってばかりの怠慢野郎ってオチだろう? ボケッと見てないでこいつらを連れて帰りやがれ」
……好き放題言われているな。
でも、俺としてもこのまま帰るわけにはいかない。
あの野菜はカーティス村のみんなが一生懸命育てた野菜だ。いくら商会の存在そのものがなくなってしまったからといって、すんなり引き下がれない。
それに……この商会には他にも問題があるようだ。
「早くしろ! うちはてめぇらみてぇな貧乏くさい田舎モンと違って忙しいんだよ!」
「違法とされている種の武器を売買して法外な利益を得ているってところか」
「っ!?」
俺がそう告げた途端、エイゲンバーグ商会代表の顔つきが一変する。
「何を根拠にそんなことを……?」
少し焦りの見える表情でそんなことを言うので、俺は自分が立っている場所で足踏みをしてみる。
「ここだけ床の音が違う。恐らく、下は収納用にスペースが設けられているんだろう。得意先が来店したら、そこから商品を出して受け渡す算段か。下手に部屋の奥へ案内させると怪しまれるから、あくまでも店頭に並べられている商品をわたしているだけと装っているあたりが狡猾だし、何より手慣れている。もしかして、他の国で同じようなことをして国外追放の処分にでもあったか?」
「なっ!?」
分かりやすく動揺するエイゲンバーグ商会代表。
まあ、ありがちな手口なんだよなぁ。
王都ではもう何軒か摘発されているし。
――俺が指摘したのとほぼ同時に、武器を手にした屈強な男たちが店の奥からぞろぞろ出てきた。
※本日も18時と21時にそれぞれ投稿予定!
57
お気に入りに追加
1,762
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
魔剣学園寮の管理人は【育成スキル】持ち ~仲間たちからの裏切りにあって追いだされた俺は、再就職先で未来の英雄たちからめちゃくちゃ慕われる~
鈴木竜一
ファンタジー
大陸では知る者の少ない超一流冒険者パーティー【星鯨】――元は秀でた才能のない凡人たちの集いであったはずのパーティーがのし上がった背後には、育成スキルを使って仲間たちを強化し続けてきたルーシャスの存在があった。しかし、パーティーのリーダーであるブリングは新入りたちから慕われているルーシャスにいずれリーダーの座を奪われるのではないかと疑心暗鬼となり、彼を追放する。
フリーとなった後、戦闘力がないことが災いしてなかなか所属するパーティーが決まらなかったルーシャスであったが、ある出来事をきっかけに元仲間であり、現在は王立魔剣学園で剣術を教えているサラと再会を果たす。彼女から魔剣学園の学生寮管理人にならないかと誘われると、偶然助けた公爵家令嬢・ミアンからの推薦もあって就任が決定。もっふもふの猫型使い魔であるユーニオを新たな相棒とし、のんびりのどかな学園で第二の人生をスタートさせたのだった。
一方、ルーシャスを追いだしたブリング率いる【星鯨】には不穏な空気が漂いつつあった。
『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。
晴行
ファンタジー
ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる