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第25話 リドウィン王国へ

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 追放先の魔境で出会ったリドウィン王国調査団の面々。
 特にリーダーを務めるイベーラとは友好な関係を築くことができた。

 今回はそれをさらに発展させ――リドウィン王国の国王に直接会う運びとなった。
 リドウィン王国調査団がこの魔境へ足を踏み入れた最大の理由は魔鉱石にある。小国で経済力の弱いリドウィンは、魔境から魔鉱石を持ち帰って発展に役立てようと考えていたのだ。

 本来ならば、魔境に魔鉱石はない。
 だが、テストプレイの段階であったため、本来は存在しない魔鉱石をしかも大量に入手できた。
 俺としては必要最低限の魔鉱石さえあればいいので、それ以外はリドウィン王国へ寄贈するつもりでいたが、さすがにそれでは気が収まらないというイベーラからの話を受け、俺は交換条件に魔境村の支援をお願いした。

 この話を正式なものとするため、魔境村を代表して俺とリリアン、さらにお世話係としてヴィッキーも同行することになった。

 
 リドウィン王国を訪問する日の朝。
 村人たちには前日のうちにリドウィン王国へ向かうと告げていたため、大きな混乱もなく出発の準備を整えられた。
 問題があるとすれば……日に日に増加する村人たちだろうが。
 ただ、問題といっても嫌な意味の方じゃない。
 増え続ける一方、住居の増設が間に合わなくなってきているのだ。

 課題としてあげられているのは資材不足。
 腕のいい職人はいるし、周囲は森なので伐採をしていけば木材には困らない。実際、剣の腕に自信のある冒険者数名が名乗りをあげ、協力している。

 ただ、それでもまだまだ足りないらしい。
 おまけに、移住希望者はこれからも増え続けるとあとからやってきた移住者たちは語っている。
 彼らの話では、グローム王国の王都は今大きく揺れ動いているらしい。
 ……結局、難癖をつけて俺を追いだしておきながら、その後の対応が杜撰すぎて愛想をつかす者たちが続出しているのだという。

 今はまだ動きを見せていないが、王都から来た商人たちの話では近々商会代表のオーガンさんが俺に接触するため、この魔境を訪れる予定を立てているとのこと。
 本当なら、オーガンさんもこちらへ移住するつもりらしいが、あの人は王都にあるさまざまな店や商人たちのまとめ役。すべてを放り投げてこの魔境へとやってくるにはいろいろと背負いすぎている。

 俺の予言が国の経済に大きく関係する時には、基本的にオーガンさんへ話を通していた。彼は王都にある商人たちにしっかりと利益が分配されるよう、さまざまな方面に配慮し、王都にこの人ありと言われるほどであった。
 
 ……恐らく、彼は見定めているのだろう。
 まだグローム王都にはかなりの数の人が残っているはず。国を出るにしても、次の住居だったり仕事だったり、とにかくやるべきことはたくさんある……あの人の真面目な性格を考慮すれば、全部片付くまで王都を離れないだろうな。

 オーガンさんがこちらへ来てくれたら、まさに鬼に金棒。向かうところ敵なしの状態になるんだが……それが叶うのは当分先になりそうだ。

「エルカ様、出立の準備が整いました」
「今行くよ」

 屋敷で準備を進めていると、ヴィッキーが呼びに来た。
 とりあえず、オーガンさんの件は置いておくとして……今はリドウィン王国での会談に備えるとしよう。


 魔境からリドウィン王国へはかなりの距離がある。
俺はイベーラ、リリアン、ヴィッキーと同じ馬車に乗って移動していた。

女子三人はすでに打ち解けていたため、ここでもそれぞれの国に関するトークを繰り返していた。俺もそれに参加しつつ、これからリドウィン王国へ行く件についてもう一度考えを整理してみる。

 魔境へと追放された俺は、すでにグローム王国の国民である資格がない。邪魔者扱いをしていた教会関係者にとっては、それが狙いだったろうから今頃満足しているはずだ。

 ――だが、周囲の反応は必ずしも彼らの想定通りであったとは思えない。
 あれほどの人材が国から流出しているという事実をどこまで重く受け止めているのか……これが不透明だ。
 実際、神託では事前に察知できなかった自然現象により経済的な打撃を受けたという話も入ってきているし、この先の対応次第では、王都から人が消えることになるかもしれない。
 商人はシビアだ。
信心深さだけで飯が食えないと知っている。
彼らがいなくなれば、必然的に国民も去っていくのだ。

……ふと、よろしくない考えが浮かぶ。
もし、このままグロームが窮地に追い込まれていくようなことがあれば、何をしでかすか分からない。
この魔境やリドウィン王国にも、手を出してくるかもしれない。
 念のため、警戒をしておく必要があるな。
 忘れようと思っていたグローム王国の近況について考えを巡らせていると、馬車の窓の向こうに大きな風車が見えた。

「おおっ!」

 グローム王国では見かけないその姿に、俺は思わず声をあげた。
 それに、他の女子三人も気がついて外へと視線を送る。

「大きな風車ですねぇ」
「ということは、もうリドウィン王国へ?」
「えぇ。もう入りましたよ」

 いつの間にか、俺たちはリドウィン王国の領地に足を踏み入れていた。
 ……設定した通り、牧歌的でのんびりとした空気が流れている。絵に描いたような田舎町の光景だ。

「ここまでくれば、王都まではあと少しですよ」

 イベーラはそう言うけど、近くにそれらしい町は見えない。
 まあ、周辺の景色を見ても王都の規模は大体察しがつくのだが……ここまで小規模な国だったかな?

 ちょっと不安になってきたよ。
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