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第26話 やり直し
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諸事情により、ダブルヘッド・ベア討伐は断念。
翌日、代わりとなるクエストを探すため、ドミニクたちはギルドを訪れる。
すると、昨日はなかった新たなクエストが追加されていた。
「これも討伐クエストのようだな」
「標的は……ロック・スネークですね」
「ダブルヘッド・ベアに比べると報酬は下がるけど……その分、倒しやすいってことかな」
「油断は禁物ですよ、ドミニク」
「ああ、分かっているよ」
ダブルヘッド・ベア戦では、敵の目潰しにまんまと引っかかり、危うく大怪我を負うところだった。いや、もしかしたら、命を落としていたかもしれない。
今回の敵であるロック・スネークは、難易度こそダブルヘッド・ベアに及ばないものの、十分危険なモンスターだ。
ドミニクとしてはもう二度と油断したりしないと胸に誓っていたのだが、昨日の一件が原因でひとりの少女の心に火をつけてしまった。
「ドミニクは私が守る……」
ヤル気満々なのはイリーシャだった。
昨日、窮地に陥ったドミニクを見て気持ちが変わったらしい。その横ではシエナが「頑張って、イリーシャちゃん!」と無邪気に応援している。
「気持ちはありがたいがなぁ……」
「そういうな、ドミニク。あの子が誰かのために戦いたいと思うようになった……ワシは祖母として、その心境の変化を尊重したい」
孫娘の決意に、祖母である霊竜エヴァは胸を打たれたようだった。
「しかし……」
「前も言ったが、少しはイリーシャの力を信用しろ」
エヴァにはそう言われるものの、本当のところはどうだろうと、ドミニクは心配でならなかった。
ともかく、次のクエストはロック・スネーク討伐に決定。
これ以上旅の進行が遅れないよう、気合を入れないと――ドミニクたちは一層気合を入れて立ち向かうことに。
――と、その時、
「おっ? これから潜るのか?」
声をかけてきたのは、昨日ダンジョン内で出会い、夕食を共にしたアントニオだった。
「えぇ、そうなんです。アントニオさんもですか?」
「いや、俺はこっちでの目標金額に届いたから、家に戻るんだ」
アントニオは現在、農家と冒険者を兼業で行っているらしい。
野菜の育たない季節は、こうして遠出し、そこのダンジョンで生活費を稼いで帰る――いわば出稼ぎのようなものだ。
「俺はここから東にあるノルバックっていう町にいる。もし立ち寄ることがあれば、声をかけてくれ。歓迎するよ」
「ありがとうございます」
アントニオとドミニクは固い握手を交わし、再会を誓って別れた。
「いい人でしたね、アントニオさん」
「ああ」
アンジェをはじめ、シエナやイリーシャもアントニオとの別れを惜しんでいた。
◇◇◇
もう後はないという気持ちで挑んだ二日目のダンジョン。
目的のロック・スネークは、ダンジョン内を常に移動しているため、遭遇するのは困難だという情報を仕入れていたドミニク。だが、その対処法についてもきっちり情報を集めていた。
それはエサを使えばおびき寄せることができるというもの。そのため、ドミニクはロック・スネークの好物だというフレイム・バードの卵(約三十センチ)を購入し、罠として仕掛けたのだ。
「さて、あとは引っかかってくれるか、だな」
アンジェの情報によると、ロック・スネークは特殊なセンサーを体内に有しており、それを使ってエサの場所を探知するのだという。
しばらく待ってみると、
「! 来たぞ!」
物陰に隠れていたドミニクたちの前に、ロック・スネークが姿を現す。
その名の通り、いくつもの岩が重なってボディを形成していた。
「行こう、ドミニク」
「ああ!」
イリーシャとエヴァが憑依状態のドミニクが物陰から飛び出す。
いよいよイリーシャの冒険者デビュー戦だ。
翌日、代わりとなるクエストを探すため、ドミニクたちはギルドを訪れる。
すると、昨日はなかった新たなクエストが追加されていた。
「これも討伐クエストのようだな」
「標的は……ロック・スネークですね」
「ダブルヘッド・ベアに比べると報酬は下がるけど……その分、倒しやすいってことかな」
「油断は禁物ですよ、ドミニク」
「ああ、分かっているよ」
ダブルヘッド・ベア戦では、敵の目潰しにまんまと引っかかり、危うく大怪我を負うところだった。いや、もしかしたら、命を落としていたかもしれない。
今回の敵であるロック・スネークは、難易度こそダブルヘッド・ベアに及ばないものの、十分危険なモンスターだ。
ドミニクとしてはもう二度と油断したりしないと胸に誓っていたのだが、昨日の一件が原因でひとりの少女の心に火をつけてしまった。
「ドミニクは私が守る……」
ヤル気満々なのはイリーシャだった。
昨日、窮地に陥ったドミニクを見て気持ちが変わったらしい。その横ではシエナが「頑張って、イリーシャちゃん!」と無邪気に応援している。
「気持ちはありがたいがなぁ……」
「そういうな、ドミニク。あの子が誰かのために戦いたいと思うようになった……ワシは祖母として、その心境の変化を尊重したい」
孫娘の決意に、祖母である霊竜エヴァは胸を打たれたようだった。
「しかし……」
「前も言ったが、少しはイリーシャの力を信用しろ」
エヴァにはそう言われるものの、本当のところはどうだろうと、ドミニクは心配でならなかった。
ともかく、次のクエストはロック・スネーク討伐に決定。
これ以上旅の進行が遅れないよう、気合を入れないと――ドミニクたちは一層気合を入れて立ち向かうことに。
――と、その時、
「おっ? これから潜るのか?」
声をかけてきたのは、昨日ダンジョン内で出会い、夕食を共にしたアントニオだった。
「えぇ、そうなんです。アントニオさんもですか?」
「いや、俺はこっちでの目標金額に届いたから、家に戻るんだ」
アントニオは現在、農家と冒険者を兼業で行っているらしい。
野菜の育たない季節は、こうして遠出し、そこのダンジョンで生活費を稼いで帰る――いわば出稼ぎのようなものだ。
「俺はここから東にあるノルバックっていう町にいる。もし立ち寄ることがあれば、声をかけてくれ。歓迎するよ」
「ありがとうございます」
アントニオとドミニクは固い握手を交わし、再会を誓って別れた。
「いい人でしたね、アントニオさん」
「ああ」
アンジェをはじめ、シエナやイリーシャもアントニオとの別れを惜しんでいた。
◇◇◇
もう後はないという気持ちで挑んだ二日目のダンジョン。
目的のロック・スネークは、ダンジョン内を常に移動しているため、遭遇するのは困難だという情報を仕入れていたドミニク。だが、その対処法についてもきっちり情報を集めていた。
それはエサを使えばおびき寄せることができるというもの。そのため、ドミニクはロック・スネークの好物だというフレイム・バードの卵(約三十センチ)を購入し、罠として仕掛けたのだ。
「さて、あとは引っかかってくれるか、だな」
アンジェの情報によると、ロック・スネークは特殊なセンサーを体内に有しており、それを使ってエサの場所を探知するのだという。
しばらく待ってみると、
「! 来たぞ!」
物陰に隠れていたドミニクたちの前に、ロック・スネークが姿を現す。
その名の通り、いくつもの岩が重なってボディを形成していた。
「行こう、ドミニク」
「ああ!」
イリーシャとエヴァが憑依状態のドミニクが物陰から飛び出す。
いよいよイリーシャの冒険者デビュー戦だ。
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