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第173話 さらに奥地へ
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謎に包まれたラウシュ島の調査も折り返しに入った。
ここから先は島民たちでさえ足を踏み入れたことのない未踏の地――何が出て、何が起こるかまったく見当もつかない領域だ。
あらゆる事態を想定しなくてはならないため、準備も徹底して行う必要がある。それに加えて、同行する者たちの実力も相応でなければ進めないだろう。
その実力という面に関しては、今のところ問題ないと思う。少なくとも、これまでこの島の謎に挑んだどの勢力よりも強力な面子であるのは間違いと断言できる。
ダンジョン探索に精をだすロレッタを除いた黄金世代の四人。
そして伸び盛りのパトリシアとイム。
調査団の頭脳として同行しているクレールは非戦闘要員であるが、誰よりも長く島の研究をしてきた彼女はメンバーに欠かせない存在。安全を確保するため、全員でサポートしていく。
恐らく、当面の間はこれが調査を進めていく上でお決まりのフォーメーションになりそうだ。
新しい団員が加わったりすればまたいろいろと変更も出てくるのだろうが、今のところその予定はないのでしばらくはこのままだろうな。
準備も整ったところで、俺たちはいよいよラウシュ島中央にそびえ立つ山岳地帯からさらに奥地へと入っていった。
山の周辺は荒れ地となっていたが、その先には再び森が広がっていた。
しかし……どうにもおかしい。
口で表現するのは難しいが、とにかく嫌な気配が立ち込めている。
「ここもまたかなり深そうだな……ジャクリーヌ、探知魔法で周辺を軽く調べてくれないか?」
「分かりましたわ」
念のため、ジャクリーヌに頼んで周辺を調べてもらった。
結果は――
「特に異常はありませんわね」
とのこと。
俺の思い過ごしだったようだ。
気のせいだと分かり安堵した後、早速森へと入って辺りを調べてみようとみんなに呼びかけようとした――その時、
「あら?」
探知魔法を使っていたジャクリーヌが何かに反応する。
「どうした? 何かあったのか?」
「い、いえ……ほんの一瞬でしたが、魔力を感じましたわ」
「魔力?」
どういうことだ?
仮に、ダンジョンであれば魔鉱石の影響で魔力を探知することはあるのだろうが、ここは何もない荒れ地だ。前方に広大な森があるものの、この中に魔力を発生させる要因となる物があるとは思えない。それがあるとしたら、さっきの探知魔法で引っかかっているはずだ。
「正体不明の魔力……気になりますね」
警戒を強めたのはブリッツだった。
さすがは元騎士団エース。
こうしたちょっとした変化にもすぐさま反応してみせる。
「ですが、魔力のもとになる物が発見されないというのは不気味ですね……」
「うん……あたしも、なんだか嫌な予感がする」
不審がるパトリシアの横で、イムが弱気な発言をする。いつも元気な彼女らしくない言葉ではあるが、確かにこの森には恐怖感というか、足を踏み入れてはいけないと思わせる不可思議なオーラが漂っている。
――だからと言って、退くわけにはいかない。
ここを前進し、その不気味さの正体を見極めるのが調査団の仕事だ。
「とにかく調べてみよう」
俺はみんなに声をかけると、先頭を切って森へと入っていった。
ここから先は島民たちでさえ足を踏み入れたことのない未踏の地――何が出て、何が起こるかまったく見当もつかない領域だ。
あらゆる事態を想定しなくてはならないため、準備も徹底して行う必要がある。それに加えて、同行する者たちの実力も相応でなければ進めないだろう。
その実力という面に関しては、今のところ問題ないと思う。少なくとも、これまでこの島の謎に挑んだどの勢力よりも強力な面子であるのは間違いと断言できる。
ダンジョン探索に精をだすロレッタを除いた黄金世代の四人。
そして伸び盛りのパトリシアとイム。
調査団の頭脳として同行しているクレールは非戦闘要員であるが、誰よりも長く島の研究をしてきた彼女はメンバーに欠かせない存在。安全を確保するため、全員でサポートしていく。
恐らく、当面の間はこれが調査を進めていく上でお決まりのフォーメーションになりそうだ。
新しい団員が加わったりすればまたいろいろと変更も出てくるのだろうが、今のところその予定はないのでしばらくはこのままだろうな。
準備も整ったところで、俺たちはいよいよラウシュ島中央にそびえ立つ山岳地帯からさらに奥地へと入っていった。
山の周辺は荒れ地となっていたが、その先には再び森が広がっていた。
しかし……どうにもおかしい。
口で表現するのは難しいが、とにかく嫌な気配が立ち込めている。
「ここもまたかなり深そうだな……ジャクリーヌ、探知魔法で周辺を軽く調べてくれないか?」
「分かりましたわ」
念のため、ジャクリーヌに頼んで周辺を調べてもらった。
結果は――
「特に異常はありませんわね」
とのこと。
俺の思い過ごしだったようだ。
気のせいだと分かり安堵した後、早速森へと入って辺りを調べてみようとみんなに呼びかけようとした――その時、
「あら?」
探知魔法を使っていたジャクリーヌが何かに反応する。
「どうした? 何かあったのか?」
「い、いえ……ほんの一瞬でしたが、魔力を感じましたわ」
「魔力?」
どういうことだ?
仮に、ダンジョンであれば魔鉱石の影響で魔力を探知することはあるのだろうが、ここは何もない荒れ地だ。前方に広大な森があるものの、この中に魔力を発生させる要因となる物があるとは思えない。それがあるとしたら、さっきの探知魔法で引っかかっているはずだ。
「正体不明の魔力……気になりますね」
警戒を強めたのはブリッツだった。
さすがは元騎士団エース。
こうしたちょっとした変化にもすぐさま反応してみせる。
「ですが、魔力のもとになる物が発見されないというのは不気味ですね……」
「うん……あたしも、なんだか嫌な予感がする」
不審がるパトリシアの横で、イムが弱気な発言をする。いつも元気な彼女らしくない言葉ではあるが、確かにこの森には恐怖感というか、足を踏み入れてはいけないと思わせる不可思議なオーラが漂っている。
――だからと言って、退くわけにはいかない。
ここを前進し、その不気味さの正体を見極めるのが調査団の仕事だ。
「とにかく調べてみよう」
俺はみんなに声をかけると、先頭を切って森へと入っていった。
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