79 / 119
連載
第171話 調査再開の前に
しおりを挟む
ラシェルとマーサの件――完全に解決したというわけではないが、今の俺にできることはやった。
あとはレティシアの所在がつかめればと思うのだが……各地を転々としている反乱軍に身を寄せているという彼女と顔を合わせて話をすることは困難だろう。
いずれ、レゾンの治安が安定化すれば再会できるかもしれないけど……果たしてそれはいつになることやら。
とりあえず、ふたりの身柄は俺が――というより、ラウシュ島調査団で預かる運びとなった。
ふたりには拠点となる村にある調査団の詰め所で炊事洗濯といった家事全般をやってもらう。レティシアがいた頃から家事はやっていると言っていたラシェルは慣れた手つきをしているが、元騎士団であるマーサは大苦戦。
本来であれば、彼女にはブリッツたちと同じダンジョン調査班に合流しもらった方がいいのだろうが、自身がこの島に来た目的を忘れてしまったと同じく、剣の振り方まで記憶にないという。
というわけで、家事をラシェルに教えてもらいながらなんとかこなしてもらっているって感じだ。
一方、俺たちは改めて島の調査を再開するため準備を進めていた。
すると、そこへ珍しいお客さんが。
「やあ、オーリン団長」
「セルジさん? 珍しいですね」
イムの父親であるセルジさんが俺を訪ねてきた。
「今日はどうされましたか? イムでしたら、外でパトリシアと畑の世話をしていると思いますが」
「いや……今日はオーリン団長に用があってきたんだ」
「俺に?」
これまた珍しい。
セルジさん、本人にその意識はないようだけど、娘のイムをかなり気にかけていたからなぁ。てっきり、これからまた島の奥へ調査に出ると聞き、心配になって出発前の様子を見に来たのだと思っていたが……目的はまさかの俺だという。
「レゾン王国の方に会われたと聞いたので……」
「えっ? レゾンの?」
近くの岸で発見された難破船から、レゾン王国の副騎士団長であるオズボーン・リデア氏に関する情報がいくつか出てきた――という話なら、以前セルジさんも伝えている。だから、島民である彼がレゾン王国の名を知っている点についてはなんの違和感もない。
……ただ、なぜ気にかけているのかについては尋ねた方がよさそうだ。
「気になりますか?」
「えっ!? あっ、えっ、えぇ、まあ」
どうにも歯切れの悪い返しだな。
そう思っていると、
「お恥ずかしながら……難破船から見つかった情報を聞いていこう、なんだかずっと気になっているんです」
「気になる?」
「こう、なんというのか……適した表現かどうかは分からないんですけど、ワクワクしているというか」
「は、はあ……」
いわゆるロマンってヤツを感じているのかな?
そういえば、初めて難破船を目にしたウェンデルも似たようなことを言っていたような気がする。
しかし、セルジさんの得た情報には誤りもあるようだ。
まず、俺はレゾンの人間には会っていない。
会ったのは元上司であるディアズさんだけだ。
「セルジさん、その件については改めて詳しくお話しますよ」
「わ、分かりました」
彼には悪いけど、今回は調査を優先させてもらう。
それから戻ってから、改めて話すと告げた。
……ああ言っていたけど、やっぱりちょっと気になるな。
もしかしたら、レゾンについて何か言いたいことでもあったんじゃないか?
あとはレティシアの所在がつかめればと思うのだが……各地を転々としている反乱軍に身を寄せているという彼女と顔を合わせて話をすることは困難だろう。
いずれ、レゾンの治安が安定化すれば再会できるかもしれないけど……果たしてそれはいつになることやら。
とりあえず、ふたりの身柄は俺が――というより、ラウシュ島調査団で預かる運びとなった。
ふたりには拠点となる村にある調査団の詰め所で炊事洗濯といった家事全般をやってもらう。レティシアがいた頃から家事はやっていると言っていたラシェルは慣れた手つきをしているが、元騎士団であるマーサは大苦戦。
本来であれば、彼女にはブリッツたちと同じダンジョン調査班に合流しもらった方がいいのだろうが、自身がこの島に来た目的を忘れてしまったと同じく、剣の振り方まで記憶にないという。
というわけで、家事をラシェルに教えてもらいながらなんとかこなしてもらっているって感じだ。
一方、俺たちは改めて島の調査を再開するため準備を進めていた。
すると、そこへ珍しいお客さんが。
「やあ、オーリン団長」
「セルジさん? 珍しいですね」
イムの父親であるセルジさんが俺を訪ねてきた。
「今日はどうされましたか? イムでしたら、外でパトリシアと畑の世話をしていると思いますが」
「いや……今日はオーリン団長に用があってきたんだ」
「俺に?」
これまた珍しい。
セルジさん、本人にその意識はないようだけど、娘のイムをかなり気にかけていたからなぁ。てっきり、これからまた島の奥へ調査に出ると聞き、心配になって出発前の様子を見に来たのだと思っていたが……目的はまさかの俺だという。
「レゾン王国の方に会われたと聞いたので……」
「えっ? レゾンの?」
近くの岸で発見された難破船から、レゾン王国の副騎士団長であるオズボーン・リデア氏に関する情報がいくつか出てきた――という話なら、以前セルジさんも伝えている。だから、島民である彼がレゾン王国の名を知っている点についてはなんの違和感もない。
……ただ、なぜ気にかけているのかについては尋ねた方がよさそうだ。
「気になりますか?」
「えっ!? あっ、えっ、えぇ、まあ」
どうにも歯切れの悪い返しだな。
そう思っていると、
「お恥ずかしながら……難破船から見つかった情報を聞いていこう、なんだかずっと気になっているんです」
「気になる?」
「こう、なんというのか……適した表現かどうかは分からないんですけど、ワクワクしているというか」
「は、はあ……」
いわゆるロマンってヤツを感じているのかな?
そういえば、初めて難破船を目にしたウェンデルも似たようなことを言っていたような気がする。
しかし、セルジさんの得た情報には誤りもあるようだ。
まず、俺はレゾンの人間には会っていない。
会ったのは元上司であるディアズさんだけだ。
「セルジさん、その件については改めて詳しくお話しますよ」
「わ、分かりました」
彼には悪いけど、今回は調査を優先させてもらう。
それから戻ってから、改めて話すと告げた。
……ああ言っていたけど、やっぱりちょっと気になるな。
もしかしたら、レゾンについて何か言いたいことでもあったんじゃないか?
37
お気に入りに追加
5,533
あなたにおすすめの小説
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
浮気中の婚約者が私には塩対応なので塩対応返しすることにした
今川幸乃
恋愛
スターリッジ王国の貴族学園に通うリアナにはクリフというスポーツ万能の婚約者がいた。
リアナはクリフのことが好きで彼のために料理を作ったり勉強を教えたりと様々な親切をするが、クリフは当然の顔をしているだけで、まともに感謝もしない。
しかも彼はエルマという他の女子と仲良くしている。
もやもやが募るもののリアナはその気持ちをどうしていいか分からなかった。
そんな時、クリフが放課後もエルマとこっそり二人で会っていたことが分かる。
それを知ったリアナはこれまでクリフが自分にしていたように塩対応しようと決意した。
少しの間クリフはリアナと楽しく過ごそうとするが、やがて試験や宿題など様々な問題が起こる。
そこでようやくクリフは自分がいかにリアナに助けられていたかを実感するが、その時にはすでに遅かった。
※4/15日分の更新は抜けていた8話目「浮気」の更新にします。話の流れに差し障りが出てしまい申し訳ありません。
【完結済】聖女として異世界に召喚されてセックスしろとのことなので前の世界でフラれた男と激似の男を指名しました
箱根ハコ
BL
三崎省吾は高校の卒業式の当日に幼馴染の蓮に告白しフラれた。死にたい、と思っていたら白い光に包まれ異世界に召喚されていた。
「これからこの国のために適当に誰か選んでセックスをしてほしいんだ」と、省吾を呼び出した召喚士は言う。誰でもいい、という言葉に省吾はその場にいた騎士の一人で蓮にとても似ている男、ミロを指名した。
最初は蓮に似ている男と一晩を過ごせればいいという程度の気持ちだった。けれど、ミロと過ごすうちに彼のことを好きになってしまい……。
異世界✕召喚✕すれちがいラブなハッピーエンドです。
受け、攻めともに他の人とする描写があります。
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。