68 / 246
北方領ペルゼミネ編
第88話 雪の森での戦闘
しおりを挟む
「あまり悠長に待っているのは好きではないのだがな」
フェイゼルタットは落ち着かない様子で本部テント前を右往左往。
ただ、闇雲に突っ込んでも無駄に体力を消耗するだけというのは本人もよくわかっているので、捜索に出た部隊からの信号弾をひたすら待っていた。
「焦っても仕方がないぞ」
「わかっている。――だがな、姉のレアフォードの身にもし何かあったら、隔離竜舎で苦しんでいる同志たちを治すことはできない」
フェイゼルタットの言い分はもっともだった。
「それだけど……妹の病竜は今どうしているんだ?」
「あいつなら巣の奥で怯えている。もともと、活発な姉とは違って派手に動き回るのは大嫌いなヤツだからな。ゆえに、レアフォードたち姉妹は人間の目の届かないこの森の奥深くで暮らしていたのだ」
「そうなのか。……なら、その姉妹の姉が狙われている理由について心当たりは?」
「ないな。癒竜――あらゆる病を癒す能力は戦闘向きではないとはいえ、使い勝手はいいから欲しがる者はいるのだろうが……このペルゼミネを敵に回してまで欲しがるほどなのかと疑問符がつく。そもそも、あいつが妹を置いて誰かのもとにつくなど考えられないがな」
親交のあるフェイゼルタットならではの見解だった。
「それに、隔離竜舎から姿を消した残りの2匹の安否も気になる」
国家戦力であり仲間でもある行方不明の竜人族――その2匹についてもなんの音沙汰もないという事実が、フェイゼルタットを余計に焦らせていた。
「かなり焦っているようね」
「勝手に飛び出していかないか、ちょっと不安になりますね」
ブリギッテとカレンも、フェイゼルタットを心配しているようだ。
「うーん……俺は住処で怯えているという双子の妹竜人族が気になるな」
「病竜ミルフォードですね」
「たしかに、狙われているのが姉だけとは限らないものね」
今こうしている間にも、ミルフォードに危機が迫っているかもしれない。マイナスな想定を重ねていくうちに、颯太たちもそわそわと動き回る姿が目立ち始めた。――と、
ズオォン!
「! また雪崩だ!」
激しい揺れと、遠くで舞い上がる雪を視認し、それが雪崩によるものだと頭で結論付けた直後――待ちに待った信号弾が上がった。
「来たぞ! 合図だ!」
姉のレアフォードを発見したという一報に、フェイゼルタットが声を荒げる。
「ついに見つけたか! すぐに出撃するぞ!」
音を聞きつけて本部テントから出てきたルコードは、すぐさま待機させていた突撃部隊に命令する。それを確認して、
「先に行っているぞ!」
フェイゼルタットがいの一番に飛び出して――行こうとしたが、一旦ブレーキをして颯太の方へ駆け寄ると、
「おまえも来い」
「へ?」
「相手に人間がいる。おまえにはヤツへの通訳として私に同行してもらうぞ」
「ちょ――」
有無を言わさず、フェイゼルタットは颯太を手荷物かのように軽々と持ち上げて高々と大ジャンプ。あまりにも突然の出来事にポカンと口を開けたままのブリギッテたちを置き去りにして、颯太とフェイゼルタットの影は雪で白く染まる森の奥へと消えた。
「同志フェイゼルタットに後れを取るな! レアフォードの救出に全力を注げ!」
ルコードの号令で、編制されたレアフォード救出部隊が信号弾の上げられた位置へ向けて一斉に出撃した。
◇◇◇
代わり映えのしない景色が続く。
持ち上げたままではさすがに移動しづらいと言うフェイゼルタットからの申告を受け、一時的にお姫様だっこをされる形となったが、これはこれで倫理的にも絵面的にも耐えがたいという颯太の魂を込めた説得で却下。結局、ドラゴン形態へと姿を変えたフェイゼルタットの背中に乗って進むことにした。
フェイゼルタットはメアたちとは違い、翼を持たないタイプのドラゴンだったようで、雪に覆われた山道をひた走る。
そして――
「! レア!」
叫ぶフェイゼルタットの視線の先――大木の幹に身を預けて呼吸を整えている癒竜レアフォードの姿があった。
赤と黒が混じった独特の髪色に目尻が少し下がった緩いタレ目の少女。
あれが、癒竜レアフォードらしい。
「無事だったか!」
人間形態へと戻ったフェイゼルタットが一心不乱に駆け寄った。
「フェイ……なぜここに? 竜騎士団はどうした?」
「それよりもおまえの身の安全が大切だ」
「俺のことはどうだっていいんだ」
「そういうわけにもいかん。――ケガをしたのか!?」
「ちょっと擦りむいただけだ」
擦りむいただけというが、出血もしており、1人ではうまく立ち上がれない様子を見る限りけして軽傷とは思えなかった。それでも、頑なに「平気だって!」と言い張る癒竜レアフォードは、負けず嫌いで男勝りな性格のようだ。
「おまえを襲った、あのふざけた竜人族はどこに行った?」
「ここにいますよ」
唐突に割り込んできた第三の声。
その主は、
「おまえは――」
「これはこれは、リンスウッド・ファームのオーナーさんまでいらっしゃるとは」
舞踏会の夜にハルヴァを襲撃した、あのローブの男だった。
その横には竜人族ナインレウスの姿もある。
「貴様か……人の土地で随分と好き勝手暴れてくれるじゃないか。それだけにとどまらず、我が朋友レアフォードを追い回すとは――覚悟はできているんだろうな?」
抑え込まれていた殺気が一気に解放され、フェイゼルタット眼光に鋭さが増した。
「ソータ、おまえはレアを頼む」
「あ、ああ」
「! え? なんでフェイの言葉がわかるんだよ!?」
「詳しい事情は後で説明する。さあ、こっちへ」
負傷したレアフォードの肩を抱き、現場から遠ざかる颯太。
すぐに追いかけようとする前進するローブの男とナインレウスの前にフェイゼルタットが立ちはだかった。
「これ以上この地で傍若無人な振る舞いができると思うなよ」
今にも飛びかからんとする獰猛な目つき。
その気迫に、ローブの男は足を止めてナインレウスへ視線を送る。
「ナイン」
「…………」
ローブの男に名を呼ばれたナインは両手を前方へ突き出す。
あの構えには見覚えがあった。
「! 気をつけろ、フェイゼルタット! あいつは斬撃を飛ばす能力を持っているぞ!」
「斬撃を飛ばすだと? ――面白い!」
何を思ったのか、フェイゼルタットはガバッと両手を広げた。あれでは的になっているようなものだ。
「さあ、撃って来るがいい!」
さらに相手を挑発する。
しかし、フェイゼルタットは意に介したよう様子はなく、舞踏会の夜にキルカジルカへ放ったような目に見えない斬撃を飛ばしてきた。
立ち並ぶ木々の幹をズタズタに引き裂きながら、フェイゼルタットへ向かってくる数えきれない斬撃――と、
ガン!
ギン!
「うっ!?」
金属同士がぶつかり合うような不快な音に、颯太はたまらず耳を塞いだ。
間違いなく、斬撃はひとつ残らずフェイゼルタットに直撃した――はずなのだが、当のフェイゼルタット自身は先ほどと変わらず両手を広げた状態で立っている。
「その程度か?」
痛くも痒くもないと言わんばかりに、フェイゼルタットはナインレウスの攻撃を鼻で笑い飛ばした。
「ど、どうなっているんだ……」
なぜ、フェイゼルタットは無傷なのか。
その答えは――その能力にあった。
「そういえばまだ名乗っていなかったな。――我が名は《鎧竜》フェイゼルタット。重厚な鎧をも凌駕するこの強固な体にそう易々と傷はつけられぬぞ?」
自慢げに言い放つフェイゼルタットはナインレウスへゆっくりと歩み寄る。
「貴様の能力――残念ながら、我が能力との相性は最悪なようだな」
たしかに、ナインレウスの攻撃を真正面から受け止めても無傷でいるフェイゼルタットの様子から、これ以上の交戦は無意味に思える。
――が、ローブの男は口元を歪めて、
「君の言う通り、今のナインの能力では太刀打ちできそうにないね」
「今の?」
「そう。今の能力では、ね。――ナイン……別の能力を使うんだ」
その言葉に、ナインは頷くことで返事をし、そして、
「! な、なんだと!?」
光に包まれたナインレウスは、その髪や瞳の色を大きく変化させた。
フェイゼルタットは落ち着かない様子で本部テント前を右往左往。
ただ、闇雲に突っ込んでも無駄に体力を消耗するだけというのは本人もよくわかっているので、捜索に出た部隊からの信号弾をひたすら待っていた。
「焦っても仕方がないぞ」
「わかっている。――だがな、姉のレアフォードの身にもし何かあったら、隔離竜舎で苦しんでいる同志たちを治すことはできない」
フェイゼルタットの言い分はもっともだった。
「それだけど……妹の病竜は今どうしているんだ?」
「あいつなら巣の奥で怯えている。もともと、活発な姉とは違って派手に動き回るのは大嫌いなヤツだからな。ゆえに、レアフォードたち姉妹は人間の目の届かないこの森の奥深くで暮らしていたのだ」
「そうなのか。……なら、その姉妹の姉が狙われている理由について心当たりは?」
「ないな。癒竜――あらゆる病を癒す能力は戦闘向きではないとはいえ、使い勝手はいいから欲しがる者はいるのだろうが……このペルゼミネを敵に回してまで欲しがるほどなのかと疑問符がつく。そもそも、あいつが妹を置いて誰かのもとにつくなど考えられないがな」
親交のあるフェイゼルタットならではの見解だった。
「それに、隔離竜舎から姿を消した残りの2匹の安否も気になる」
国家戦力であり仲間でもある行方不明の竜人族――その2匹についてもなんの音沙汰もないという事実が、フェイゼルタットを余計に焦らせていた。
「かなり焦っているようね」
「勝手に飛び出していかないか、ちょっと不安になりますね」
ブリギッテとカレンも、フェイゼルタットを心配しているようだ。
「うーん……俺は住処で怯えているという双子の妹竜人族が気になるな」
「病竜ミルフォードですね」
「たしかに、狙われているのが姉だけとは限らないものね」
今こうしている間にも、ミルフォードに危機が迫っているかもしれない。マイナスな想定を重ねていくうちに、颯太たちもそわそわと動き回る姿が目立ち始めた。――と、
ズオォン!
「! また雪崩だ!」
激しい揺れと、遠くで舞い上がる雪を視認し、それが雪崩によるものだと頭で結論付けた直後――待ちに待った信号弾が上がった。
「来たぞ! 合図だ!」
姉のレアフォードを発見したという一報に、フェイゼルタットが声を荒げる。
「ついに見つけたか! すぐに出撃するぞ!」
音を聞きつけて本部テントから出てきたルコードは、すぐさま待機させていた突撃部隊に命令する。それを確認して、
「先に行っているぞ!」
フェイゼルタットがいの一番に飛び出して――行こうとしたが、一旦ブレーキをして颯太の方へ駆け寄ると、
「おまえも来い」
「へ?」
「相手に人間がいる。おまえにはヤツへの通訳として私に同行してもらうぞ」
「ちょ――」
有無を言わさず、フェイゼルタットは颯太を手荷物かのように軽々と持ち上げて高々と大ジャンプ。あまりにも突然の出来事にポカンと口を開けたままのブリギッテたちを置き去りにして、颯太とフェイゼルタットの影は雪で白く染まる森の奥へと消えた。
「同志フェイゼルタットに後れを取るな! レアフォードの救出に全力を注げ!」
ルコードの号令で、編制されたレアフォード救出部隊が信号弾の上げられた位置へ向けて一斉に出撃した。
◇◇◇
代わり映えのしない景色が続く。
持ち上げたままではさすがに移動しづらいと言うフェイゼルタットからの申告を受け、一時的にお姫様だっこをされる形となったが、これはこれで倫理的にも絵面的にも耐えがたいという颯太の魂を込めた説得で却下。結局、ドラゴン形態へと姿を変えたフェイゼルタットの背中に乗って進むことにした。
フェイゼルタットはメアたちとは違い、翼を持たないタイプのドラゴンだったようで、雪に覆われた山道をひた走る。
そして――
「! レア!」
叫ぶフェイゼルタットの視線の先――大木の幹に身を預けて呼吸を整えている癒竜レアフォードの姿があった。
赤と黒が混じった独特の髪色に目尻が少し下がった緩いタレ目の少女。
あれが、癒竜レアフォードらしい。
「無事だったか!」
人間形態へと戻ったフェイゼルタットが一心不乱に駆け寄った。
「フェイ……なぜここに? 竜騎士団はどうした?」
「それよりもおまえの身の安全が大切だ」
「俺のことはどうだっていいんだ」
「そういうわけにもいかん。――ケガをしたのか!?」
「ちょっと擦りむいただけだ」
擦りむいただけというが、出血もしており、1人ではうまく立ち上がれない様子を見る限りけして軽傷とは思えなかった。それでも、頑なに「平気だって!」と言い張る癒竜レアフォードは、負けず嫌いで男勝りな性格のようだ。
「おまえを襲った、あのふざけた竜人族はどこに行った?」
「ここにいますよ」
唐突に割り込んできた第三の声。
その主は、
「おまえは――」
「これはこれは、リンスウッド・ファームのオーナーさんまでいらっしゃるとは」
舞踏会の夜にハルヴァを襲撃した、あのローブの男だった。
その横には竜人族ナインレウスの姿もある。
「貴様か……人の土地で随分と好き勝手暴れてくれるじゃないか。それだけにとどまらず、我が朋友レアフォードを追い回すとは――覚悟はできているんだろうな?」
抑え込まれていた殺気が一気に解放され、フェイゼルタット眼光に鋭さが増した。
「ソータ、おまえはレアを頼む」
「あ、ああ」
「! え? なんでフェイの言葉がわかるんだよ!?」
「詳しい事情は後で説明する。さあ、こっちへ」
負傷したレアフォードの肩を抱き、現場から遠ざかる颯太。
すぐに追いかけようとする前進するローブの男とナインレウスの前にフェイゼルタットが立ちはだかった。
「これ以上この地で傍若無人な振る舞いができると思うなよ」
今にも飛びかからんとする獰猛な目つき。
その気迫に、ローブの男は足を止めてナインレウスへ視線を送る。
「ナイン」
「…………」
ローブの男に名を呼ばれたナインは両手を前方へ突き出す。
あの構えには見覚えがあった。
「! 気をつけろ、フェイゼルタット! あいつは斬撃を飛ばす能力を持っているぞ!」
「斬撃を飛ばすだと? ――面白い!」
何を思ったのか、フェイゼルタットはガバッと両手を広げた。あれでは的になっているようなものだ。
「さあ、撃って来るがいい!」
さらに相手を挑発する。
しかし、フェイゼルタットは意に介したよう様子はなく、舞踏会の夜にキルカジルカへ放ったような目に見えない斬撃を飛ばしてきた。
立ち並ぶ木々の幹をズタズタに引き裂きながら、フェイゼルタットへ向かってくる数えきれない斬撃――と、
ガン!
ギン!
「うっ!?」
金属同士がぶつかり合うような不快な音に、颯太はたまらず耳を塞いだ。
間違いなく、斬撃はひとつ残らずフェイゼルタットに直撃した――はずなのだが、当のフェイゼルタット自身は先ほどと変わらず両手を広げた状態で立っている。
「その程度か?」
痛くも痒くもないと言わんばかりに、フェイゼルタットはナインレウスの攻撃を鼻で笑い飛ばした。
「ど、どうなっているんだ……」
なぜ、フェイゼルタットは無傷なのか。
その答えは――その能力にあった。
「そういえばまだ名乗っていなかったな。――我が名は《鎧竜》フェイゼルタット。重厚な鎧をも凌駕するこの強固な体にそう易々と傷はつけられぬぞ?」
自慢げに言い放つフェイゼルタットはナインレウスへゆっくりと歩み寄る。
「貴様の能力――残念ながら、我が能力との相性は最悪なようだな」
たしかに、ナインレウスの攻撃を真正面から受け止めても無傷でいるフェイゼルタットの様子から、これ以上の交戦は無意味に思える。
――が、ローブの男は口元を歪めて、
「君の言う通り、今のナインの能力では太刀打ちできそうにないね」
「今の?」
「そう。今の能力では、ね。――ナイン……別の能力を使うんだ」
その言葉に、ナインは頷くことで返事をし、そして、
「! な、なんだと!?」
光に包まれたナインレウスは、その髪や瞳の色を大きく変化させた。
0
お気に入りに追加
4,471
あなたにおすすめの小説
とある中年男性の転生冒険記
うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。
プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~
笹原うずら
ファンタジー
獣人ばかりの世界の主人公は、炎を使う人間の姿をした少年だった。
鳥人族の国、スカイルの孤児の施設で育てられた主人公、サン。彼は陽天流という剣術の師範であるハヤブサの獣人ファルに預けられ、剣術の修行に明け暮れていた。しかしある日、ライバルであるツバメの獣人スアロと手合わせをした際、獣の力を持たないサンは、敗北してしまう。
自信の才能のなさに落ち込みながらも、様々な人の励ましを経て、立ち直るサン。しかしそんなサンが施設に戻ったとき、獣人の獣の部位を売買するパーツ商人に、サンは施設の仲間を奪われてしまう。さらに、サンの事を待ち構えていたパーツ商人の一人、ハイエナのイエナに死にかけの重傷を負わされる。
傷だらけの身体を抱えながらも、みんなを守るために立ち上がり、母の形見のペンダントを握り締めるサン。するとその時、死んだはずの母がサンの前に現れ、彼の炎の力を呼び覚ますのだった。
炎の力で獣人だらけの世界を切り開く、痛快大長編異世界ファンタジーが、今ここに開幕する!!!
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~
【書籍化決定!】
本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました!
第1巻は10月下旬発売!
よろしくお願いします!
賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。
その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。
一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。
こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……
蒼星伝 ~マッチ売りの男の娘はチート改造され、片翼の天使と成り果て、地上に舞い降りる剣と化す~
ももちく
ファンタジー
|神代《かみよ》の時代から、創造主:Y.O.N.Nと悪魔の統括者であるハイヨル混沌は激しい戦いを繰り返してきた。
その両者の戦いの余波を受けて、惑星:ジ・アースは4つに分かたれてしまう。
それから、さらに途方もない年月が経つ。
復活を果たしたハイヨル混沌は今度こそ、創造主;Y.O.N.Nとの決着をつけるためにも、惑星:ジ・アースを完全に暗黒の世界へと変えようとする。
ハイヨル混沌の支配を跳ね返すためにも、創造主:Y.O.N.Nのパートナーとも呼べる天界の主である星皇が天使軍団を率い、ハイヨル混沌軍団との戦いを始める。
しかし、ハイヨル混沌軍団は地上界を闇の世界に堕とすだけでなく、星皇の妻の命を狙う。
その計画を妨害するためにも星皇は自分の妾(男の娘)を妻の下へと派遣する。
幾星霜もの間、続いた創造主:Y.O.N.Nとハイヨル混沌との戦いに終止符を打つキーマンとなる星皇の妻と妾(男の娘)は互いの手を取り合う。
時にはぶつかり合い、地獄と化していく地上界で懸命に戦い、やがて、その命の炎を燃やし尽くす……。
彼女達の命の輝きを見た地上界の住人たちは、彼女たちの戦いの軌跡と生き様を『蒼星伝』として語り継ぐことになる。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす
鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》
社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。
このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。