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第49話 同僚への想い
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サラを飲みに誘うと、ふたつ返事でOKが出た。
少し残業をしてからと言われたので、俺も明日の仕事の準備をしつつ待つことに。すると、
「にゃあ……」
「どうしたんだ、ラドルフ。死にかけているのか?」
「おまえはちょいちょい失礼な物言いをするにゃ! 吾輩が高貴でエレガントな使い魔であるという認識にとてつもなく欠けているにゃ!」
「はいはい」
いつものやりとりはここまでにして、さっさと本題を聞きだすか。
「何が気になっているんだ?」
「……サラ先生のことにゃ」
「サラ? 彼女がどうかしたのか?」
そう話すと、ラドルフの表情がキッと険しくなる。
「おまえがどう思っているのかは分からないが……サラ先生は美人にゃ。おまけに気さくで話しかけやすく、仕事にも熱心に取り組むまさに教師の鑑と呼ぶべきお人にゃ」
「ベタ褒めだな」
しかし、ラドルフの言う通りではあると思う。
【星鯨】にいた頃からサラは真面目だったし、ブリングが愛人にしたいと口説きまくっていたからなぁ。
でも正直、最初はブリングの冒険者としての腕に惚れ込んで【星鯨】に入ったんだよな。それが女好きのロクデナシって分かると態度を豹変させていた。なんというか、一気に熱が冷めたって対応だったな。
「吾輩はずっと気にかけていたにゃ……なぜなら、あれだけの完璧レディでありながらもこれまで浮いた話は一度も聞こえてこないのにゃ! 結構な数の独身男性職員がアプローチをかけたらしいが、すべて玉砕しているという話にゃ!」
「へぇー」
「反応薄いにゃ!?」
「えっ? そうかな」
どうやら、ラドルフは俺の反応に不満があるらしい。
「……正直に言うと、おまえが来てからサラ先生は明らかに変わったにゃ」
「そうなのか?」
この学園で働き始めた頃のサラがどんな様子であったかは知らないからまったく気づかなかった。
というか、ここで再会してから今日に至るまでの間にそれほど目に見えた変化はないように思えるのだけどな。冒険者時代と根っこは変わっていないというのが再会した時の第一印象だった。
だが、ラドルフの口ぶりから察するにだいぶ変わったようだな。
「何かきっかけがあったのかな」
「それがおまえだと吾輩は言っているにゃ」
「俺が? ……確かに、昔の同僚が入ってきたから当時のノリを思い出したんだろうな」
「それを本気で言っているのなら……学園長にお願いして脳天に最大威力の雷魔法を食らわせてもらうことをオススメするにゃ」
「なんでだよ!?」
そんなおかしなことを言った覚えはないんだけどな。
ラドルフといつもの調子で騒いでいたら、話題の中心人物であったサラが管理小屋を訪ねてきた。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって」
「大丈夫だよ。それより、急に誘って悪かったな」
「とんでもない。私もまたあなたとお酒を飲みながら話をしたいと思っていたからちょうどいいいわ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「……サラ先生」
「? 何、ラドルフ」
「こいつを攻め落とすなら正攻法だけじゃ無理にゃ」
「へっ?」
「その場のノリと勢いに任せて雪崩れ込む戦法も考慮すべきにゃ。たとえばこの後でお酒に酔ったと嘘をついてもたれかかり――」
「さ、さあ、早く行きましょう!」
「お、おう」
「まだ話は終わっていないにゃ! とりあえず、吾輩は今日どこか別の場所で寝るから管理小屋はフリーにゃ! それを忘れるにゃ!」
なんだかよく分からん内容を叫ぶラドルフ……なるほど。俺たちが夜通し議論を交わすと想定し、邪魔しないための配慮か。
やれやれ、たまにはいい心掛けをするじゃないか。
今度、ちょっと高級な魚料理でも振る舞ってやるとするか。
少し残業をしてからと言われたので、俺も明日の仕事の準備をしつつ待つことに。すると、
「にゃあ……」
「どうしたんだ、ラドルフ。死にかけているのか?」
「おまえはちょいちょい失礼な物言いをするにゃ! 吾輩が高貴でエレガントな使い魔であるという認識にとてつもなく欠けているにゃ!」
「はいはい」
いつものやりとりはここまでにして、さっさと本題を聞きだすか。
「何が気になっているんだ?」
「……サラ先生のことにゃ」
「サラ? 彼女がどうかしたのか?」
そう話すと、ラドルフの表情がキッと険しくなる。
「おまえがどう思っているのかは分からないが……サラ先生は美人にゃ。おまけに気さくで話しかけやすく、仕事にも熱心に取り組むまさに教師の鑑と呼ぶべきお人にゃ」
「ベタ褒めだな」
しかし、ラドルフの言う通りではあると思う。
【星鯨】にいた頃からサラは真面目だったし、ブリングが愛人にしたいと口説きまくっていたからなぁ。
でも正直、最初はブリングの冒険者としての腕に惚れ込んで【星鯨】に入ったんだよな。それが女好きのロクデナシって分かると態度を豹変させていた。なんというか、一気に熱が冷めたって対応だったな。
「吾輩はずっと気にかけていたにゃ……なぜなら、あれだけの完璧レディでありながらもこれまで浮いた話は一度も聞こえてこないのにゃ! 結構な数の独身男性職員がアプローチをかけたらしいが、すべて玉砕しているという話にゃ!」
「へぇー」
「反応薄いにゃ!?」
「えっ? そうかな」
どうやら、ラドルフは俺の反応に不満があるらしい。
「……正直に言うと、おまえが来てからサラ先生は明らかに変わったにゃ」
「そうなのか?」
この学園で働き始めた頃のサラがどんな様子であったかは知らないからまったく気づかなかった。
というか、ここで再会してから今日に至るまでの間にそれほど目に見えた変化はないように思えるのだけどな。冒険者時代と根っこは変わっていないというのが再会した時の第一印象だった。
だが、ラドルフの口ぶりから察するにだいぶ変わったようだな。
「何かきっかけがあったのかな」
「それがおまえだと吾輩は言っているにゃ」
「俺が? ……確かに、昔の同僚が入ってきたから当時のノリを思い出したんだろうな」
「それを本気で言っているのなら……学園長にお願いして脳天に最大威力の雷魔法を食らわせてもらうことをオススメするにゃ」
「なんでだよ!?」
そんなおかしなことを言った覚えはないんだけどな。
ラドルフといつもの調子で騒いでいたら、話題の中心人物であったサラが管理小屋を訪ねてきた。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって」
「大丈夫だよ。それより、急に誘って悪かったな」
「とんでもない。私もまたあなたとお酒を飲みながら話をしたいと思っていたからちょうどいいいわ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「……サラ先生」
「? 何、ラドルフ」
「こいつを攻め落とすなら正攻法だけじゃ無理にゃ」
「へっ?」
「その場のノリと勢いに任せて雪崩れ込む戦法も考慮すべきにゃ。たとえばこの後でお酒に酔ったと嘘をついてもたれかかり――」
「さ、さあ、早く行きましょう!」
「お、おう」
「まだ話は終わっていないにゃ! とりあえず、吾輩は今日どこか別の場所で寝るから管理小屋はフリーにゃ! それを忘れるにゃ!」
なんだかよく分からん内容を叫ぶラドルフ……なるほど。俺たちが夜通し議論を交わすと想定し、邪魔しないための配慮か。
やれやれ、たまにはいい心掛けをするじゃないか。
今度、ちょっと高級な魚料理でも振る舞ってやるとするか。
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