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第15話 一夜明けて
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翌朝。
俺は朝食を終えると、花壇の手入れをしようと道具を片手に管理小屋から外へと出る。
炎属性を持ちながらも、過去の出来事から炎に対して重度の苦手意識を持っていた学園の女子生徒フィナ。
しかし、育成スキルがその問題を解決してくれた。
本来の属性である炎魔法を自在に操れるようになったフィナだが、風魔法の習得についても今後継続していくという。
故郷への思い入れが強いのは、きっと戦争で亡くなった両親や友人たちのことを忘れないようにするためでもあるのだろう。
ちなみに、今日の午後からまた闘技場で実戦形式の鍛錬に挑むらしい。フィナはミアン様との再戦を熱望していたが、残念ながら彼女は家の都合で今日一日留守になるようで、リベンジマッチはまたの機会となった。
……ただ、さすがにまだミアン様には敵わないかな。
本人としてもそれは重々承知しているらしいが、前回は手も足も出なかったのでなんとか一矢報いたいという気持ちのようだ。
考え方が前向きになっているのは、喜ばしいことではある。
フィナにはこれからも頑張ってもらいたいな。
「さて……俺も若者たちに負けないよう、仕事に邁進するか」
管理人としての心得――この学生寮が、生徒たちにとって住みよい環境であるようにすること。
引退した前任者が残してくれたメモには、そう記されていた。俺はそれを胸に刻み込むために、管理小屋内にある黒板へ張りつけてある。
サラの話では、今日あたりから学園の新学期に向けて帰省していた生徒たちが大勢戻ってくるだろうとのこと。
きっと、たくさんの生徒と顔を合わせることになるのだろうが……そう思うと、なんだか柄にもなく緊張してきたな。
「いかんいかん……余計なことは考えず、仕事をしなければ」
早いところ花壇の手入れをしてしまおうと思った――その時、近くの茂みからガサガサという音が。冒険者時代の癖でモンスターを警戒したが、ここは厳重な警備によって守られている王立魔剣学園。そんな物騒な存在がいるはずもない。
では、茂みから現れたのはなんだったのかというと――
「なんだ……猫か」
茶色い毛並みの猫が茂みから飛びだしてきた。
それにしても……どこから来たんだ?
学園寮ではペットの飼育は禁止だから、恐らく野良か。学園街で誰かが飼っていたのが逃げてきたという線もあるな。
ひとまず管理小屋で預かっておいて、サラに相談してみよう。
そう思って近づいてみたら、
「おまえが新しい学生寮の管理人にゃ?」
「へっ?」
いきなり猫が喋った。
「吾輩の名前はラドルフにゃ」
「は、はあ……」
「……おまえ、なんでそんなに反応が淡泊なのにゃ?」
「と、申しますと?」
思わず敬語で聞き返してしまった。
そのふっくらとした体格含め、なんだか妙に貫禄があるんだもんなぁ。
……まあ、それはひとまず置いておくとして……喋る猫はどうも俺の薄い反応がお気に召さないらしかった。
「普通、喋る猫がいたらもっと驚くものにゃ!」
「う、うーん……冒険者時代に何度か獣人族とも絡んだから、耐性がついているのかも?」
「元冒険者……その発想はなかったにゃ」
な、何なんだ、この猫は。
管理人のことを知っているとなると、学園の関係者――いや、関係猫?
疑いの眼差しを向けられていることに気づいた猫……ラドルフだったかな。そのラドルフは抗議するように声をあげる。
「吾輩はおまえの仕事ぶりを監視するために来たのにゃ! 学園長やサラ先生はおまえを信用しているようだけど、吾輩の目は誤魔化されないニャ!」
「…………」
「何にゃ! その呆けた顔は! 疑っているのにゃ!?」
「いや、俺を監視する目的なら……わざわざ使い魔だと正体を明かす必要もなかったんじゃないか? 実際、俺は君が話しだすまで普通の猫だと思っていたわけだし」
「にゃ……っ!?!?」
あっ、固まっちゃった。
……とりあえず、サラにいろいろと聞いてみるか。
※このあと17:00にも投稿予定!
俺は朝食を終えると、花壇の手入れをしようと道具を片手に管理小屋から外へと出る。
炎属性を持ちながらも、過去の出来事から炎に対して重度の苦手意識を持っていた学園の女子生徒フィナ。
しかし、育成スキルがその問題を解決してくれた。
本来の属性である炎魔法を自在に操れるようになったフィナだが、風魔法の習得についても今後継続していくという。
故郷への思い入れが強いのは、きっと戦争で亡くなった両親や友人たちのことを忘れないようにするためでもあるのだろう。
ちなみに、今日の午後からまた闘技場で実戦形式の鍛錬に挑むらしい。フィナはミアン様との再戦を熱望していたが、残念ながら彼女は家の都合で今日一日留守になるようで、リベンジマッチはまたの機会となった。
……ただ、さすがにまだミアン様には敵わないかな。
本人としてもそれは重々承知しているらしいが、前回は手も足も出なかったのでなんとか一矢報いたいという気持ちのようだ。
考え方が前向きになっているのは、喜ばしいことではある。
フィナにはこれからも頑張ってもらいたいな。
「さて……俺も若者たちに負けないよう、仕事に邁進するか」
管理人としての心得――この学生寮が、生徒たちにとって住みよい環境であるようにすること。
引退した前任者が残してくれたメモには、そう記されていた。俺はそれを胸に刻み込むために、管理小屋内にある黒板へ張りつけてある。
サラの話では、今日あたりから学園の新学期に向けて帰省していた生徒たちが大勢戻ってくるだろうとのこと。
きっと、たくさんの生徒と顔を合わせることになるのだろうが……そう思うと、なんだか柄にもなく緊張してきたな。
「いかんいかん……余計なことは考えず、仕事をしなければ」
早いところ花壇の手入れをしてしまおうと思った――その時、近くの茂みからガサガサという音が。冒険者時代の癖でモンスターを警戒したが、ここは厳重な警備によって守られている王立魔剣学園。そんな物騒な存在がいるはずもない。
では、茂みから現れたのはなんだったのかというと――
「なんだ……猫か」
茶色い毛並みの猫が茂みから飛びだしてきた。
それにしても……どこから来たんだ?
学園寮ではペットの飼育は禁止だから、恐らく野良か。学園街で誰かが飼っていたのが逃げてきたという線もあるな。
ひとまず管理小屋で預かっておいて、サラに相談してみよう。
そう思って近づいてみたら、
「おまえが新しい学生寮の管理人にゃ?」
「へっ?」
いきなり猫が喋った。
「吾輩の名前はラドルフにゃ」
「は、はあ……」
「……おまえ、なんでそんなに反応が淡泊なのにゃ?」
「と、申しますと?」
思わず敬語で聞き返してしまった。
そのふっくらとした体格含め、なんだか妙に貫禄があるんだもんなぁ。
……まあ、それはひとまず置いておくとして……喋る猫はどうも俺の薄い反応がお気に召さないらしかった。
「普通、喋る猫がいたらもっと驚くものにゃ!」
「う、うーん……冒険者時代に何度か獣人族とも絡んだから、耐性がついているのかも?」
「元冒険者……その発想はなかったにゃ」
な、何なんだ、この猫は。
管理人のことを知っているとなると、学園の関係者――いや、関係猫?
疑いの眼差しを向けられていることに気づいた猫……ラドルフだったかな。そのラドルフは抗議するように声をあげる。
「吾輩はおまえの仕事ぶりを監視するために来たのにゃ! 学園長やサラ先生はおまえを信用しているようだけど、吾輩の目は誤魔化されないニャ!」
「…………」
「何にゃ! その呆けた顔は! 疑っているのにゃ!?」
「いや、俺を監視する目的なら……わざわざ使い魔だと正体を明かす必要もなかったんじゃないか? 実際、俺は君が話しだすまで普通の猫だと思っていたわけだし」
「にゃ……っ!?!?」
あっ、固まっちゃった。
……とりあえず、サラにいろいろと聞いてみるか。
※このあと17:00にも投稿予定!
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