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星の名前

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「先輩……」
 と1回呼んで俺の唇に柔らかくて暖かいものが触れた。それは紛れもなく千代の唇でキスだった。俺はそれがファーストキスで俺の胸はドキドキしていた。
「千代?」
 千代は泣いていた。今日何回目かはわからないが、千代は静かに泣いていた。
「やっとできた……」
 千代は泣いたままニコッと笑った。その顔は美しくてきれいで、今鳴っている花火よりも明らかにきれいだった。
「千代なんで泣いてるんだ?」
 俺は笑う気持ちはわかるがなぜ泣くかはわからなかった。
「だって……先輩とできたんだもん……嬉しくて泣きますよ……」
 俺にはよくわからないが嬉し泣きだったようだ。
「そうか、俺も今胸が張り裂けそうだよ」
 俺は今の気持ちを正直に打ち明けた。
「先輩?私とキスできて嬉しいですか?」
 千代は不安げにそう聞いてきた。
「当たり前だろ……てか、今千代を見ると恥ずかしすぎて死ねるかもしんねぇ」
 そう言うと千代は顔を抑えながら俺に言ってきた。
「実は私もです……私も恥ずかしすぎて死にそうです!」
「え!?なんで恥ずかしいの!?こういうこと何回もしてるんじゃないの?」
「実はキスしたの……初めてなんです」
 俺はその言葉に驚愕した。千代は俺から見ればモテて勉強もできて完璧なので、キスなど何回もしているんじゃないかと思っていた。しかし、彼女もファーストキスだと言っていたのでそんなに軽い女ではないとわかった。俺は失礼なことをしてしまった。
「ごめん……軽い女だと思ってた……」
 俺は自分がした無礼なことを全力で謝った。もしかしたら、殴られるかもしれない。でも、それで彼女がおさまるなら今はそれでよかった。
「ううん、私それ言われるの初めてじゃないの……」
 俺は戸惑った。彼女はさっき俺とのキスがファーストキスだと言っていたが、これを言われたのが初めてじゃないってことは他の人にも言っているってことになるから、そういうことになると彼女は他の人とキスをしていることになる。
「初めてじゃないってどういうことだ……」
 俺は少し怒った状態で問いかけた。
「女友達で女子会してる時にいつも恋の話になるんだけど、私キスしたことないよって言うとみんな驚いて、さっき先輩が言ってたみたいになるんです」
 どうやら俺はまた勘違いしていたようだ。今日1日で感じたことは俺が相当なクズだということだ。
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