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おまけの小話(ドゴール視点)③

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「……っ、は、っ」

「ふふ、気持ち良いですか?」

 私の素肌に手を滑らせながら、エレナは言った。その笑みは酷く蠱惑的であり、やや意地悪くも見える。今の状況からして、それも致し方ないだろう。

「最近お仕事で疲れてらっしゃるから、マッサージが効くと良いのですが」

「……っ、エレナ、っ、もう……、ぐっ!?


「あら、そんな声出したらスヴェンが起きてしまうじゃないですか」

「……っ」

 からかい混じりの彼女の一言を聞いて、慌てて手のひらを噛んで口を閉じる。横目でベビーベッドの方に目を向けるが、息子が起きた気配は無い。それに安堵したのも束の間。性的な快感が下半身からせり上ってきたのだった。

「……っ、ぐ!?」

「ん、好いみたいですね」

 いつの間にか、鼠径部を触れ回っていたエレナの手は陰嚢を握っていた。皮膚を撫でさするような手つきが異常なまでに厭らしく、へその下では既に牡茎が硬く反り上がっている。

 それは、世間で言うマッサージの域を超えていた。

 寝室に来るや否や、エレナはマッサージを受けないかと誘ってきたのだ。近頃私は仕事が多忙だったので、中々夫婦だけの時間を作れていなかった。それもあり断る理由も無いので、私は直ぐに頷いた。

 最初は肩もみから始まり、それがうつ伏せに寝た状態でのマッサージになり……そこまでは良かった。

 が、仰向けになってから状況は一変した。鎖骨から腕、そして腹から下腹部へと手が降りていき、あれよあれよという間に下穿きを脱がされ、今に至るのだ。

 マッサージについては本で読んだと先程エレナは言っていたが、それが一般書ではないことは明らかである。気付いた上でわざとなのかは……考えないでおこう。

 息子が寝てるので大きな声は出せない。マッサージという名目である以上、これ以上のことを求めてはいけないような気もする。私ができるのは、悶々としながら身体を捩ることだけだ。

「……っぐ!!」

 しかしエレナの指の爪が陰茎の根元を引っ掻いた瞬間、昂ったそれはとうとう勢い良く白濁を吐き出したのだった。

「ふふっ、満足いただけたようで何よりですわ」

 肩で息をする自分を満足気に一瞥してから、エレナは浴巾で精液を拭った。それが不安と恐怖に苛まれて初夜に大泣きしていた女とは、到底信じられないことだ。

 ……嫁の尻に敷かれてはないが、まさかあの彼女がこんなふうに化けるとはな。

「悪いが、やられっぱなしは性に合わないんだ」
 
「え? あっ……!!」

 むくりと起き上がり、そのままエレナをシーツの上に押し倒す。これで、形勢逆転である。

 ナイトドレスの上から柔らかな身体に触れると、エレナはそれを手で制した。いつもと違う反応にやや驚いていると、彼女は小さく呟いた。

「……っ、その、産後に胸も何も、体型が変わって……太ってしまったので」

 その言葉には、嫌われないかという不安が滲んでいた。そんなこと、起こるはずか無いのに。

「愛しい女を嫌うなんて選択肢が、あると思うか?」

「あ、……っ、や、ぁ」

 耳元で囁きながら、止められていないもう片方の手で彼女の首元に触れる。すると擽ったいのか身体を震わせたものの、止められることはなかった。

 私の手を制していた手も、段々と力が抜けていく。それを見計らって、私は指を絡めるように手を繋いだ。

「ん……」

 自分の鼻先に口付けが落とされる。良しの合図が出たところで、私はナイトドレスを脱がし始めた。

 昔、エレナは自らを化粧箱に入りきらなくなった果実だと言った。それはコルセットのボタンが留められず花嫁選びで負けたことへの皮肉だろう。

 が、食い意地の張った熊からすればグアダルーデで求められる美の基準など些細なことである。愛する女を美味しく食べることに変わりは無い。

 互いに全ての衣服を取り払い、私はエレナを身体ごと捕まえるように抱き締めた。

「愛してる、エレナ」

 蝶の羽のように左右対称で綺麗な形をした耳に、私はそっと口付けた。
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