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カルダニア王宮にて
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「カルダニアの王宮は中庭を囲うように正方形の構造となっておりまして、一つ大きなメリットがあります。さて、何でしょう?」
「うーん……東西南北、どの方角からでも美しく見える……とかでしょうか?」
「ふふ、それもありますが正解は……王宮内で迷っても、廊下を歩いていれば必ず目的地に辿り着けることですね」
「ああ、確かに!!」
王宮の廊下を歩きながら、私とエドヴァルドはそんな会話を繰り広げていた。
大聖堂への小旅行から一週間後。彼の計らいにより、私のカルダニア王宮でのお泊まりが実現したのだった。昼までは王都周辺の散策や議会の見学をして、王宮に到着したのは昼過ぎのことである。
そして荷物を置いた後、私はエドヴァルドに王宮内を案内してもらっているのだった。
「ちなみに大広間や応接間など、客人が訪れる部屋はドアノブが全て金色で、反対に私的な部屋は全てドアノブが銀色になっているという違いがあります」
「へえ……面白いですわね」
エドヴァルドは部屋をまわりながら、私に王宮にまつわる面白い話を色々と教えてくれた。広い建物内をまわるのは時間がかかるけれども、彼のお陰で飽きることはまったくなかったのだった。
やがて私達は一通り王宮をまわり終え、出発地点であった食堂へと戻ったのである。
「お疲れ様でした。それでは少し休憩を……」
「いたいた!! 探したんだから!!」
エドヴァルドが私に話しかけようとした矢先、元気な女性の声が廊下に響いた。振り向くと、彼と同じ金髪の女性が走って私達の方へ向かって来ていたのである。
「貴女が、ヴァルのお友達ね? 会いたかったわ!!」
私の前に来るや否や、彼女は私の手を握り、笑顔でそう言ったのだった。
「父上と母上もそろそろ公務から帰って来るだろうし、みんなでお茶にしましょう? 丁度美味しい紅茶が手に入ったところなのよ!!」
「え? ……あ、はい?」
「姉上、メイベル様が驚いてますので、落ち着いてください」
「あらやだ、ごめんなさい」
エドヴァルドの一言で、ようやく彼女のおしゃべりは一旦ストップしたのだった。
「紹介が遅れてごめんなさい。私はダリア。エドヴァルドの姉よ。よろしくね」
そう言って、ダリアは私に笑いかけたのだった。
+
「ね、メイベルの趣味は何? お休みの日はどう過ごしてるの?」
「え、と、恥ずかしながら、奉仕活動と読書くらいしか趣味がなくて……申し訳ございません」
「あ、だから春祭りの時もバザーに来てくれてたのね? 今年は近年稀に見る大成功だったって聞いたわよ。きっと貴女のおかげね」
「そんな、大袈裟です……!!」
家族用の食堂で、私はエドヴァルドの家族達とお茶をすることになった。そして私は席に着くや否や、ダリアから質問攻めされていたのである。嫌ではないものの、失礼の無いように答えるのは緊張することであった。
「こらこら、ダリア。彼女が困ってるじゃないか」
国王陛下が、たしなめるようにダリアに言った。そして私は、慌てて首を横に振ったのだった。
「そ、そんな、困ってるだなんて。滅相もございません!! 誰かとお話しするのは好きなので……」
「あら嬉しい。本当に、ヴァルってばこんな素敵な子、どうやって連れて来たんだか」
「まあ、日頃の行いが良いので」
紅茶を飲みながら、エドヴァルドはこともなげに言ってのけた。前世からのお付き合いですと言えるはずもなく、私は笑って誤魔化すことにした。
「それにしても姉上。義兄上を引きずってやって来るだなんて、気が早すぎますよ。まだ両家ご挨拶でもありませんのに。お二人共お忙しいでしょう?」
「あら、可愛い弟のお友達が家に来るなら、会いたいに決まってるじゃない」
「義兄上。いつものことながら、自由奔放な姉が申し訳ございません」
「大丈夫だよ、もう慣れたことさ」
「もう、二人共、私の保護者じゃないんだから!!」
「ふふっ」
いつしか食堂は、賑やかな喋り声ですっかり満たされていた。それはダリアがいるというのも大きいが、和気あいあいとした雰囲気はこの場にいる皆が作り出しているものにも感じられた。誰かが話せば、その言葉を受け取ってまた誰かが話しを繋いでいく。それは、家族仲の良さを表していた。
「ね、メイベル。今度、予定合わせて一緒にどこかお買い物にでも行きましょう?」
「そそそ、そんな、私などがご一緒するなんて……恐れ多いです」
「何言ってんの、将来の義妹と仲良くしたい、当然でしょう?」
「!?」
ダリアの一言を聞いて、私は紅茶を吹き出しそうになった。しかし、私以外は全員特に驚いてはいないようである。
「姉上、彼女はまだ友人と言ったでしょう?」
「あらやだ、私ったら」
確かに私とエドヴァルドは既に友達以上の関係になっているものの、世間的にはただの‘‘友達’’のはずだ。そして私達はかなりの格差婚となるため、時間をかけて彼の家族に婚約を認めてもらう覚悟をしていた……のだが。
私の知らぬ間に、何やら話はトントン拍子に進んでいるようだった。
「少し気が早いかもしれないが、こんな家で良ければぜひ」
「父上まで、気が早いですよ」
誰に反対されることもなく、エドヴァルドとの結婚を歓迎してくれている。それだけで、私は嬉しさのあまり胸がいっぱいになるのを感じた。
「うーん……東西南北、どの方角からでも美しく見える……とかでしょうか?」
「ふふ、それもありますが正解は……王宮内で迷っても、廊下を歩いていれば必ず目的地に辿り着けることですね」
「ああ、確かに!!」
王宮の廊下を歩きながら、私とエドヴァルドはそんな会話を繰り広げていた。
大聖堂への小旅行から一週間後。彼の計らいにより、私のカルダニア王宮でのお泊まりが実現したのだった。昼までは王都周辺の散策や議会の見学をして、王宮に到着したのは昼過ぎのことである。
そして荷物を置いた後、私はエドヴァルドに王宮内を案内してもらっているのだった。
「ちなみに大広間や応接間など、客人が訪れる部屋はドアノブが全て金色で、反対に私的な部屋は全てドアノブが銀色になっているという違いがあります」
「へえ……面白いですわね」
エドヴァルドは部屋をまわりながら、私に王宮にまつわる面白い話を色々と教えてくれた。広い建物内をまわるのは時間がかかるけれども、彼のお陰で飽きることはまったくなかったのだった。
やがて私達は一通り王宮をまわり終え、出発地点であった食堂へと戻ったのである。
「お疲れ様でした。それでは少し休憩を……」
「いたいた!! 探したんだから!!」
エドヴァルドが私に話しかけようとした矢先、元気な女性の声が廊下に響いた。振り向くと、彼と同じ金髪の女性が走って私達の方へ向かって来ていたのである。
「貴女が、ヴァルのお友達ね? 会いたかったわ!!」
私の前に来るや否や、彼女は私の手を握り、笑顔でそう言ったのだった。
「父上と母上もそろそろ公務から帰って来るだろうし、みんなでお茶にしましょう? 丁度美味しい紅茶が手に入ったところなのよ!!」
「え? ……あ、はい?」
「姉上、メイベル様が驚いてますので、落ち着いてください」
「あらやだ、ごめんなさい」
エドヴァルドの一言で、ようやく彼女のおしゃべりは一旦ストップしたのだった。
「紹介が遅れてごめんなさい。私はダリア。エドヴァルドの姉よ。よろしくね」
そう言って、ダリアは私に笑いかけたのだった。
+
「ね、メイベルの趣味は何? お休みの日はどう過ごしてるの?」
「え、と、恥ずかしながら、奉仕活動と読書くらいしか趣味がなくて……申し訳ございません」
「あ、だから春祭りの時もバザーに来てくれてたのね? 今年は近年稀に見る大成功だったって聞いたわよ。きっと貴女のおかげね」
「そんな、大袈裟です……!!」
家族用の食堂で、私はエドヴァルドの家族達とお茶をすることになった。そして私は席に着くや否や、ダリアから質問攻めされていたのである。嫌ではないものの、失礼の無いように答えるのは緊張することであった。
「こらこら、ダリア。彼女が困ってるじゃないか」
国王陛下が、たしなめるようにダリアに言った。そして私は、慌てて首を横に振ったのだった。
「そ、そんな、困ってるだなんて。滅相もございません!! 誰かとお話しするのは好きなので……」
「あら嬉しい。本当に、ヴァルってばこんな素敵な子、どうやって連れて来たんだか」
「まあ、日頃の行いが良いので」
紅茶を飲みながら、エドヴァルドはこともなげに言ってのけた。前世からのお付き合いですと言えるはずもなく、私は笑って誤魔化すことにした。
「それにしても姉上。義兄上を引きずってやって来るだなんて、気が早すぎますよ。まだ両家ご挨拶でもありませんのに。お二人共お忙しいでしょう?」
「あら、可愛い弟のお友達が家に来るなら、会いたいに決まってるじゃない」
「義兄上。いつものことながら、自由奔放な姉が申し訳ございません」
「大丈夫だよ、もう慣れたことさ」
「もう、二人共、私の保護者じゃないんだから!!」
「ふふっ」
いつしか食堂は、賑やかな喋り声ですっかり満たされていた。それはダリアがいるというのも大きいが、和気あいあいとした雰囲気はこの場にいる皆が作り出しているものにも感じられた。誰かが話せば、その言葉を受け取ってまた誰かが話しを繋いでいく。それは、家族仲の良さを表していた。
「ね、メイベル。今度、予定合わせて一緒にどこかお買い物にでも行きましょう?」
「そそそ、そんな、私などがご一緒するなんて……恐れ多いです」
「何言ってんの、将来の義妹と仲良くしたい、当然でしょう?」
「!?」
ダリアの一言を聞いて、私は紅茶を吹き出しそうになった。しかし、私以外は全員特に驚いてはいないようである。
「姉上、彼女はまだ友人と言ったでしょう?」
「あらやだ、私ったら」
確かに私とエドヴァルドは既に友達以上の関係になっているものの、世間的にはただの‘‘友達’’のはずだ。そして私達はかなりの格差婚となるため、時間をかけて彼の家族に婚約を認めてもらう覚悟をしていた……のだが。
私の知らぬ間に、何やら話はトントン拍子に進んでいるようだった。
「少し気が早いかもしれないが、こんな家で良ければぜひ」
「父上まで、気が早いですよ」
誰に反対されることもなく、エドヴァルドとの結婚を歓迎してくれている。それだけで、私は嬉しさのあまり胸がいっぱいになるのを感じた。
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