自然戦士

江葉内斗

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第二章 謀略の復活祭

第二十八話 復讐のために

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 翌朝。
 空は曇っているが、雨は降りそうにない。
 町の人たちに、白竜の情報を聞き込みにまわる。

「すみません。このあたりで白竜を見ませんでしたか?」

「白竜なら、たまに見るよ。上空を飛んでいて、とても大きくて綺麗な竜だよ!」
 八百屋のおばさんが愛想良く答えてくれた。

「白竜の住む谷って、どこにあるか分かりますか?」
「竜の住処までは分からないねぇ…」

「そうですか…。ありがとう。この果物を4つ買います」
 リンゴのような赤い実を指さした。

「これ、今が食べごろで美味しいんだよ~。1個おまけしてあげるね」
「ありがとう」

 果物をアイテムボックスに入れて、道行く人にも手分けして聞いてみる。
 数時間いろんな人に聞いてまわったので、広場のベンチで休憩することにした。

 さっき八百屋で買った果物を皆に配る。おまけはモーリスにあげた。
 乾いた喉に、瑞々しく甘い果物は最高だ。

「どうだった?」
 僕が訊くと、モーリスが答えた。

「この町のほとんどの人が白竜を見ています。このあたりで数日待てば、白竜を見れる可能性は高い。しかし、白竜の住む谷について知ってる人はいませんでした」

「私たちも同じ意見です」シャルルがつぶやく。

「こんな曇り空では、もし白竜が上空で飛んでいても見つけられませんね」
 モーリスが空を仰いだ。

「では、晴天の日に白竜が飛んでいたら尾行しようか。住処に辿りつくまで」

 僕が提案すると、心配するシャルル。
「竜を尾行するなんて…怒らせて攻撃でもされたら危険ですわ!」

「では、透明人間になって空を飛ぶよ」
「サファーロ様! 俺も一緒に飛んで護衛します!」
「ありがとう、モーリス」

 シャルルはまだ、心配そうだ。

「では、今日はこれで解散にしよう。昨日も大変だったし、たまには休みもしないと。
 モーリス。エミリーさんとデートしてくるといい。夕方六時ごろには湖のほとりの家に帰ってくるんだよ」

「えっ。いいんですか? エミリー、行こう!」
「サファーロ様! お嬢様のこと、よろしくお願いしますね。行ってきます!」
 ふたりは仲良く手をつないで歩いていった。

 シャルルが頬を染めて、僕を見つめている。
 昨夜、僕の背中に手を回して、抱きしめてきたシャルル。
 僕は少し、自惚れてもいいだろうか…?

「もうすぐ白竜も見つかりそうだし、もし宝玉が見つかり、おばあさまに届けたら、その後シャルルはどうするのですか? 公爵家に戻って、新たな縁談を受けるのですか?」

 そうだと言われたら、身を引くしかない…。

「いいえ…。私は公爵家には戻らず、修道院へ入るつもりです」

 想像もしていなかった返事に、僕は驚く。
「…なぜです?」

「私は、サファーロが好き…。貴方が爵位の差を気にして私から離れていくのなら、貴方以外の人に嫁ぐくらいなら、修道女になったほうがましです!」

 シャルルの瞳から、真珠のような涙が零れる。

 彼女がそれほど僕を想ってくれていたなんて…!
 僕の胸は、感動で熱く燃えた。

「修道院へ行くくらいなら、僕と駆け落ちしてください! いつか陞爵してもらえるような手柄をあげて、貴女と夫婦になれるように頑張りますから。それまで、僕の傍で婚約者として待っていただけませんか? 
 公爵家ほどの暮らしではなくても、不自由はさせません! 狐の和み亭のサイコロステーキだって食べ飽きるほどごちそうします。あなたの望むことは何でも叶えるように努力しますから!」

「本当ですか?! 俺たちも是非、ご相伴に預かりたいです!!」
 デートに行ったはずのモーリスとエミリーが、僕らの座っていたベンチの後ろから現れた!

「また覗いていたのか!」

 早速、モーリスはシャルルに説得を始めた。
「サファーロ様は心の優しい良い人です。駆け落ちしたって、きっとシャルル様を幸せにしてくれます! 
 それに! 今、OKすれば、皆で狐の和み亭のサイコロステーキが食べ放題なんですよ!!」

 いつの間に、そんな話になってるんだ!!

「私、サファーロと駆け落ちします!」

「えぇっ!?」
 サイコロステーキ効果?!

「「やったぁ~~~♪」」
 踊りだすモーリス&エミリー。そんなに食べたかったのか!

「サファーロ様、おめでとうございます! では邪魔者は退散しますので、あとは若い二人でごゆっくり♪」
 仲人のような口ぶりで、モーリスとエミリーは仲良くどこかへ消えた。

「私、サイコロステーキに釣られたわけじゃありません。サファーロがこれからも私の傍にいてくれることが嬉しくて…」

「泣かないで…」
 シャルルの涙をハンカチでそっと拭う。
 
「これから、もっとシャルルを幸せに出来るように頑張るよ」
 やさしく抱き寄せると、安心したように体を預けてくるシャルル。

「あなたが傍に居てくれたら、それだけで充分幸せです…」

「シャルル…」
 
 今夜、僕はもふもふの銀猫になって、きみに存分にもふられるかもしれない。
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

江葉内斗
2021.09.13 江葉内斗

コメントありがとうございます。
まさか一話目で気に入っていただけるとは思っていませんでしたが、気に入っていただきありがとうございます。
これから毎日投稿できるように頑張るので、応援よろしくお願いします。

解除

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