37 / 68
怪物
第37話 傍観
しおりを挟む
「しかしまあ……派手だねえ、どうも」
司法局実働部隊隊長室。そこで三次元映像装置を頬杖をついて眺めながら、司法局実働部隊隊長嵯峨惟基特務大佐は薄ら笑いを浮かべていた。
「まるでこの第三勢力の介入は想定していたような顔じゃないですか?」
机のそばに立って厳しい表情を浮かべているのは司法局実働部隊管理部長の高梨渉参事だった。
画像の中の肉の塊、それまではただ周りを取り囲んで浮かんでいる東都警察の切り札の法術機動隊の攻撃を受けても平然と周囲の破壊を続けていたそれは、すでに新しい敵に攻撃を受けて五つに切り分けられ、それぞれがうめき声を上げて苦しんでいるように見えた。
「ずいぶんと趣味の悪い奴等だな」
「兄さんには見えるんですか?私は切り刻まれた結果しか……」
高梨の言葉に嵯峨はニヤリと笑った後ポケットからタバコを取り出して火をつける。
「なあに、三人の法術師が干渉空間の時間軸をずらして加速をかけていたぶっている。万が一の事態に備えて一撃でけりをつけてやるって言うところが無いのはどこかに売り込みたいのか……そう言う趣味の連中なのか……」
嵯峨が伸びをして煙を吐くのを見つめた後、再び高梨は画面に目をやった。もはやこの事件の端を作った物体はただの肉片としか呼べない存在になっていた。高梨に見えるのは重傷を負った機動隊員を仲間が助けている様子と手の空いた隊員が肉片を回収しては走り寄ってきた鑑識らしい帽子の警察官に渡している光景だった。
「信用のおける情報にはこの騒動に関わっている組織の姿はないですね。まあ同盟に批判的な武装組織や過激な環境保護団体が犯行声明を出したけどどうせ……、あんな化け物を作り出すような技術も資金も無いくせに」
しばらく目をつぶっていた高梨の言葉に嵯峨は満足げにうなづく。高梨は少し落ち着きを取り戻すとすぐに自分の腕時計形の端末を起動させた。
「司法局本局に連絡を取ってみます」
高梨は同盟本部の司法局に直通の通信を入れる。
「司法局の本部ビルからはそう遠くないからな。何人か野次馬してるんじゃないのか?」
そう言う嵯峨が見ている画面に周りのビルから現場を覗き込んでいる人々の顔が写る。
「でも良いいんですか?」
「何が?」
高梨の困ったような声に嵯峨はタバコを灰皿に押し付けながら答えた。
「一応今回の件は嵯峨茜警視正やクバルカ中佐が動いていたんでしょ?それでもこのような事件が防げなかった。もしかしたら……」
「俺の責任問題になるって言うのか?それならアイツ等に協力しなかった所轄の警察署長の首も全部飛ぶな。あいつ等の行動とそれに対応した警察の幹部とのやり取りのデータは探せば出てくると思うからね」
あっさりとそう言ってのけた嵯峨を困ったような表情で高梨が見つめている。
「そんなだから兄さんは嫌われるんですよ」
高梨の言葉に嵯峨は思わず舌を出す。
「さて、これを見て本局はどう動くかな……それと今回の騒動を引き起こした連中も……」
まるで他人事のように嵯峨は伸びをして混乱が収まろうとしている画面を消した。
司法局実働部隊隊長室。そこで三次元映像装置を頬杖をついて眺めながら、司法局実働部隊隊長嵯峨惟基特務大佐は薄ら笑いを浮かべていた。
「まるでこの第三勢力の介入は想定していたような顔じゃないですか?」
机のそばに立って厳しい表情を浮かべているのは司法局実働部隊管理部長の高梨渉参事だった。
画像の中の肉の塊、それまではただ周りを取り囲んで浮かんでいる東都警察の切り札の法術機動隊の攻撃を受けても平然と周囲の破壊を続けていたそれは、すでに新しい敵に攻撃を受けて五つに切り分けられ、それぞれがうめき声を上げて苦しんでいるように見えた。
「ずいぶんと趣味の悪い奴等だな」
「兄さんには見えるんですか?私は切り刻まれた結果しか……」
高梨の言葉に嵯峨はニヤリと笑った後ポケットからタバコを取り出して火をつける。
「なあに、三人の法術師が干渉空間の時間軸をずらして加速をかけていたぶっている。万が一の事態に備えて一撃でけりをつけてやるって言うところが無いのはどこかに売り込みたいのか……そう言う趣味の連中なのか……」
嵯峨が伸びをして煙を吐くのを見つめた後、再び高梨は画面に目をやった。もはやこの事件の端を作った物体はただの肉片としか呼べない存在になっていた。高梨に見えるのは重傷を負った機動隊員を仲間が助けている様子と手の空いた隊員が肉片を回収しては走り寄ってきた鑑識らしい帽子の警察官に渡している光景だった。
「信用のおける情報にはこの騒動に関わっている組織の姿はないですね。まあ同盟に批判的な武装組織や過激な環境保護団体が犯行声明を出したけどどうせ……、あんな化け物を作り出すような技術も資金も無いくせに」
しばらく目をつぶっていた高梨の言葉に嵯峨は満足げにうなづく。高梨は少し落ち着きを取り戻すとすぐに自分の腕時計形の端末を起動させた。
「司法局本局に連絡を取ってみます」
高梨は同盟本部の司法局に直通の通信を入れる。
「司法局の本部ビルからはそう遠くないからな。何人か野次馬してるんじゃないのか?」
そう言う嵯峨が見ている画面に周りのビルから現場を覗き込んでいる人々の顔が写る。
「でも良いいんですか?」
「何が?」
高梨の困ったような声に嵯峨はタバコを灰皿に押し付けながら答えた。
「一応今回の件は嵯峨茜警視正やクバルカ中佐が動いていたんでしょ?それでもこのような事件が防げなかった。もしかしたら……」
「俺の責任問題になるって言うのか?それならアイツ等に協力しなかった所轄の警察署長の首も全部飛ぶな。あいつ等の行動とそれに対応した警察の幹部とのやり取りのデータは探せば出てくると思うからね」
あっさりとそう言ってのけた嵯峨を困ったような表情で高梨が見つめている。
「そんなだから兄さんは嫌われるんですよ」
高梨の言葉に嵯峨は思わず舌を出す。
「さて、これを見て本局はどう動くかな……それと今回の騒動を引き起こした連中も……」
まるで他人事のように嵯峨は伸びをして混乱が収まろうとしている画面を消した。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
聖女戦士ピュアレディー
ピュア
大衆娯楽
近未来の日本!
汚染物質が突然変異でモンスター化し、人類に襲いかかる事件が多発していた。
そんな敵に立ち向かう為に開発されたピュアスーツ(スリングショット水着とほぼ同じ)を身にまとい、聖水(オシッコ)で戦う美女達がいた!
その名を聖女戦士 ピュアレディー‼︎
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる