上 下
57 / 187
栄光の?05式特戦(愛称未定)

第57話 『ベルゲパンツァー ティーガーⅠ』のような機体

しおりを挟む
 誠の機体がどう見ても戦闘をする姿の想像できない機体なのは確定していた。

「自衛用の武器もある。熱性のでかい高温式大型軍刀がある。アタシ等が『ダンビラ』って呼んでるのが二本だ。両方左腰に装備する。サムライみてえだろ。まあ紅兎こうとにも同じものがあるからオリジナルじゃねーけどな……でもそこが肝だったりするんだが……今のオメーにゃ縁がねーけどな」

 誠は思った。『最強』のエースと同じ武器で、活躍度で勝てる自信は絶対ない。

 実家が剣道道場で、道場主の母を持つ身でも絶対無理だと確信していた。

「そして背部のフックを利用して『大型コンテナ』が連結可能。最前線の機体への補給を行う事もできるんだ」

 そう言ってランは嬉しそうに語った。

「当然、集中攻撃を受ける。戦場のど真ん中でせっかく撃墜した機体を『回収』されたり、弾切れの敵に『補給』されたら面倒だからな。そこはお前の『根性』の見せ所だな」

 誠を見上げるラン。彼女はかわいらしい手でポケットからチラシを取り出す。

「これが神前の機体のオリジナルだ。読め」

 誠は気になってそれを受け取った。

 それは新作プラモデルの広告チラシだった。

「『ベルゲパンツァー ティーガーⅠ』?なんで戦車のプラモの広告を……」

 戦車のプラモには結構詳しい誠である。そんな彼でもその初めて見た『タイガーⅠ』によく似た戦車のリアルな絵を見て目を惹きつけられた。

「その『戦車回収車両』は最強戦車軍団を最強にした究極の『回収戦車』だ。オメーも『回収界』のエースになれ」

 そう言うとランは気が済んだかのように、元来た道を帰っていった。

 誠はチラシに目を通した。

 そこには次のように書いてあっt。
 
「『ベルゲパンツァー ティーガーⅠ』第二次世界大戦のタイガー1のエース部隊『第508重戦車大隊』で貴重なタイガー1の回収に活躍した。ソ連軍の猛攻下でも動けなくなった同戦車を回収した」

「タイガーⅠ戦車専用『回収戦車』か……でも『タイガーⅡ』の方が有名だけど……」

 そう愚痴る誠は最後の説明文に目が行った。

「その後、より重装甲・大火力の『タイガーⅡ』が開発されたが、『タイガーⅡ』はその重量ゆえに回収することが困難だったため、戦地で故障してもドイツ軍はそれを回収する手段が無かった。故障車両はすべて連合軍に利用されることを恐れた軍により爆破放棄された」

 誠は主砲のある位置にクレーンのついた、その奇妙な『タイガー1戦車』の絵を眺めた。

「最強戦車軍団の……『回収者』」

 自分に課せられた任務に誠の胸は高鳴り、口の中に酸っぱい液体が満ちてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第二部 『新たなる敵影』

橋本 直
SF
進歩から取り残された『アナログ』異星人のお馬鹿ライフは続く 遼州人に『法術』と言う能力があることが明らかになった。 だが、そのような大事とは無関係に『特殊な部隊』の面々は、クラゲの出る夏の海に遊びに出かける。 そこに待っているのは…… 新登場キャラ 嵯峨茜(さがあかね)26歳 『駄目人間』の父の生活を管理し、とりあえず社会復帰されている苦労人の金髪美女 愛銃:S&W PC M627リボルバー コアネタギャグ連発のサイキックロボットギャグアクションストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第四部 『魔物の街』

橋本 直
SF
いつものような日常を過ごす司法局実働部隊の面々。 だが彼等の前に現れた嵯峨茜警視正は極秘の資料を彼らの前に示した。 そこには闇で暗躍する法術能力の研究機関の非合法研究の結果製造された法術暴走者の死体と生存し続ける異形の者の姿があった。 部隊長である彼女の父嵯峨惟基の指示のもと茜に協力する神前誠、カウラ・ベルガー、西園寺かなめ、アメリア・クラウゼ。 その中で誠はかなめの過去と魔都・東都租界の状況、そして法術の恐怖を味わう事になる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。 その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。 しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。 さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。 直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。 他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。 しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。 考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。 誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?

処理中です...