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第二十七章 家族とそれぞれの過去
第124話 前首相暗殺未遂事件
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「それは二十五年前の第二次遼州戦争の最中だ。アタシの爺さん西園寺重基は戦争反対の論陣を張る前宰相……つまり政府の目の上のたんこぶだったんだ……レバーやるわ」
自分の焼鳥盛り合わせからレバーを取ると誠の皿に移しながらかなめは言葉を続けた。
「その朝、爺さんとアタシ、それに叔父貴のかみさんと娘はそれなりにいい店で朝食を食ってたんだ。まあ、戦時中にそんな贅沢していること自体あまり褒められたもんじゃねえが……爺さんも負け戦をひた隠しにしてばかりの軍部に対する嫌味のつもりでそんな暮らしを続けてたんだろうな……」
誠は不意にシリアスな表情を浮かべているかなめの言葉についていけずにただ黙り込んでいた。
「そこで軍部の好戦的な連中が仕掛けた爆弾がドカン。それで終了だ。アタシは脳と脊髄以外の体の大半を失い、叔父貴のかみさんは……自分の娘とアタシをかばって死んだ」
かなめはそこまで言うと葉巻を置いてネギまを口にくわえた。
「隊長がバツイチって……」
誠はようやくここでかなめに声をかけることができた。そしてその内容があまりに深刻なモノだったのでそれ以上言葉を続けることができなかった。
「そう、叔父貴がバツイチなのは死別……まあ、その時、実は叔父貴のかみさんに間男がいたってのが救いだがな。まあ、死んだ人間をこういうのもなんだが、叔父貴のかみさんは相当男癖が悪かったらしい……まあ、似た者夫婦か」
「それ……全然救いになってないですよ」
誠もかなめの果てしなく救いのないボケにそうツッコまざるを得なかった。
誠はなぜどんな悲惨な話にも意地でも落ちをつけるのかと不思議に思いながら目の前のご令嬢であるかなめに目をやった。
かなめはネギまを食べ終えると、悠然と葉巻をふかしラム酒を口にした。
「まあ、甲武、別名『大正ロマンの国』の政治家の最期なんてみんなそんなもんさ。オメエは日本史苦手だから知らねえだろうけど、日本の『大正時代』もテロと騒乱事件の歴史なんだぜ。何人首相が暗殺されたと思ってんだ。現職の首相が暗殺されなかっただけましだろうが」
そう強がるかなめの言葉にはどこかいつもの力が無かった。
「結局アタシは親父が大枚叩いてこんな体になった。三歳の時から見た目はおんなじで大人の姿。まあ、ふつうグレルわな」
「今でもグレてますね。銃を抜き身で持ち歩いてるし」
誠のさりげないツッコミにかなめはあきらめたような笑みを浮かべた。
「こんな平和なだけが自慢の東和共和国の庶民にはアタシの気持ちなんてわかんねえよ。いつ、オヤジの政敵である貴族主義の連中が首を取りにくるかわかんねえんだ。だから銃は手放せねえの。つまりこいつは護身用……まあ、マガジン入ってねえからいいだろ?」
「よくないですよ。銃は銃です」
たしなめるようにそう言った誠を無視してかなめは銃を抜くとそのグリップの下を指さした。そこには弾丸を入れるマガジンが刺さっているところだがそこには何も入っていなかった。
自分の焼鳥盛り合わせからレバーを取ると誠の皿に移しながらかなめは言葉を続けた。
「その朝、爺さんとアタシ、それに叔父貴のかみさんと娘はそれなりにいい店で朝食を食ってたんだ。まあ、戦時中にそんな贅沢していること自体あまり褒められたもんじゃねえが……爺さんも負け戦をひた隠しにしてばかりの軍部に対する嫌味のつもりでそんな暮らしを続けてたんだろうな……」
誠は不意にシリアスな表情を浮かべているかなめの言葉についていけずにただ黙り込んでいた。
「そこで軍部の好戦的な連中が仕掛けた爆弾がドカン。それで終了だ。アタシは脳と脊髄以外の体の大半を失い、叔父貴のかみさんは……自分の娘とアタシをかばって死んだ」
かなめはそこまで言うと葉巻を置いてネギまを口にくわえた。
「隊長がバツイチって……」
誠はようやくここでかなめに声をかけることができた。そしてその内容があまりに深刻なモノだったのでそれ以上言葉を続けることができなかった。
「そう、叔父貴がバツイチなのは死別……まあ、その時、実は叔父貴のかみさんに間男がいたってのが救いだがな。まあ、死んだ人間をこういうのもなんだが、叔父貴のかみさんは相当男癖が悪かったらしい……まあ、似た者夫婦か」
「それ……全然救いになってないですよ」
誠もかなめの果てしなく救いのないボケにそうツッコまざるを得なかった。
誠はなぜどんな悲惨な話にも意地でも落ちをつけるのかと不思議に思いながら目の前のご令嬢であるかなめに目をやった。
かなめはネギまを食べ終えると、悠然と葉巻をふかしラム酒を口にした。
「まあ、甲武、別名『大正ロマンの国』の政治家の最期なんてみんなそんなもんさ。オメエは日本史苦手だから知らねえだろうけど、日本の『大正時代』もテロと騒乱事件の歴史なんだぜ。何人首相が暗殺されたと思ってんだ。現職の首相が暗殺されなかっただけましだろうが」
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「結局アタシは親父が大枚叩いてこんな体になった。三歳の時から見た目はおんなじで大人の姿。まあ、ふつうグレルわな」
「今でもグレてますね。銃を抜き身で持ち歩いてるし」
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「こんな平和なだけが自慢の東和共和国の庶民にはアタシの気持ちなんてわかんねえよ。いつ、オヤジの政敵である貴族主義の連中が首を取りにくるかわかんねえんだ。だから銃は手放せねえの。つまりこいつは護身用……まあ、マガジン入ってねえからいいだろ?」
「よくないですよ。銃は銃です」
たしなめるようにそう言った誠を無視してかなめは銃を抜くとそのグリップの下を指さした。そこには弾丸を入れるマガジンが刺さっているところだがそこには何も入っていなかった。
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