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第十八章 『特殊な部隊』の真実
第89話 下っ端の悲哀
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「眠い……」
誠は自分の機動部隊詰め所の机に座っていた。いずれやって来る、自分の専用の機体の『05式』に胸を躍らせながらも、しごきで疲れた体のもたらす眠気に耐えながら大きくあくびをした。
まだ実戦どころか、訓練さえ経験していないピカピカの誠の機体が思い浮かぶ。
運ばれてくるときは、おそらく東和宇宙軍のオリーブドラブの一般色だろう。
「いつかは僕も……」
誠の正面には二人の女性パイロットの席があった。
「……ったくだらしのない奴だぜ。あと二時間で昼飯だ。当然、オメエが注文係」
常に制服の上の皮のホルスターをぶら下げる女、西園寺かなめが残酷にそう言った。
心配そうな顔を誠に向けていたカウラがかなめをにらんだ。
「まず、注文する品を決めてから……私は親子丼だ」
「へいへい、隊長さんは部下思いでいらっしゃること。アタシは天丼」
そう言うとかなめは不満げに机の上に足を乗っけた。椅子のきしむ音が響く。誠は自分がいる場所がわかって安心すると、そのまま上体を起こした。
誠が見回す視線の先では、まず、ランが巨大な『機動部隊長』の机で難しそうな顔をして将棋盤を見つめているのが見えた。
そのたるみ切った光景は、これが遼州星系を代表する『特殊な部隊』のそれだった。
せめて自分くらいは……そういう思いが誠を奮い立たせて、痛む首筋をさすりながら椅子から起き上がらせた。
「大丈夫か?」
心配そうにカウラがよろける誠を支える。
「なんだ、心配することないじゃん。それにしても暑いなあー……こういう時、『愛ある後輩』なら何かしようって思うんじゃないのかなあ……気が利かねえなあ」
暑さで不機嫌なかなめが大声を上げる。
「西園寺!貴様!神前だって気づかないだけだ!きっと本心では『先輩の力になりたい』と思っているはずだ!」
カウラは誠が『奴隷根性』に目覚めたことを前提に話をしている。誠はもう誰もあてにしないことに決めて大きなため息をついた。
「良いんですよ、カウラさん。暑いんですね、皆さん。下の給湯室に行ってアイス取って来ます」
そう言うとカウラの心配そうな顔をこれ以上曇らせまいと、誠は立ち上がった。
「そりゃ無理だ。どこかのチビが昨日全部食っちゃったからなー」
かなめがあまりに残酷な一言を吐いた。同時にカウラも『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐に視線を向けた。
「オメ等ーのモノはアタシのモノ。アタシのモノはアタシのモノ。神前、アタシはうな丼の『特級松』だ!」
ランはそう言うと将棋盤に駒を手にする。かわいらしい『永遠の八歳女児』は完全に『機動部隊の主』として余裕の貫録を見せていた。
ここで、誠は自分がこの『特殊な部隊』では『人権の無い使用人』であることを自覚した。
誠は自分の機動部隊詰め所の机に座っていた。いずれやって来る、自分の専用の機体の『05式』に胸を躍らせながらも、しごきで疲れた体のもたらす眠気に耐えながら大きくあくびをした。
まだ実戦どころか、訓練さえ経験していないピカピカの誠の機体が思い浮かぶ。
運ばれてくるときは、おそらく東和宇宙軍のオリーブドラブの一般色だろう。
「いつかは僕も……」
誠の正面には二人の女性パイロットの席があった。
「……ったくだらしのない奴だぜ。あと二時間で昼飯だ。当然、オメエが注文係」
常に制服の上の皮のホルスターをぶら下げる女、西園寺かなめが残酷にそう言った。
心配そうな顔を誠に向けていたカウラがかなめをにらんだ。
「まず、注文する品を決めてから……私は親子丼だ」
「へいへい、隊長さんは部下思いでいらっしゃること。アタシは天丼」
そう言うとかなめは不満げに机の上に足を乗っけた。椅子のきしむ音が響く。誠は自分がいる場所がわかって安心すると、そのまま上体を起こした。
誠が見回す視線の先では、まず、ランが巨大な『機動部隊長』の机で難しそうな顔をして将棋盤を見つめているのが見えた。
そのたるみ切った光景は、これが遼州星系を代表する『特殊な部隊』のそれだった。
せめて自分くらいは……そういう思いが誠を奮い立たせて、痛む首筋をさすりながら椅子から起き上がらせた。
「大丈夫か?」
心配そうにカウラがよろける誠を支える。
「なんだ、心配することないじゃん。それにしても暑いなあー……こういう時、『愛ある後輩』なら何かしようって思うんじゃないのかなあ……気が利かねえなあ」
暑さで不機嫌なかなめが大声を上げる。
「西園寺!貴様!神前だって気づかないだけだ!きっと本心では『先輩の力になりたい』と思っているはずだ!」
カウラは誠が『奴隷根性』に目覚めたことを前提に話をしている。誠はもう誰もあてにしないことに決めて大きなため息をついた。
「良いんですよ、カウラさん。暑いんですね、皆さん。下の給湯室に行ってアイス取って来ます」
そう言うとカウラの心配そうな顔をこれ以上曇らせまいと、誠は立ち上がった。
「そりゃ無理だ。どこかのチビが昨日全部食っちゃったからなー」
かなめがあまりに残酷な一言を吐いた。同時にカウラも『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐に視線を向けた。
「オメ等ーのモノはアタシのモノ。アタシのモノはアタシのモノ。神前、アタシはうな丼の『特級松』だ!」
ランはそう言うと将棋盤に駒を手にする。かわいらしい『永遠の八歳女児』は完全に『機動部隊の主』として余裕の貫録を見せていた。
ここで、誠は自分がこの『特殊な部隊』では『人権の無い使用人』であることを自覚した。
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