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第十二章 飲み会
第64話 脱落者達③パイ
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「あとなんだっけ?」
かなめはそう言って首をひねる。
「『パイ』がいたじゃない……次かどうかは忘れたけど」
そう言ってアメリアは細い目をさらに細めた。その表情は歓喜に満ち溢れていた。
「『パイ』ですか……投げたんですか?パイ僕の時じゃなくて良かったですよ……制服が汚れるし」
顔をしかめつつそう言った誠にカウラは静かにうなづいた。
「やはりお約束と言うことで運航部の馬鹿とアメリアが準備をした。顔面に叩きつけたのは……運航部で水色の髪をした常識人。パーラ・ラビロフってのがいるんだが……嫌な顔をしていたな。うちじゃあ一番の常識人だし」
常識人でなくとも初対面の人間にパイをぶつけるなんて無理だと誠は思った。
「それは誰だって嫌ですよ!初対面の人に挨拶もせずにパイをぶつけるなんて!」
誠はそう言うしかなかった。いきなり配属直後に顔面にパイを食らったら誰だっていやな顔の一つもするものだ。ぶつける役目になったパーラと言う女性も災難である。誠はそう思いながら話を続けようとするかなめに顔を向けた。
「ただ、そいつは食いしん坊だったからそれほど怒らなかったぞ。『外惑星共和国連邦』出身で……結構デブだったから、キャラ的にはちょうどよかったんじゃねえの?あそこはヘリウム以外に資源が無いから所得も低いし、太陽から離れてるから食品の値段は高いし……しかしあんな環境でよくあそこまで太れたな」
そう言って笑うかなめの姿に、誠は自分がいかに『特殊な部隊』に配属になったかがよくわかった。
「反応はあくまで冷静だったわよ。まあね……でも一番年長だったからね……」
「確かに二十六歳とか言ってたな」
アメリアとカウラが話し合うが、この部隊の異常さは年齢と関係ないとツッコミたい誠はそのタイミングが図れずにいた。
「ここでも食ったな……『外惑星共和国連邦』は社会主義の国だから食い物買うのも行列だろ?それが次々と出てくるんだ。喜んで食ってやがった」
ラム酒を飲みながらかなめは店のメニューの書かれた壁に目をやった。
「カシラ、キンカン、テバ、やげん……全部二つは食ったよな」
「大変だったのよ。一応、ここの勘定はランちゃんに回るんだけど……本当に嫌な顔してたわよね」
「軍の食べる人の食べ方って半端ないですからね」
ずらりと並んだ鶏肉の部位の書かれたメニュー表を見ながら誠はその『パイ』と呼ばれる先輩の胃袋の中を想像して若干引いていた。
「まあな。でも、食う以外は常識人だったな。なんやかんやで一週間後には部隊にいなかったんだから『特殊な部隊』である司法局実働部隊とは水が合わなかったんだろ」
カウラは冷静にそう言うと烏龍茶を啜った。
「カウラ。オメエが虐めたんじゃねえのか?オメエの趣味のことで軽蔑するようなこと言ってたからな。『ギャンブルは毒です』って……」
カウラとかなめが罪の擦り付け合いをしているのを横目にアメリアが誠に向けて身を乗り出した。
「なんでも、かなめちゃんがいつも銃を持ち歩いてるのが恐かったらしいわよ……外惑星連邦は社会主義の国で国家の締め付けが厳しくて軍や警察がデカい顔してるから。特に銃を持ち歩いている警察官にはろくなのがいないらしいわよあそこは……あそこは警察の汚職とかすごいし」
そう言うと同じ警察官として腐敗した同業者に圧迫されて育った『パイ』に同情するようにアメリアは大きくため息をついた。
「うるせえな!銃が恐くて兵隊や警官が務まるか!それにアタシは袖の下を取る役人が大っ嫌いなんだ!そんなこと甲武でやってみろ!『切腹』だ!『切腹』!」
かなめの叫びが店に響く。もうかなり出来上がっている店の客達はもうかなめに目をやることもなかった。
「結局この人も……残らなかったんですね」
誠はそう言って呆れながら三人の顔を眺めるだけだった。
「まあ、あの体形じゃあクバルカ中佐のしごきにはついていけなかっただろうからな。当然の帰結だ」
まとめるようにカウラはそう言った。
かなめはそう言って首をひねる。
「『パイ』がいたじゃない……次かどうかは忘れたけど」
そう言ってアメリアは細い目をさらに細めた。その表情は歓喜に満ち溢れていた。
「『パイ』ですか……投げたんですか?パイ僕の時じゃなくて良かったですよ……制服が汚れるし」
顔をしかめつつそう言った誠にカウラは静かにうなづいた。
「やはりお約束と言うことで運航部の馬鹿とアメリアが準備をした。顔面に叩きつけたのは……運航部で水色の髪をした常識人。パーラ・ラビロフってのがいるんだが……嫌な顔をしていたな。うちじゃあ一番の常識人だし」
常識人でなくとも初対面の人間にパイをぶつけるなんて無理だと誠は思った。
「それは誰だって嫌ですよ!初対面の人に挨拶もせずにパイをぶつけるなんて!」
誠はそう言うしかなかった。いきなり配属直後に顔面にパイを食らったら誰だっていやな顔の一つもするものだ。ぶつける役目になったパーラと言う女性も災難である。誠はそう思いながら話を続けようとするかなめに顔を向けた。
「ただ、そいつは食いしん坊だったからそれほど怒らなかったぞ。『外惑星共和国連邦』出身で……結構デブだったから、キャラ的にはちょうどよかったんじゃねえの?あそこはヘリウム以外に資源が無いから所得も低いし、太陽から離れてるから食品の値段は高いし……しかしあんな環境でよくあそこまで太れたな」
そう言って笑うかなめの姿に、誠は自分がいかに『特殊な部隊』に配属になったかがよくわかった。
「反応はあくまで冷静だったわよ。まあね……でも一番年長だったからね……」
「確かに二十六歳とか言ってたな」
アメリアとカウラが話し合うが、この部隊の異常さは年齢と関係ないとツッコミたい誠はそのタイミングが図れずにいた。
「ここでも食ったな……『外惑星共和国連邦』は社会主義の国だから食い物買うのも行列だろ?それが次々と出てくるんだ。喜んで食ってやがった」
ラム酒を飲みながらかなめは店のメニューの書かれた壁に目をやった。
「カシラ、キンカン、テバ、やげん……全部二つは食ったよな」
「大変だったのよ。一応、ここの勘定はランちゃんに回るんだけど……本当に嫌な顔してたわよね」
「軍の食べる人の食べ方って半端ないですからね」
ずらりと並んだ鶏肉の部位の書かれたメニュー表を見ながら誠はその『パイ』と呼ばれる先輩の胃袋の中を想像して若干引いていた。
「まあな。でも、食う以外は常識人だったな。なんやかんやで一週間後には部隊にいなかったんだから『特殊な部隊』である司法局実働部隊とは水が合わなかったんだろ」
カウラは冷静にそう言うと烏龍茶を啜った。
「カウラ。オメエが虐めたんじゃねえのか?オメエの趣味のことで軽蔑するようなこと言ってたからな。『ギャンブルは毒です』って……」
カウラとかなめが罪の擦り付け合いをしているのを横目にアメリアが誠に向けて身を乗り出した。
「なんでも、かなめちゃんがいつも銃を持ち歩いてるのが恐かったらしいわよ……外惑星連邦は社会主義の国で国家の締め付けが厳しくて軍や警察がデカい顔してるから。特に銃を持ち歩いている警察官にはろくなのがいないらしいわよあそこは……あそこは警察の汚職とかすごいし」
そう言うと同じ警察官として腐敗した同業者に圧迫されて育った『パイ』に同情するようにアメリアは大きくため息をついた。
「うるせえな!銃が恐くて兵隊や警官が務まるか!それにアタシは袖の下を取る役人が大っ嫌いなんだ!そんなこと甲武でやってみろ!『切腹』だ!『切腹』!」
かなめの叫びが店に響く。もうかなり出来上がっている店の客達はもうかなめに目をやることもなかった。
「結局この人も……残らなかったんですね」
誠はそう言って呆れながら三人の顔を眺めるだけだった。
「まあ、あの体形じゃあクバルカ中佐のしごきにはついていけなかっただろうからな。当然の帰結だ」
まとめるようにカウラはそう言った。
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