1,358 / 1,474
第17章 前夜祭
蟹
しおりを挟む
「おい、アメリア」
「なに?」
かなめが身を乗り出して道場の庭に停められたレンタカーとわかるナンバーのマイクロバスを指差した。
「ああ、あれは……」
アメリアがそういった瞬間、道場から駆け出してきたピンク色のカーリーヘアーの女性の姿が目に入った。
「カウラちゃん!」
運行部のブリッジクルーの一人、サラ・グリファン少尉が手を振っている。その後ろでは水色のショートヘアーのパーラ・ラビロフ大尉が待っていた。そして彼女等に続いて代わった髪の色のブリッジクルーの女性隊員達がマイクロバスから降りている。オフなので当然全員私服を着ている。
「降りろ、神前」
そう言ってかなめが足を蹴り上げるので誠は状況がつかめないままカウラに続いて車から降りる。
「人の車だと思って……」
かなめの態度に呆れながらカウラは狭い後部座席から降り立った。
三人はなぜ彼女達がここにいるのか不思議に思いながらニヤニヤしながら自分達を見つめているアメリアに視線を移す。
「ああ、カウラの誕生日でしょ?たくさんで祝ったほうがいいって……」
アメリアの隣に並んだサラが満面の笑みでカウラを見つめている。
「多いほうがうれしいですものね。みんなでお祝いしましょうよ」
「仕事は大丈夫なのか?」
さすがのかなめも心配そうな表情を浮かべる。
「ああ、例の二機のアサルト・モジュールの起動実験でしょ?ともかくしばらくは『ふさ』での運用は無いだろうと言うことで私達暇だったのよ。でも……」
パーラはそう言うと隣のサラを見つめる。整備班班長の島田と付き合っているサラの表情はさすがに冴えない。
「まあ島田先輩は休めないでしょうね」
誠の言葉を聞くとサラはそのまま静かにうなづく。
「こんなに来て……それに明日じゃねえのか?こいつの誕生日」
「だって……明日だと私が出れないでしょ?それにいいものが手に入ったんだから」
うれしそうなサラ。確かに司法局実働部隊での数少ない彼氏持ちである彼女は島田と何かイベントをするであろうことが推測されて一同は苦笑いを浮かべた。
「なんですか?」
「蟹よ!」
アメリアがうれしそうに叫ぶ。かなめとカウラはなんとなく納得したような表情でアメリアのうれしそうな顔を眺めていた。
道場の入り口で手を振る母、薫。誠は苦笑いを浮かべた。カウラとアメリアが冷やかすような視線を彼に向けてくるのがわかる。
「本当に仲がいいのね。かなめちゃん、うらやましいでしょ?」
そう言って見つめてくるパーラにかなめは思わず顔を赤らめる。そしてそのまま足を玄関に向ける。
「そう言えば西園寺さんのお母さんて有名な剣術家で……」
「お袋の話はするなよ」
かなめはパーラにそう言うと足を速めた。
「ええ、かなりしごかれたらしいわよ。すっかりトラウマになったみたいで」
「アメリア!聞こえてんぞ!」
怒鳴るかなめにアメリアは思わず首をすくめる。誠も仕方なくかなめやカウラと玄関へと向かった。引き戸を開いて入った玄関には大量の大きな白い断熱素材の容器が積み上げられている。
「これ……全部蟹?」
「そうよ!」
呆れたようにつぶやくかなめにアメリアは元気良く答える。誠も空の容器を見つめながらその量の多さにただ圧倒されていた。
「北海ズワイ……本物か?最近のこう言う表示の紛らわしいのは何とかならないのか?」
カウラのつぶやきに誠も苦笑する。遼州にはズワイガニはいない。脊椎動物が生物学上の同様の進化をたどったとされている遼州だが、甲殻類の進化は地球のそれとは違った。この『北海ズワイ』と呼ばれている『リョウシュウクモガニ』は見かけは確かに蟹と思えるが、足の数が二本多いのが地球の蟹とは違う点だった。美食家のクバルカ・ラン中佐に言わせると味はあっさりしすぎていて地球のズワイガニより劣るという話だった。
「でもまあこれは誰が……」
呆れながら誠は靴を脱ぐ。かなめは誠を待たずに奥の洗面所に走っていく。
「隊長に決まっているじゃない……オートレースで大穴当てたんだって」
背中からいきなりアメリアに声をかけられて誠はバランスを崩す。ブーツを脱ぎ終えたカウラが手を出さなければそのまま顔面から玄関のコンクリートにキスをするところだった。
「脅かさないでくださいよ」
パーラは満面の笑みを浮かべながら体勢を立て直す誠に手を貸す。
「ごめんなさい。でもこれで今日は蟹鍋ができるのよ。みんな楽しくって……」
そう言うとサラはサンダルを脱いでそのまま道場へ向かう廊下を小走りで消えていく。
「楽しそうだな」
誠を待ってくれているカウラに笑顔を向けながら誠はようやく靴を脱いで立ち上がった。
「でもこんなに食べるんですか?」
明らかに伊達では無い量に誠はただ圧倒されていた。
「ちゃんと手を洗って!」
道場の方からの母の叫びに苦笑いを浮かべながら誠はそのまま廊下を奥に進んだ。
「良いわね、お母さんて」
「そうですか?面倒なだけですよ」
パーラの言葉につい出た言葉に誠は頭を掻いた。そんな誠をカウラは静かに見守る。
「なんだよ、早くしないと全部食っちまうぞ」
洗面所に向かう廊下から顔を出したかなめがそう言って笑う。誠は仕方がないと言う表情でそのまま洗面台に向かう。
「お前もちゃんと手ぐらい洗えよ」
「余計なお世話だ」
いつものように一言多いかなめにカウラがやり返す。
「本当に二人は仲良しなのねえ」
サラの言葉にかなめとカウラが見つめあう。次第にその表情が複雑なものになる。
『どこがですか!』
声をそろえて二人が言うのを見て手を洗っていた誠が噴出す。それを見るとすぐさまかなめの手がその襟首を捕まえて引き倒した。
「おい、どういうつもりだ?あ?」
かなめはそのまま誠の利き手の左手をつかむと後ろにぎりぎりと締め上げ始める。
「どういうつもりも何も……」
「西園寺、ちゃんと躾をしておけ」
カウラは引き倒されてじたばたしている誠を横目に見ながら、優雅に手を洗っている。そしてその水音と暴れる誠の音ににまぎれて玄関の引き戸を開く音が聞こえた。
『はじめちゃうからね!』
『いいぞ!アタシも行くから待ってろ!』
廊下でサラとかなめの叫び声が響く。
「冗談抜きで西園寺はすでに始めているだろうからな。こういう時のあいつは気が早すぎる」
笑みを浮かべているカウラについて道場へ向かう廊下を急ぎ足で進む。
「かなめちゃん!もう蟹を入れちゃったの?」
アメリアの声が響く。道場にはテーブルが五つほど並んでいた。上にはそれぞれ土鍋とその隣に山とつまれた蟹。かなめの占拠したテーブルの鍋から湯気が上がり、その中にかなめが蟹を放り込んでいる。
「まあすぐに茹で上がるわけじゃないからいいですよ」
薫の声にこたえてカウラは微笑む。
「そうそう!ちゃんと火が通らねえとな」
そう言って上機嫌なかなめの手にはすでに芋焼酎が握られていた。そのラベルを見て誠は母に近づいて小声でささやく。
「母さん、それ親父の取って置きの……」
おどおどとした誠に薫は笑顔を浮かべている。
「あら、大丈夫よ。代わりに麦焼酎のおいしいのを頂いたから」
そんな薫を見て頷きながらかなめは次々と蟹を鍋に入れる。
「そんなに入れても仕方ないだろ?それより野菜を入れろ」
自然とかなめの座っているテーブルに着いたカウラは対抗するように白菜を鍋に投入する。
「だってアタシは野菜食べないし……」
かなめはそう言うと蟹を鍋に放り込んでいた手を休めてグラスに焼酎を注ぎ始める。
「あ!待っててくれなかったの?」
母屋から入ってきたサラの一言。にんまりと笑ってかなめがサラを見上げる。
「オメエは飛び入りだろ?遠慮しろよ」
そう言いながらかなめは乾杯を待っている。それを見てパーラは自分のテーブルにサラを招くと周りを見回した。
「カウラさん……」
そう言いながら後ろのケースから冷えたビールの瓶を手にして誠はカウラに向ける。
「今日ぐらいはいいか……」
「明日も飲むくせに何言ってんだか」
カウラをいつものようにかなめが茶化す。それを無視するようにグラスを手にしたカウラは誠の注ぐビールをうれしそうな顔で見つめていた。
「えーとそれじゃあ失礼するわね」
それぞれのテーブルにはお互い女同士でグラスにビールを注ぎあっていた運行部の女性士官達が手にグラスを掲げている。
「まあいろいろと忙しいみたいで今年は部隊での忘年会は出来そうにないから」
「あのーアメリア?趣旨が違うんだけど」
思わず突っ込むかなめに思い出したようにサラはどてらの袖を打つ。
「えーとじゃあカウラちゃんの誕生日が明日と言うことで!おめでとう!」
『おめでとうございます!』
黄色い歓声が沸きあがる。誠は少し肩身が狭いと言うようにグラスを合わせて乾杯した。
「なに?」
かなめが身を乗り出して道場の庭に停められたレンタカーとわかるナンバーのマイクロバスを指差した。
「ああ、あれは……」
アメリアがそういった瞬間、道場から駆け出してきたピンク色のカーリーヘアーの女性の姿が目に入った。
「カウラちゃん!」
運行部のブリッジクルーの一人、サラ・グリファン少尉が手を振っている。その後ろでは水色のショートヘアーのパーラ・ラビロフ大尉が待っていた。そして彼女等に続いて代わった髪の色のブリッジクルーの女性隊員達がマイクロバスから降りている。オフなので当然全員私服を着ている。
「降りろ、神前」
そう言ってかなめが足を蹴り上げるので誠は状況がつかめないままカウラに続いて車から降りる。
「人の車だと思って……」
かなめの態度に呆れながらカウラは狭い後部座席から降り立った。
三人はなぜ彼女達がここにいるのか不思議に思いながらニヤニヤしながら自分達を見つめているアメリアに視線を移す。
「ああ、カウラの誕生日でしょ?たくさんで祝ったほうがいいって……」
アメリアの隣に並んだサラが満面の笑みでカウラを見つめている。
「多いほうがうれしいですものね。みんなでお祝いしましょうよ」
「仕事は大丈夫なのか?」
さすがのかなめも心配そうな表情を浮かべる。
「ああ、例の二機のアサルト・モジュールの起動実験でしょ?ともかくしばらくは『ふさ』での運用は無いだろうと言うことで私達暇だったのよ。でも……」
パーラはそう言うと隣のサラを見つめる。整備班班長の島田と付き合っているサラの表情はさすがに冴えない。
「まあ島田先輩は休めないでしょうね」
誠の言葉を聞くとサラはそのまま静かにうなづく。
「こんなに来て……それに明日じゃねえのか?こいつの誕生日」
「だって……明日だと私が出れないでしょ?それにいいものが手に入ったんだから」
うれしそうなサラ。確かに司法局実働部隊での数少ない彼氏持ちである彼女は島田と何かイベントをするであろうことが推測されて一同は苦笑いを浮かべた。
「なんですか?」
「蟹よ!」
アメリアがうれしそうに叫ぶ。かなめとカウラはなんとなく納得したような表情でアメリアのうれしそうな顔を眺めていた。
道場の入り口で手を振る母、薫。誠は苦笑いを浮かべた。カウラとアメリアが冷やかすような視線を彼に向けてくるのがわかる。
「本当に仲がいいのね。かなめちゃん、うらやましいでしょ?」
そう言って見つめてくるパーラにかなめは思わず顔を赤らめる。そしてそのまま足を玄関に向ける。
「そう言えば西園寺さんのお母さんて有名な剣術家で……」
「お袋の話はするなよ」
かなめはパーラにそう言うと足を速めた。
「ええ、かなりしごかれたらしいわよ。すっかりトラウマになったみたいで」
「アメリア!聞こえてんぞ!」
怒鳴るかなめにアメリアは思わず首をすくめる。誠も仕方なくかなめやカウラと玄関へと向かった。引き戸を開いて入った玄関には大量の大きな白い断熱素材の容器が積み上げられている。
「これ……全部蟹?」
「そうよ!」
呆れたようにつぶやくかなめにアメリアは元気良く答える。誠も空の容器を見つめながらその量の多さにただ圧倒されていた。
「北海ズワイ……本物か?最近のこう言う表示の紛らわしいのは何とかならないのか?」
カウラのつぶやきに誠も苦笑する。遼州にはズワイガニはいない。脊椎動物が生物学上の同様の進化をたどったとされている遼州だが、甲殻類の進化は地球のそれとは違った。この『北海ズワイ』と呼ばれている『リョウシュウクモガニ』は見かけは確かに蟹と思えるが、足の数が二本多いのが地球の蟹とは違う点だった。美食家のクバルカ・ラン中佐に言わせると味はあっさりしすぎていて地球のズワイガニより劣るという話だった。
「でもまあこれは誰が……」
呆れながら誠は靴を脱ぐ。かなめは誠を待たずに奥の洗面所に走っていく。
「隊長に決まっているじゃない……オートレースで大穴当てたんだって」
背中からいきなりアメリアに声をかけられて誠はバランスを崩す。ブーツを脱ぎ終えたカウラが手を出さなければそのまま顔面から玄関のコンクリートにキスをするところだった。
「脅かさないでくださいよ」
パーラは満面の笑みを浮かべながら体勢を立て直す誠に手を貸す。
「ごめんなさい。でもこれで今日は蟹鍋ができるのよ。みんな楽しくって……」
そう言うとサラはサンダルを脱いでそのまま道場へ向かう廊下を小走りで消えていく。
「楽しそうだな」
誠を待ってくれているカウラに笑顔を向けながら誠はようやく靴を脱いで立ち上がった。
「でもこんなに食べるんですか?」
明らかに伊達では無い量に誠はただ圧倒されていた。
「ちゃんと手を洗って!」
道場の方からの母の叫びに苦笑いを浮かべながら誠はそのまま廊下を奥に進んだ。
「良いわね、お母さんて」
「そうですか?面倒なだけですよ」
パーラの言葉につい出た言葉に誠は頭を掻いた。そんな誠をカウラは静かに見守る。
「なんだよ、早くしないと全部食っちまうぞ」
洗面所に向かう廊下から顔を出したかなめがそう言って笑う。誠は仕方がないと言う表情でそのまま洗面台に向かう。
「お前もちゃんと手ぐらい洗えよ」
「余計なお世話だ」
いつものように一言多いかなめにカウラがやり返す。
「本当に二人は仲良しなのねえ」
サラの言葉にかなめとカウラが見つめあう。次第にその表情が複雑なものになる。
『どこがですか!』
声をそろえて二人が言うのを見て手を洗っていた誠が噴出す。それを見るとすぐさまかなめの手がその襟首を捕まえて引き倒した。
「おい、どういうつもりだ?あ?」
かなめはそのまま誠の利き手の左手をつかむと後ろにぎりぎりと締め上げ始める。
「どういうつもりも何も……」
「西園寺、ちゃんと躾をしておけ」
カウラは引き倒されてじたばたしている誠を横目に見ながら、優雅に手を洗っている。そしてその水音と暴れる誠の音ににまぎれて玄関の引き戸を開く音が聞こえた。
『はじめちゃうからね!』
『いいぞ!アタシも行くから待ってろ!』
廊下でサラとかなめの叫び声が響く。
「冗談抜きで西園寺はすでに始めているだろうからな。こういう時のあいつは気が早すぎる」
笑みを浮かべているカウラについて道場へ向かう廊下を急ぎ足で進む。
「かなめちゃん!もう蟹を入れちゃったの?」
アメリアの声が響く。道場にはテーブルが五つほど並んでいた。上にはそれぞれ土鍋とその隣に山とつまれた蟹。かなめの占拠したテーブルの鍋から湯気が上がり、その中にかなめが蟹を放り込んでいる。
「まあすぐに茹で上がるわけじゃないからいいですよ」
薫の声にこたえてカウラは微笑む。
「そうそう!ちゃんと火が通らねえとな」
そう言って上機嫌なかなめの手にはすでに芋焼酎が握られていた。そのラベルを見て誠は母に近づいて小声でささやく。
「母さん、それ親父の取って置きの……」
おどおどとした誠に薫は笑顔を浮かべている。
「あら、大丈夫よ。代わりに麦焼酎のおいしいのを頂いたから」
そんな薫を見て頷きながらかなめは次々と蟹を鍋に入れる。
「そんなに入れても仕方ないだろ?それより野菜を入れろ」
自然とかなめの座っているテーブルに着いたカウラは対抗するように白菜を鍋に投入する。
「だってアタシは野菜食べないし……」
かなめはそう言うと蟹を鍋に放り込んでいた手を休めてグラスに焼酎を注ぎ始める。
「あ!待っててくれなかったの?」
母屋から入ってきたサラの一言。にんまりと笑ってかなめがサラを見上げる。
「オメエは飛び入りだろ?遠慮しろよ」
そう言いながらかなめは乾杯を待っている。それを見てパーラは自分のテーブルにサラを招くと周りを見回した。
「カウラさん……」
そう言いながら後ろのケースから冷えたビールの瓶を手にして誠はカウラに向ける。
「今日ぐらいはいいか……」
「明日も飲むくせに何言ってんだか」
カウラをいつものようにかなめが茶化す。それを無視するようにグラスを手にしたカウラは誠の注ぐビールをうれしそうな顔で見つめていた。
「えーとそれじゃあ失礼するわね」
それぞれのテーブルにはお互い女同士でグラスにビールを注ぎあっていた運行部の女性士官達が手にグラスを掲げている。
「まあいろいろと忙しいみたいで今年は部隊での忘年会は出来そうにないから」
「あのーアメリア?趣旨が違うんだけど」
思わず突っ込むかなめに思い出したようにサラはどてらの袖を打つ。
「えーとじゃあカウラちゃんの誕生日が明日と言うことで!おめでとう!」
『おめでとうございます!』
黄色い歓声が沸きあがる。誠は少し肩身が狭いと言うようにグラスを合わせて乾杯した。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第三部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。
一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。
その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。
この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。
そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。
『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。
誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる