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第6章 西園寺サロン
部屋住みの皇帝
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「サイボーグがそんなに珍しいですか?」
鋭い言葉を吐く要だが、闇市で無法者同士のやり取りを繰り返してきた明石にはかわいらしく感じられた。所詮は安全地帯にいた人間の目。いくら不良を気取ろうにもそんな自覚のない甘えがその目の奥に見て取れた。
「それでは自分達はこれで」
別所が頭を下げる・明石は二人が気になりながらもつれてきた別所の手前、一礼して稽古の場から去った。
「晩御飯は期待していいわよ!」
子供のように見える笑顔で康子は明石達を見送った。
そのまま廊下は続く。そして池に囲まれたそれほど大きくない離れに着いたとき、再び別所はそのふすまの前でひざを突いた。
「別所、明石。入ります」
別所の声が静かな離れに響く。しかし何の反応も無かった。
「別所!明石!入ります!」
今度は力を入れて別所が叫んだ。
「聞こえてるよ!入りな!」
澄んだ声がふすまの向こうから聞こえる。それを合図に静々と別所はふすまを開いた。中でこの館の主、西園寺基義と一人の見慣れない男、そして上司の赤松忠満は目の前の碁盤を並んで見つめていた。
「ああ、無駄ですよ。そこの黒石。丸々死んでますから。また俺の勝ちですね」
どう見ても自分達より若い男が陸軍の制服を着て西園寺達の前に座っていた。静かにふすまを閉める明石。
「ああ、明石。お前は囲碁はわかるか?」
助けを求めるような調子で赤松が明石を呼ぶが、明石は首を振った。
「だめだめ!もうこうなったら挽回不可能ですよ。でもまあ兄貴もずいぶんとましになりましたね」
西園寺を兄貴と呼ぶ。そのことでその陸軍大佐が遼南皇帝にして胡州四大公の当主嵯峨惟基であることが分かり明石は当惑した。
「おう、忠さんのところの子飼いか?噂は聞いているって……確か、別所君とは会うのはこれで二回目か?」
嵯峨が盤面を見つめる西園寺を置いて明石達を振り向く。
「ご無沙汰しています。しかし……」
「気にするなって!まあ気になるのも当然だな。ベルルカンに治安出動している部隊の指揮を取っているはずの俺がここにいるのがおかしいってんだろ?」
ニヤニヤと笑いながら当惑した顔をしているだろう自分達を見つめる青年将校に明石は振り回されているような感覚にとらわれていた。
「皇帝陛下が自ら軍を率いて同盟加盟を表明したカイリシアに……」
「ああ、俺は大軍を指揮するのは苦手でね。どうせ部下任せになるからな。こうして胡州の動静を探っていた方がよっぽど建設的だろ?」
そう言うと隣においてあった徳利から酒をついで煽る。
「しかし、映像でもはっきりと見たんですけど」
「ああ、あれは弟。親父が兄弟を100人以上こさえやがったからな。おかげであのくらいの望遠での映像なら区別がつかないのもいるわけだ」
嵯峨は笑いながら明石達を面白そうに眺めている。
「やっぱり駄目だな」
西園寺は相変わらず碁盤を見つめていたが諦めたようにそう言って嵯峨を見あげた。
「だから言ったじゃないですか。もうおしまいだって」
盤面を見つめていた赤松はようやく納得が言ったように隣に座りなおす。
鋭い言葉を吐く要だが、闇市で無法者同士のやり取りを繰り返してきた明石にはかわいらしく感じられた。所詮は安全地帯にいた人間の目。いくら不良を気取ろうにもそんな自覚のない甘えがその目の奥に見て取れた。
「それでは自分達はこれで」
別所が頭を下げる・明石は二人が気になりながらもつれてきた別所の手前、一礼して稽古の場から去った。
「晩御飯は期待していいわよ!」
子供のように見える笑顔で康子は明石達を見送った。
そのまま廊下は続く。そして池に囲まれたそれほど大きくない離れに着いたとき、再び別所はそのふすまの前でひざを突いた。
「別所、明石。入ります」
別所の声が静かな離れに響く。しかし何の反応も無かった。
「別所!明石!入ります!」
今度は力を入れて別所が叫んだ。
「聞こえてるよ!入りな!」
澄んだ声がふすまの向こうから聞こえる。それを合図に静々と別所はふすまを開いた。中でこの館の主、西園寺基義と一人の見慣れない男、そして上司の赤松忠満は目の前の碁盤を並んで見つめていた。
「ああ、無駄ですよ。そこの黒石。丸々死んでますから。また俺の勝ちですね」
どう見ても自分達より若い男が陸軍の制服を着て西園寺達の前に座っていた。静かにふすまを閉める明石。
「ああ、明石。お前は囲碁はわかるか?」
助けを求めるような調子で赤松が明石を呼ぶが、明石は首を振った。
「だめだめ!もうこうなったら挽回不可能ですよ。でもまあ兄貴もずいぶんとましになりましたね」
西園寺を兄貴と呼ぶ。そのことでその陸軍大佐が遼南皇帝にして胡州四大公の当主嵯峨惟基であることが分かり明石は当惑した。
「おう、忠さんのところの子飼いか?噂は聞いているって……確か、別所君とは会うのはこれで二回目か?」
嵯峨が盤面を見つめる西園寺を置いて明石達を振り向く。
「ご無沙汰しています。しかし……」
「気にするなって!まあ気になるのも当然だな。ベルルカンに治安出動している部隊の指揮を取っているはずの俺がここにいるのがおかしいってんだろ?」
ニヤニヤと笑いながら当惑した顔をしているだろう自分達を見つめる青年将校に明石は振り回されているような感覚にとらわれていた。
「皇帝陛下が自ら軍を率いて同盟加盟を表明したカイリシアに……」
「ああ、俺は大軍を指揮するのは苦手でね。どうせ部下任せになるからな。こうして胡州の動静を探っていた方がよっぽど建設的だろ?」
そう言うと隣においてあった徳利から酒をついで煽る。
「しかし、映像でもはっきりと見たんですけど」
「ああ、あれは弟。親父が兄弟を100人以上こさえやがったからな。おかげであのくらいの望遠での映像なら区別がつかないのもいるわけだ」
嵯峨は笑いながら明石達を面白そうに眺めている。
「やっぱり駄目だな」
西園寺は相変わらず碁盤を見つめていたが諦めたようにそう言って嵯峨を見あげた。
「だから言ったじゃないですか。もうおしまいだって」
盤面を見つめていた赤松はようやく納得が言ったように隣に座りなおす。
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