710 / 1,474
第6章 梅の花
車列
しおりを挟む
「おい……あそこの車の列……」
カウラがハンドルから手を離して指さす田んぼの隣の車の列。最後部には警備員が看板を持って立っているのが見える。
『豊川市立植物園駐車場最後尾』
看板の赤い文字にアイシャが思わず頭を抱える。
「やっぱりみんな考えることは同じね……どこか近くに駐めて歩く?」
「この近辺は駐車禁止だ」
カウラに一言で自分の案を否定されたアイシャが情けない表情で後部座席に目を向けた。
「そんな目でアタシを見ても仕方ないだろ?待つしかねえよ。梅は逃げたりしねえから」
「いつもは待つのは嫌だって逃げるくせに……珍しいのね」
確かにいつもにないのんびりしたような表情のかなめを見て誠も首をひねった。あらゆる意味でまな板の上の鯉の誠達。かなめは彼女なりに覚悟を決めているのだろう。そう思うと誠も自然に頷いていた。
「へえ、後部座席のお二人さんはお待ちするようですよ」
「なら待つしかないだろ」
いつでもそのまま最後尾の車を追い越せる位置で車を停めていたカウラは覚悟を決めたようにそのまま駐車場へ続く車列の最後尾に車を着けた。
「30分くらいかしらねえ……」
「昼過ぎだからな……確かにそのくらいは時間がかかるんじゃねえか?そう言えばここの駐車場はでかいのか?」
「市営施設だからそれなりにでかいはずだぞ……ちょっと待て」
かなめの質問に暇をもてあましていたカウラはナビゲーションを弄って駐車場の規模を調べる。
「2百台……多いのか少ないのか微妙だな」
カウラの苦笑いに誠も自然と笑みが漏れてくるのを感じていた。
止まった車の中に入り込む日差しはまだ弱く、少しばかり眠気を誘う。
「眠いわね……」
思わず呟いたアイシャにカウラが苦笑いを浮かべる。
すぐに前の車が動き出した。
「意外と早く入れたりして」
「それは無いだろう。たまたまだ」
かなめの言葉を軽く否定するとカウラはそのまま車を動かす。
「こんな良い日より……いつまで続くか……ガイガーカウンターでも買おうかしら?」
「ああ、売り切れ続出らしいな。そういうところはちゃっかりしている庶民様だ。まあそんなことをしたところで降り注ぐ放射線を払うことなんてできねえのによ……」
また振り出しに戻る会話。
太陽の力はまだ弱く。アイシャとかなめに弱音を吐かせる勢いは無い。ただ、その眠気は着実に襲ってきているようで次第にアイシャの口数が減り始める。
「まあ……梅でも見て。帰りに酒でも買って帰るか?」
「お前はそればかりだな」
かなめの言葉にカウラはいつもの呆れたという笑みを浮かべる。誠がちらりと助手席を見れば、すでにアイシャはうたた寝を始めていた。
「眠くなるのも分かる日差しだな……暖房も適度だし……アタシも寝ようか?」
「遠慮するな。静かで気楽になる」
カウラの言葉にかなめはパッと目を見開いて誠を睨み付ける。
「あ……ただ見てただけですよ」
「で?見た感想は?」
「え?まあ……眠そうだなと……」
「そうか……」
少し残念そうにかなめはうつむく。誠は彼女が何を求めていたのか分からずにただ仕方なく自分も眠れるように背もたれに頭を載せた。
「また動くな……やはり早く着くんじゃないか?」
車が動き出すとかなめは勝手につぶやいていた。確かに明らかに早めに車は動いていた。駐車場の存在を示す看板も見え始めている。
「早く着くと良いですね……」
睡魔と戦いながら誠は投げやりにそう言った。
「梅……意外と終わってたりして」
不意に目を開けたアイシャのつぶやきにかなめが顔を顰める。
「そりゃ嫌だな。せっかく並んだのに見てみたら散った後……最悪」
「そんなことは無いと思いますよ。今年は梅は遅いって言ってましたから」
誠の言葉にもかなめの表情は冴えない。ただ動いていく景色を眺めながら大きくため息をつく。
「でもそれは咲くときの話だろ?このところかなり暖かいじゃねえか。すぐ散ったりしてるかもしれねえだろ?」
「心配性ね……なんなら降りて確かめてくれば?」
「ふざけるな!」
かなめの怒声にアイシャはそのまま寝たふりを再開した。カウラはそれを眺めながらじりじり進む前のバンの後ろをゆっくりと車を進める。
「全部は散って無くても……紅梅だけ散ってるとか?」
「それも嫌だな。紅白揃ってこその梅じゃねえか」
「意外だな。西園寺が花にこだわるとは……」
カウラの何気ない一言にかなめが黙り込む。一応は彼女も風雅を重んじる胡州随一の名門西園寺家の次期当主である。そう言うことに疎い誠ですら殿上貴族のたしなみとして彼女が幼い頃から梅見などに興じる日々を過ごしてきたことは容易に想像がついた。
「結局……隊長が梅見でもして鋭気を養えと言ったが……そのまんまになりそうだな」
駐車場の入り口に立つ警備員の指示に従ってハンドルを切りながらのカウラのつぶやき。誠は目の前に臨時駐車場と書かれた看板を見てようやくこの行列がなぜ早く進んだのかを理解した。
「なんだよ……今頃臨時駐車場をオープンか?今の季節なんだから朝から開けとけよ」
「まああれだ。普段の駐車場がいっぱいになるまで閉めておく取り決めにでもなっていたんじゃないのか?」
「これだからお役所仕事は……」
「私達も公務員じゃないの」
かなめの悪態に薄目を開けたアイシャが突っ込みを入れる。カウラはそのまま車を砂利の敷き詰められた空き地に進めて誘導員の指示に従ってバンの隣に車を停めた。
「じゃあ行くから……でかいの二人!降りろ」
「何よその言い方……」
悪態続きのかなめをちらりとにらんだ後、アイシャは渋々助手席のドアを開けると外に出た。誠も苦笑いを浮かべながら助手席を倒して外に出る。
「やっぱり寒いな……」
「なら上を着てくればいいのに……」
ジャンバーの下はタンクトップといういつもの姿のかなめにアイシャが嫌みを込めた調子で呟いた。
「ぐだぐだ言っていないで行くぞ」
いつまでも揉めていそうなアイシャとかなめを横目で見ながらカウラはそう言うとそのまま植物園の入り口に向けて歩き始めた。
平日の日中。客の多くはリタイヤした高齢者が多く見られた。仲むつまじく歩く姿、何人もでがやがやと談笑しながら入り口に向かう姿。そこにはいつもの東和の日常があった。
カウラがハンドルから手を離して指さす田んぼの隣の車の列。最後部には警備員が看板を持って立っているのが見える。
『豊川市立植物園駐車場最後尾』
看板の赤い文字にアイシャが思わず頭を抱える。
「やっぱりみんな考えることは同じね……どこか近くに駐めて歩く?」
「この近辺は駐車禁止だ」
カウラに一言で自分の案を否定されたアイシャが情けない表情で後部座席に目を向けた。
「そんな目でアタシを見ても仕方ないだろ?待つしかねえよ。梅は逃げたりしねえから」
「いつもは待つのは嫌だって逃げるくせに……珍しいのね」
確かにいつもにないのんびりしたような表情のかなめを見て誠も首をひねった。あらゆる意味でまな板の上の鯉の誠達。かなめは彼女なりに覚悟を決めているのだろう。そう思うと誠も自然に頷いていた。
「へえ、後部座席のお二人さんはお待ちするようですよ」
「なら待つしかないだろ」
いつでもそのまま最後尾の車を追い越せる位置で車を停めていたカウラは覚悟を決めたようにそのまま駐車場へ続く車列の最後尾に車を着けた。
「30分くらいかしらねえ……」
「昼過ぎだからな……確かにそのくらいは時間がかかるんじゃねえか?そう言えばここの駐車場はでかいのか?」
「市営施設だからそれなりにでかいはずだぞ……ちょっと待て」
かなめの質問に暇をもてあましていたカウラはナビゲーションを弄って駐車場の規模を調べる。
「2百台……多いのか少ないのか微妙だな」
カウラの苦笑いに誠も自然と笑みが漏れてくるのを感じていた。
止まった車の中に入り込む日差しはまだ弱く、少しばかり眠気を誘う。
「眠いわね……」
思わず呟いたアイシャにカウラが苦笑いを浮かべる。
すぐに前の車が動き出した。
「意外と早く入れたりして」
「それは無いだろう。たまたまだ」
かなめの言葉を軽く否定するとカウラはそのまま車を動かす。
「こんな良い日より……いつまで続くか……ガイガーカウンターでも買おうかしら?」
「ああ、売り切れ続出らしいな。そういうところはちゃっかりしている庶民様だ。まあそんなことをしたところで降り注ぐ放射線を払うことなんてできねえのによ……」
また振り出しに戻る会話。
太陽の力はまだ弱く。アイシャとかなめに弱音を吐かせる勢いは無い。ただ、その眠気は着実に襲ってきているようで次第にアイシャの口数が減り始める。
「まあ……梅でも見て。帰りに酒でも買って帰るか?」
「お前はそればかりだな」
かなめの言葉にカウラはいつもの呆れたという笑みを浮かべる。誠がちらりと助手席を見れば、すでにアイシャはうたた寝を始めていた。
「眠くなるのも分かる日差しだな……暖房も適度だし……アタシも寝ようか?」
「遠慮するな。静かで気楽になる」
カウラの言葉にかなめはパッと目を見開いて誠を睨み付ける。
「あ……ただ見てただけですよ」
「で?見た感想は?」
「え?まあ……眠そうだなと……」
「そうか……」
少し残念そうにかなめはうつむく。誠は彼女が何を求めていたのか分からずにただ仕方なく自分も眠れるように背もたれに頭を載せた。
「また動くな……やはり早く着くんじゃないか?」
車が動き出すとかなめは勝手につぶやいていた。確かに明らかに早めに車は動いていた。駐車場の存在を示す看板も見え始めている。
「早く着くと良いですね……」
睡魔と戦いながら誠は投げやりにそう言った。
「梅……意外と終わってたりして」
不意に目を開けたアイシャのつぶやきにかなめが顔を顰める。
「そりゃ嫌だな。せっかく並んだのに見てみたら散った後……最悪」
「そんなことは無いと思いますよ。今年は梅は遅いって言ってましたから」
誠の言葉にもかなめの表情は冴えない。ただ動いていく景色を眺めながら大きくため息をつく。
「でもそれは咲くときの話だろ?このところかなり暖かいじゃねえか。すぐ散ったりしてるかもしれねえだろ?」
「心配性ね……なんなら降りて確かめてくれば?」
「ふざけるな!」
かなめの怒声にアイシャはそのまま寝たふりを再開した。カウラはそれを眺めながらじりじり進む前のバンの後ろをゆっくりと車を進める。
「全部は散って無くても……紅梅だけ散ってるとか?」
「それも嫌だな。紅白揃ってこその梅じゃねえか」
「意外だな。西園寺が花にこだわるとは……」
カウラの何気ない一言にかなめが黙り込む。一応は彼女も風雅を重んじる胡州随一の名門西園寺家の次期当主である。そう言うことに疎い誠ですら殿上貴族のたしなみとして彼女が幼い頃から梅見などに興じる日々を過ごしてきたことは容易に想像がついた。
「結局……隊長が梅見でもして鋭気を養えと言ったが……そのまんまになりそうだな」
駐車場の入り口に立つ警備員の指示に従ってハンドルを切りながらのカウラのつぶやき。誠は目の前に臨時駐車場と書かれた看板を見てようやくこの行列がなぜ早く進んだのかを理解した。
「なんだよ……今頃臨時駐車場をオープンか?今の季節なんだから朝から開けとけよ」
「まああれだ。普段の駐車場がいっぱいになるまで閉めておく取り決めにでもなっていたんじゃないのか?」
「これだからお役所仕事は……」
「私達も公務員じゃないの」
かなめの悪態に薄目を開けたアイシャが突っ込みを入れる。カウラはそのまま車を砂利の敷き詰められた空き地に進めて誘導員の指示に従ってバンの隣に車を停めた。
「じゃあ行くから……でかいの二人!降りろ」
「何よその言い方……」
悪態続きのかなめをちらりとにらんだ後、アイシャは渋々助手席のドアを開けると外に出た。誠も苦笑いを浮かべながら助手席を倒して外に出る。
「やっぱり寒いな……」
「なら上を着てくればいいのに……」
ジャンバーの下はタンクトップといういつもの姿のかなめにアイシャが嫌みを込めた調子で呟いた。
「ぐだぐだ言っていないで行くぞ」
いつまでも揉めていそうなアイシャとかなめを横目で見ながらカウラはそう言うとそのまま植物園の入り口に向けて歩き始めた。
平日の日中。客の多くはリタイヤした高齢者が多く見られた。仲むつまじく歩く姿、何人もでがやがやと談笑しながら入り口に向かう姿。そこにはいつもの東和の日常があった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第三部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。
一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。
その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。
この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。
そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。
『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。
誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる