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第2章 生と死
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東都都庁別館の警察鑑識部のある巨大ビル。その玄関ロビーで来客用の椅子に腰かけ、両手であったかい缶コーヒーを飲むランの姿は非常に目立つものだった。さらにその隣では同じく缶のお茶を啜る和服の茜が座っている。ロビーを通る警察関係者達がこの二人と一緒にいる誠達を好奇の目で見るのはあまりにも当然だった。
「コイツが小便行きてえとか言い出してパーキングエリアに止まったのが悪いんだよ!」
かなめはそう言うとパーカーのフードをいじっていた島田の頭を小突く。かなめの言葉に島田は何も言えずにただ苦笑いを浮かべていた。
「そこでタバコの煙がどうので一般市民と喧嘩を始めようとしたのは誰だ?」
カウラの視線を浴びてかなめは後ずさる。
「茜ちゃん。ここに来なければいけない理由。ちゃんと示して見せてね」
ここに到着したばかりだと言うのになぜか手に缶コーヒーを持っているアイシャがそう言って椅子に腰掛けている茜を見下ろす。
「そうですわね」
それだけ言うと茜は軽く周りを見回す。そしていつの間にか消えていたラーナがエレベータの前で手を振るのを見つけて立ち上がった。
「神前、刀は……あー、持ってるか」
立ち上がると言うよりソファーから飛び降りると言う調子のランが、誠の手に握られた日本刀を確認する。
「なんだ?試し切りをしろって言う奴か?」
冷やかすような調子でそう言ったかなめがランの後についていく。誠も先ほどの死体の発生とこの日本刀に何の関連があるのかまるで理解できないでいた。
「とりあえず、技術開発局でパスワードを発行してもらわないといけないっすからそっちに寄るっす」
全員が落ち着いたとわかるとラーナはそう言った。
「パスワード?」
最後尾を着いてきた島田がいぶかしげにつぶやく。同様に茜、ラーナ、ラン以外の面々が不思議そうな顔でラーナを見つめる。
「まーそれだけ他所《よそ》には知られたくねー事実なんだよ」
そう言うとランは開いたエレベータに真っ先に乗り込む。
「こりゃあえぐいもんを見ることになりそうだ。先に飯食ってくれば良かったかな」
頭を掻きながらかなめがそう言うと茜とランが同情するような視線でかなめを見る。
「なんだよ、どうせひどい状態の死体かなんかだろ?アタシはそんなもの腐るほど見てるから平気だよ。そうじゃなくてコイツのことだよ。どうだ?神前。このちび副隊長の様子じゃこの先見るのは結構えぐいものかもしれねえぞ……しばらく肉が食えなくなるとか」
話題を振られて誠は戸惑う。死体の写真なら訓練所でもいくつも見てきたし、以前のバルキスタン戦では実物も見た。確かに食欲が減退するのは経験でわかっていた。
そんな雑談をしていた誠達の目の前のエレベータの扉が開く。白を基調とした部屋の中には人の気配が無かった。ただ静かな空気だけがそのフロアーを支配していた。捜査活動などで忙しく立ち働いている人からの白い目を覚悟していた誠には少しばかり拍子抜けする光景だった。
「不気味だねえ」
かなめはそう言いながら先頭を歩こうとする茜に道を譲る。誠もまるで人の気配を感じない白で統一された色調の部屋をきょろきょろと見回しながら歩いた。
「ここですわ」
茜はそう言うと白い壁にドアだけがある部屋へ皆をいざなった。
茜は何事も無いように歩く。扉を開いてそのまま部屋に入り、一度くるりと回った後そのまま部屋から出てきた。
「皆さんもどうぞ」
襟を正しながらそう言う茜に誠達は呆然としていた。
「いったい何が?」
誠の質問を無視するように今度はラーナが茜と同じように部屋に入り、くるりと回って出てくる。そしてランも当然のように同じ動作をした。
「無意識領域刻印型パスワード入力か?こりゃあ本格的だな」
そう言ったかなめも同じように白い部屋に入りくるりと回って出てくる。
「なんですかその……」
「大脳新皮質の一部に直接アクセスして無意識の領域に介入するのよ。そしてそこにパスワードを入力して現場ではそれを直接脳から読み取ってセキュリティーの解除を行うっていうシステムね。でもこれは警察でも最高レベルの機密保持体制よ。一体……」
そう言ってアイシャが同じ動作を行う。
「僕もやるんですか?」
初めて聞くセキュリティーシステムに腰が引ける誠だが、彼の頭をかなめが小突いた。仕方なく誠は扉を開き、真っ白な部屋に入る。
何も起きない。
まねをしてくるりと回る。反応は無い。そしてそのまま部屋を出た。
「あのー?」
「ああ、自覚は無いだろうがすでに脳にはパスワードが入力されているんだ。実際どう言うパスワードかは本人もわからない」
サラが続くのを見ながらカウラはそう言って後に続く。
「ああ、うちの吉田さんなら無効化できるかもしれないけどな」
そう言って島田もカウラに続いた。
「それじゃあ今度は地下ですわね」
全員がパスワード入力を済ませると再び廊下をエレベータへと進む。電子戦のプロである司法局実働部隊第一小隊二番機担当の吉田俊平少佐でもない限り解けないと言うセキュリティーを施すほどの機密。誠は不謹慎な好奇心に突き動かされて茜の後ろに続いた。
「コイツが小便行きてえとか言い出してパーキングエリアに止まったのが悪いんだよ!」
かなめはそう言うとパーカーのフードをいじっていた島田の頭を小突く。かなめの言葉に島田は何も言えずにただ苦笑いを浮かべていた。
「そこでタバコの煙がどうので一般市民と喧嘩を始めようとしたのは誰だ?」
カウラの視線を浴びてかなめは後ずさる。
「茜ちゃん。ここに来なければいけない理由。ちゃんと示して見せてね」
ここに到着したばかりだと言うのになぜか手に缶コーヒーを持っているアイシャがそう言って椅子に腰掛けている茜を見下ろす。
「そうですわね」
それだけ言うと茜は軽く周りを見回す。そしていつの間にか消えていたラーナがエレベータの前で手を振るのを見つけて立ち上がった。
「神前、刀は……あー、持ってるか」
立ち上がると言うよりソファーから飛び降りると言う調子のランが、誠の手に握られた日本刀を確認する。
「なんだ?試し切りをしろって言う奴か?」
冷やかすような調子でそう言ったかなめがランの後についていく。誠も先ほどの死体の発生とこの日本刀に何の関連があるのかまるで理解できないでいた。
「とりあえず、技術開発局でパスワードを発行してもらわないといけないっすからそっちに寄るっす」
全員が落ち着いたとわかるとラーナはそう言った。
「パスワード?」
最後尾を着いてきた島田がいぶかしげにつぶやく。同様に茜、ラーナ、ラン以外の面々が不思議そうな顔でラーナを見つめる。
「まーそれだけ他所《よそ》には知られたくねー事実なんだよ」
そう言うとランは開いたエレベータに真っ先に乗り込む。
「こりゃあえぐいもんを見ることになりそうだ。先に飯食ってくれば良かったかな」
頭を掻きながらかなめがそう言うと茜とランが同情するような視線でかなめを見る。
「なんだよ、どうせひどい状態の死体かなんかだろ?アタシはそんなもの腐るほど見てるから平気だよ。そうじゃなくてコイツのことだよ。どうだ?神前。このちび副隊長の様子じゃこの先見るのは結構えぐいものかもしれねえぞ……しばらく肉が食えなくなるとか」
話題を振られて誠は戸惑う。死体の写真なら訓練所でもいくつも見てきたし、以前のバルキスタン戦では実物も見た。確かに食欲が減退するのは経験でわかっていた。
そんな雑談をしていた誠達の目の前のエレベータの扉が開く。白を基調とした部屋の中には人の気配が無かった。ただ静かな空気だけがそのフロアーを支配していた。捜査活動などで忙しく立ち働いている人からの白い目を覚悟していた誠には少しばかり拍子抜けする光景だった。
「不気味だねえ」
かなめはそう言いながら先頭を歩こうとする茜に道を譲る。誠もまるで人の気配を感じない白で統一された色調の部屋をきょろきょろと見回しながら歩いた。
「ここですわ」
茜はそう言うと白い壁にドアだけがある部屋へ皆をいざなった。
茜は何事も無いように歩く。扉を開いてそのまま部屋に入り、一度くるりと回った後そのまま部屋から出てきた。
「皆さんもどうぞ」
襟を正しながらそう言う茜に誠達は呆然としていた。
「いったい何が?」
誠の質問を無視するように今度はラーナが茜と同じように部屋に入り、くるりと回って出てくる。そしてランも当然のように同じ動作をした。
「無意識領域刻印型パスワード入力か?こりゃあ本格的だな」
そう言ったかなめも同じように白い部屋に入りくるりと回って出てくる。
「なんですかその……」
「大脳新皮質の一部に直接アクセスして無意識の領域に介入するのよ。そしてそこにパスワードを入力して現場ではそれを直接脳から読み取ってセキュリティーの解除を行うっていうシステムね。でもこれは警察でも最高レベルの機密保持体制よ。一体……」
そう言ってアイシャが同じ動作を行う。
「僕もやるんですか?」
初めて聞くセキュリティーシステムに腰が引ける誠だが、彼の頭をかなめが小突いた。仕方なく誠は扉を開き、真っ白な部屋に入る。
何も起きない。
まねをしてくるりと回る。反応は無い。そしてそのまま部屋を出た。
「あのー?」
「ああ、自覚は無いだろうがすでに脳にはパスワードが入力されているんだ。実際どう言うパスワードかは本人もわからない」
サラが続くのを見ながらカウラはそう言って後に続く。
「ああ、うちの吉田さんなら無効化できるかもしれないけどな」
そう言って島田もカウラに続いた。
「それじゃあ今度は地下ですわね」
全員がパスワード入力を済ませると再び廊下をエレベータへと進む。電子戦のプロである司法局実働部隊第一小隊二番機担当の吉田俊平少佐でもない限り解けないと言うセキュリティーを施すほどの機密。誠は不謹慎な好奇心に突き動かされて茜の後ろに続いた。
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