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第26章 後かたずけ

任務完了

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「このまま脱出するわよ」 

 エダはそう言うとライフルを先ほどの特殊部隊の方に向けながら伏せているキムを地面から引き剥がした。

『作戦成功おめでとう』 

 全速力で駆け出した二人に無線が届く。

「隊長も人が悪いな。どうせあの胡州・アメリカ合同の突入部隊に情報を流したのもあのおっさんなんじゃないのか?」 

 キムはそう言いながら背後から飛んでくる弾丸の雨の中を駆け抜けた。第三勢力の介入を予知したアメリカ軍の特殊作戦部隊のけん制射撃が散発的に続く中二人はただひたすらに走り続けた。

 潅木の茂みを抜けると原生林が始まる。その森に入ることは危険だと悟ったエダが森の際で停止するようにキムに手で信号を送る。キムは立ち止まるとその場にしゃがみこんで背後をうかがった。挟撃を恐れたアメリカ軍の突入部隊は追跡は続けているようだが、積極的な発砲はせず息を潜めていた。

 森の中には気配がなかったが、エダはそのまま姿勢を下げるようにハンドサインを送る。狙撃銃を背中に背負い、キムは腰から拳銃を取り出すと辺りを警戒する。

『賢明だね。そこにはカント将軍の脱出を予期して胡州海軍陸戦隊一個分隊が伏せている。少し待ってくれ』 

 二人はそのまま大地に伏せる。篭ったような消音ライフルと思われる射撃音と何かがぶつかるような音が森の中から聞こえる。

『待たせたね。とりあえず胡州の兵隊さんにはババを引いてもらったよ』 

 そんな二人の上司である嵯峨惟基の言いそうな台詞を聞いてキムとエダはそのまま森に侵入した。強力なライトで二人の視界が奪われる。そして顔にフェイスペイントをした上に部隊章を取り外した遼南軍の戦闘服を着た兵士が駆け寄ってくる。

「お疲れ様でした、とりあえず脱出します!」 

 その兵士はそのまま走り始める。森から現れた兵士達はキムとエダの二人の後ろを警戒しながらジャングルを走り始めた。

「ここまで隊長は考えていたのか?」 

「そんなわけ無いじゃないですか。あの人は大筋のプランをよこしただけですよ。後は青銅騎士団の御子神大佐の対応プランによるものです」 

 そう言いながら反撃を無視して走り続ける。森のはずれに装甲車両が鎮座していた。

「ご苦労様でした!」 

 運転席のハッチから顔を出している兵士の敬礼を引きつった笑みで受け流しながらエダとキムはお互いの顔を見ながら笑いあっていた。
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