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第5章 本配属になる幼女
モーゼル・モデル・パラベラム
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その時、隊長室の扉が開いた。
「失礼します!」
そう言って入ってきたのはアイシャと仲間達。運用艦『高雄』の管制官、パーラ・ラビロフ中尉とアイシャの副長就任で正操舵長に出世したエダ・ラクール少尉と、なぜか居る技術部火器整備担当のキム・ジュンヒ少尉だった。そして当然のように皿と箸を持って入ってくる。
「なんであんた等が来るのよ?」
肉をかみ締めながら明華があからさまに嫌な顔をする。
「ああ、キムは俺が呼んだ。どうだい?やっぱりファクトリーロードのカートリッジは相性悪りいか?」
嵯峨は立ち上がると、執務机の後ろから別の七輪を取り出す。中の炭は十分におきていて真っ赤に網を載せられた網を熱し続けていた。。
「ああ、これはどうも……まあ弾については何社か試したんですが、胡州造兵工廠の強装弾が最適ですかね」
そう言うとまっすぐ歩いてきたキムは手馴れた調子で七輪の上に次々と肉をのせていく。
「今度は誰の拳銃、見繕ってるんだ?」
かなめは明らかに先ほどの愛云々の話をごまかそうとしている。そんな姪の姿を見ながら嵯峨は机の上から一丁の拳銃を取り上げた。
嵯峨の手には見かけない大型拳銃が握られている。
「ルガー?」
その特徴的なトルグアクションにかなめは視線を奪われる。
「んなもんあるなら俺のコレクションにするよ。こいつはモーゼル・モデル・パラベラム。昔、オーストリアの伍長殿の起こしたどんぱちが終わってから作られたリバイバルバージョンだ。P08程じゃ無いがガンショーとかでは、結構、良い値がつくんだぜ」
嵯峨はそう言うと素早くマガジンを抜いた。
「こりゃあずいぶん趣味的なチョイスじゃねえか。そうか、神前の豆鉄砲と交換するのか?」
誠は射撃がまるで下手糞だった。一般的な軍用拳銃ならば初弾はまだしも、二発目以降はどこにあたるか本人にもわからない。そんな彼の為に嵯峨はお守り程度の威力しかない22口径のルガーマーク2を与えていた。
しかしそれはさすがにやりすぎだとかなめもカウラも思っていた。その為に誠でも二発目以降が当たりそうで威力のある弾丸を使用する銃を嵯峨は探していた。
かなめは目の前の古めかしい拳銃に手を伸ばした。全員が肉から彼女の手の動きに目を向けた。かなめはグリップを握りこんだ後、何度か安全装置をいじる。
「なんだよ、じろじろ見やがって。オメエも持ってみるか?」
そう言うと肉を噛んでいたカウラに銃を手渡す。彼女も何度か手にした銃の薬室を開いては覗き込んでいる。
「あと二、三マガジン撃ってから調整するからな」
そう言いながら嵯峨は再び皿から牛タンを七輪の上の網に載せる。いつの間にか誠の隣に座っていたアイシャも黙って彼が載せた肉を素早く取り上げて焼き始めた。
「グリップはウォールナットのスムースですか?」
カウラから渡された拳銃のグリップを撫でながらパーラがキムに尋ねた。滑り止めの無いオイルで仕上げたグリップがつややかにパーラの手の中で滑っている。
「俺はチェッカーの入った奴が好みなんだけど、オリジナルが良いって隊長が言うんでね。撃ってみて問題があるようなら交換するけど」
そう言うとキムは半焼きの肉を口に放り込む。
「拳銃談義はそれくらいにして、隊長の殿上会出席のための留守の勤務のシフトは……」
アイシャのその言葉に明華が黙って手を上げる。
「それより私の知り合いに新しい職場を見たいという奇特な人が来るけどそちらの対応は……」
明華は笑顔をかなめに向ける。明らかに気分を害したとでも言うように、かなめはパーラの焼いていた肉を奪い取って口に入れる。情けない顔をするパーラに、明華が気を利かせて自分の焼いていた肉を渡した。
「どっちも了解しているよ。シフトはこれが終わったら全員の端末に流す。そして明華の件は俺のところにも連絡が着たから好きにしろって言っといた」
明華が怖くて嵯峨は渋々麦茶を飲んでいた。
「いい匂いがするんだな」
そこに居たのは幼い容貌のランだった。突然のランの登場にかなめとアイシャは驚いた表情を浮かべていた。
「ご苦労さん。お前も食っていけよ」
渡された書類を執務机に投げた嵯峨が声をかける。
「飯は食いました。それにアタシの本異動の歓迎会はあまさき屋でやるんですよね?一応予約はしておいたけど」
それだけ言うとランはそのまま出て行こうとする。
「さてと、ランが来たってことは第二小隊の三号機も到着したってことね。それじゃあ私も仕事に行かなきゃね」
そう言って明華が立ち上がる。彼女が差し出した皿をアイシャは気を利かせて受け取る。
「もう終わり?」
「そうだよ。クラウゼ、片付け手伝ってくれるか?」
そう言いながら嵯峨は肉の乗ったトレーにラップをかぶせる。アイシャはそのまま立ち上がると、パーラとエダ、それにキムに目で合図をする。
「それじゃあ隊長。報告書がありますので失礼します!」
アイシャはそのまま引きとめようと手を上げる嵯峨を残して部屋を出て行った。サラとパーラ、キムにエダもそれに付き従うようにしてそそくさと隊長室を後にした。
「それじゃかなめ坊、ベルガー頼むわ」
逃げられないように二人の腕をがっちり掴んで嵯峨がそう言った。見詰め合うかなめとカウラだが、いつものことだと気付いてあきらめて二人は嵯峨達の皿を集め始めた。
「僕も手伝いますよ」
誠はそう言って慣れた調子で肉の横に置かれたラップを切って残りの牛タンを包んでいく。
「ずいぶんと手馴れてるな」
「ええ、学生時代に焼き肉屋でバイトをしてたんで」
誠の言葉にかなめとカウラはうなづきながらそれぞれに皿を片付けていった。
「失礼します!」
そう言って入ってきたのはアイシャと仲間達。運用艦『高雄』の管制官、パーラ・ラビロフ中尉とアイシャの副長就任で正操舵長に出世したエダ・ラクール少尉と、なぜか居る技術部火器整備担当のキム・ジュンヒ少尉だった。そして当然のように皿と箸を持って入ってくる。
「なんであんた等が来るのよ?」
肉をかみ締めながら明華があからさまに嫌な顔をする。
「ああ、キムは俺が呼んだ。どうだい?やっぱりファクトリーロードのカートリッジは相性悪りいか?」
嵯峨は立ち上がると、執務机の後ろから別の七輪を取り出す。中の炭は十分におきていて真っ赤に網を載せられた網を熱し続けていた。。
「ああ、これはどうも……まあ弾については何社か試したんですが、胡州造兵工廠の強装弾が最適ですかね」
そう言うとまっすぐ歩いてきたキムは手馴れた調子で七輪の上に次々と肉をのせていく。
「今度は誰の拳銃、見繕ってるんだ?」
かなめは明らかに先ほどの愛云々の話をごまかそうとしている。そんな姪の姿を見ながら嵯峨は机の上から一丁の拳銃を取り上げた。
嵯峨の手には見かけない大型拳銃が握られている。
「ルガー?」
その特徴的なトルグアクションにかなめは視線を奪われる。
「んなもんあるなら俺のコレクションにするよ。こいつはモーゼル・モデル・パラベラム。昔、オーストリアの伍長殿の起こしたどんぱちが終わってから作られたリバイバルバージョンだ。P08程じゃ無いがガンショーとかでは、結構、良い値がつくんだぜ」
嵯峨はそう言うと素早くマガジンを抜いた。
「こりゃあずいぶん趣味的なチョイスじゃねえか。そうか、神前の豆鉄砲と交換するのか?」
誠は射撃がまるで下手糞だった。一般的な軍用拳銃ならば初弾はまだしも、二発目以降はどこにあたるか本人にもわからない。そんな彼の為に嵯峨はお守り程度の威力しかない22口径のルガーマーク2を与えていた。
しかしそれはさすがにやりすぎだとかなめもカウラも思っていた。その為に誠でも二発目以降が当たりそうで威力のある弾丸を使用する銃を嵯峨は探していた。
かなめは目の前の古めかしい拳銃に手を伸ばした。全員が肉から彼女の手の動きに目を向けた。かなめはグリップを握りこんだ後、何度か安全装置をいじる。
「なんだよ、じろじろ見やがって。オメエも持ってみるか?」
そう言うと肉を噛んでいたカウラに銃を手渡す。彼女も何度か手にした銃の薬室を開いては覗き込んでいる。
「あと二、三マガジン撃ってから調整するからな」
そう言いながら嵯峨は再び皿から牛タンを七輪の上の網に載せる。いつの間にか誠の隣に座っていたアイシャも黙って彼が載せた肉を素早く取り上げて焼き始めた。
「グリップはウォールナットのスムースですか?」
カウラから渡された拳銃のグリップを撫でながらパーラがキムに尋ねた。滑り止めの無いオイルで仕上げたグリップがつややかにパーラの手の中で滑っている。
「俺はチェッカーの入った奴が好みなんだけど、オリジナルが良いって隊長が言うんでね。撃ってみて問題があるようなら交換するけど」
そう言うとキムは半焼きの肉を口に放り込む。
「拳銃談義はそれくらいにして、隊長の殿上会出席のための留守の勤務のシフトは……」
アイシャのその言葉に明華が黙って手を上げる。
「それより私の知り合いに新しい職場を見たいという奇特な人が来るけどそちらの対応は……」
明華は笑顔をかなめに向ける。明らかに気分を害したとでも言うように、かなめはパーラの焼いていた肉を奪い取って口に入れる。情けない顔をするパーラに、明華が気を利かせて自分の焼いていた肉を渡した。
「どっちも了解しているよ。シフトはこれが終わったら全員の端末に流す。そして明華の件は俺のところにも連絡が着たから好きにしろって言っといた」
明華が怖くて嵯峨は渋々麦茶を飲んでいた。
「いい匂いがするんだな」
そこに居たのは幼い容貌のランだった。突然のランの登場にかなめとアイシャは驚いた表情を浮かべていた。
「ご苦労さん。お前も食っていけよ」
渡された書類を執務机に投げた嵯峨が声をかける。
「飯は食いました。それにアタシの本異動の歓迎会はあまさき屋でやるんですよね?一応予約はしておいたけど」
それだけ言うとランはそのまま出て行こうとする。
「さてと、ランが来たってことは第二小隊の三号機も到着したってことね。それじゃあ私も仕事に行かなきゃね」
そう言って明華が立ち上がる。彼女が差し出した皿をアイシャは気を利かせて受け取る。
「もう終わり?」
「そうだよ。クラウゼ、片付け手伝ってくれるか?」
そう言いながら嵯峨は肉の乗ったトレーにラップをかぶせる。アイシャはそのまま立ち上がると、パーラとエダ、それにキムに目で合図をする。
「それじゃあ隊長。報告書がありますので失礼します!」
アイシャはそのまま引きとめようと手を上げる嵯峨を残して部屋を出て行った。サラとパーラ、キムにエダもそれに付き従うようにしてそそくさと隊長室を後にした。
「それじゃかなめ坊、ベルガー頼むわ」
逃げられないように二人の腕をがっちり掴んで嵯峨がそう言った。見詰め合うかなめとカウラだが、いつものことだと気付いてあきらめて二人は嵯峨達の皿を集め始めた。
「僕も手伝いますよ」
誠はそう言って慣れた調子で肉の横に置かれたラップを切って残りの牛タンを包んでいく。
「ずいぶんと手馴れてるな」
「ええ、学生時代に焼き肉屋でバイトをしてたんで」
誠の言葉にかなめとカウラはうなづきながらそれぞれに皿を片付けていった。
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