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第11章 バーベキュー

楽しいお料理

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「おい!神前!」 

 さすがに同じメンバーでの遊びにも飽きたのか波打ち際から引き上げてきた島田が、置いてあったバッグからスポーツ飲料のボトルを取り出した。

「ああ、すいませんね気が利かなくて」 

 起き上がろうとした誠ににやけた笑みを浮かべながらそのまま座っていろと島田が手で合図する。

「こちらこそ、二人の大切な時間を邪魔するようで悪いねえ」 

 誠とかなめを島田は見比べる。かなめは相手にするのもわずらわしいと言うようにサングラスをかけなおして空を見上げている。 

「ずるいなあ。アイシャちゃん達が働いてるときに二人でまったりしちゃって」 

 そう言ってサラが誠をにらみつける。 

「じゃあお前等、荷物番変わってもらおうか?」 

 そう言うとかなめは立ち上がった。

「じゃあ神前。お姉さん達の邪魔でもしにいくか」 

 かなめはそのまま当然と言うように誠を立たせるとバーベキュー場の方に歩き出す。

「ああ、サラ。そこのアホと一緒にちゃんと荷物を見張ってろよ。ただ何かなくなったら後でぼこぼこにするからな」

 かなめはちゃんと捨て台詞を忘れない。誠もかなめに付いて歩く。

『正人が余計なこと言うから!』 

『島田君のせいじゃないわよ。余分なこと言ったのはサラじゃないの!』 

 サラとパーラの声が背中で響く。

「良いんですか?西園寺さん」 

「良いんじゃねえの?島田の奴はそれはそれで楽しそうだし」 

 そう言うとかなめはサングラスを額に載せて歩き出した。

「かなめちゃん達!到着!」 

 スクール水着姿のシャムが叫ぶ。誠は何度見ても彼女が小学生低学年ではないことが不思議に思えて仕方なかった。

「肉あるか?肉!」 

 いつも通りの姿に戻ったかなめは、すばやくテーブルから箸をつかんで、すぐにアイシャが焼いている牛肉に向かって突進する。 

「みっともないわよ、かなめちゃん。誠ちゃん!お姉さんのところの焼きそば出来てるから……食べたら?」 

 アイシャにそう言われてテーブルの上の紙皿を取ると奥の鉄板の上で焦げないように脇にそばを移しているリアナの隣に立った。

「じゃんじゃん食べてね。まだ材料は一杯あるから」 

 リアナはいつものほんわかした笑みを浮かべながら誠の皿に焼きそばを盛り分ける。

「お姉さん、ピーマンは避けてやってください」 

 串焼きの肉にタレを塗りながら遠火であぶっているカウラがそう言った。

「神前君もピーマン苦手なの?」 

「ピーマン好きな奴にろくな奴はいねえからな!」 

 かなめの冗談がカウラを刺激する。

「西園寺。それは私へのあてつけか?」 

 カウラのその言葉に、かなめがいつもの挑発的な視線を飛ばす。

「誠ちゃん!お肉持ってきたわよ。食べる?」 

「はあ、どうも」 

 アイシャが当てつけのように山盛りの肉を持ってきた。誠はさっと目配りをする。その様子をかなめが当然のようににらみつけている。カウラは寒々とした視線を投げてくる。 

「そう言えば島田君達はどうしたの?」 

 そんな状況を変えてくれたリアナの一言に誠は心の奥で感謝した。

「ああ、あいつ等なら荷物番してるぜ」 

 アイシャから皿を奪い取ったかなめが肉を食べながらそう言った。

「もう食べごろなのに。誰か代わってあげられないの?もう用意できてるんだから」 

 春子がそう言うと、きれいにトレーの上に食材を並べた物を人数分作っていた。

「じゃあシャムが代わりに番してるよ!」 

「師匠!アタシも!」 

 シャムと小夏が元気に駆けていく。

「気楽だねえ、あいつは」 

 かなめはビールの缶を開けた。

「それがシャムちゃんの凄いところよ、ああこれおいしいわ」 

 つまみ食いをしながらリアナがそう言った。

「カウラ、その肉の塊よこせ!」 

 突然のかなめの言葉にめんどくさそうに振り向くカウラ。

「全部食べるんじゃないぞ」 

 かなめの口元の下品な笑みを見て、カウラはタレをつけながら焼いている肉の塊を遠ざける。

「呼ばれました!」 

「アイシャ!ごめんねー。ちょっといろいろあって」 

 島田とサラが一番に飛び込んでくる。

「島田さん達、こっちにとってあるわよ」

 春子が鉄板の端にある肉と野菜の山を島田達に勧める。 

「女将さんすいません。ジュン君とエダ、これだって」 

 パーラがキムとエダにトレーを渡す。

「こりゃ旨そうだ」

 キムがトレーの上の肉に箸を伸ばす。隣ではエダがそれを眺めて頷いていた。

「さあ食え食え!」

 いかにも自分が作ったかのようにかなめが笑顔で肉を二人に勧めた。

「自分は何もしなかったくせに……」

「カウラ。何か言ったか?」

「いや別に……」

 いつも部隊で繰り広げられているかなめとカウラのやり取りがここでも繰り広げられるのを見て誠はただ苦笑いを浮かべるだけだった。
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