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第10章 いざ海へ

モテ要素

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「神前君!」 

 名前を呼ばれて振り向けば、そこにはカキ氷を食べているリアナの姿があった。隣では健一がリアナと同じ苺金時を、カウラはメロン、アイシャはブルーハワイを食べていた。

「見てました?」 

「人気者だな」 

「これなんてエロゲ?」 

 カウラ、アイシャは冷たく誠を一瞥すると、カキ氷を食べ続ける。

「違うんです!」 

 誠は叫ぶ。

『何が?』 

 夫婦でシンクロして鈴木夫妻が誠を見つめてくる。

「言い訳はいい」 

 冷静に答えるカウラ。こめかみの辺りに青い筋が浮かんでいてもおかしくないような形相だった。 

「誠ちゃんはこれからフラグクラッシャーと呼びましょうよ」 

 アイシャが明るく話す分だけ恐ろしさが増す。 

「だから!」 

「だからなんだよ」 

 背中からの声に誠が振り向くとその先には誠が選んだことになっているきわどいピンク色の水着を着たかなめが立っていた。

「西園寺さん、いつからいました?」 

 自分で言葉を確かめながら誠が言葉を発する。額を走る汗は暑さがもたらすものでは無かった。

「オメエがあのおっぱいお化けと腕組んで歩いてる所くらいからか」 

 誠は助けを求めるような視線をカウラ達に投げる。四人とも誠がそこにいることを無視してカキ氷を食べている。

「怒ってますか?」 

 誠は恐る恐るたずねる。

「いや、別に怒る必要のあることなのか?所詮お前はアタシの部下の一人に過ぎないし」 

 明らかに感情のこもっていない言葉に誠はうなだれた。そんなかなめを見つめる誠は手のひらに汗がにじんでくるのを感じていた。

「言っちゃったー。ご愁傷様ねえ誠ちゃん」 

 わざと誠達に聞こえるようにアイシャが大声で話す。かなめがそのまま無視して誠から離れようとしたところで、突然誠の視界からかなめが消えた。

「スーパーキックだ!見たか!悪者め!」 

 代わってそこにはシャムがいた。誠が視線を落とすと、顔面から砂に突っ込んだかなめの姿が見える。

「外道!参ったか!」 

 小夏の叫び声。しかし、誠にとってはシャムと小夏の着ている水着が衝撃的であった。

「シャム先輩。その水着は……」 

 思考停止。予想はしていたが二人を見て誠の頭は完全に止まっていた。

「そう!海と言えば、スクール水着!当然胸には白い名前コーナーをつけて、当然黄色いキャップは忘れずに!」 

 そう言って倒れているかなめの上で胸を張るポーズのシャム。

「神前の兄貴!アタシもおそろいですよ!」 

 元気に小夏はシャムの言葉を引き継ぐ。

『3-2 なんばるげにあ』、『2-3 家村』。胸に踊る手書きのネーム。

「やっぱりシャム先輩が年上の設定なんですね」 

 あきれ果てていた誠だが、とりあえずそう言ってみる。

「違うよ!誠ちゃん。アタシは小学生の……」 

 シャムの姿がまた消えた。そこに立っていたのは砂にまみれたかなめだった。

「いつまで乗ってんだ!このアホ餓鬼が!」 

 跳ね飛ばされたシャムだが、受身を取ってすばやく体勢を整える。かなめは顔から胸にかけて付いた砂を払いながら、シャムをにらみつけた。

「人に砂浜とキスさせたんだ!ただで帰れると思うなよ」 

 そう言ってかなめは指を鳴らしてじりじりとシャム達に歩み寄る。

「師匠!どうしましょう。外道はまだ健在ですよ」 

「そう言う時はね!小夏」 

 シャムは浮き輪を手にじっとかなめと相対する。

「逃げるのよ!」 

 ちょこまかと人ごみの中に逃げ込んでいく二人。

「待てよ!こら!」 

 条件反射のようにかなめはそれを追い始める。誠はとりあえずかなめの関心が自分からそれたことに胸をなでおろすと、海の家の更衣室に向かった。
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