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第10章 いざ海へ

おおきなおっぱい

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「外人だ!」 

 とつぜんのシャムの甲高い叫び声で、一同は入り口のほうを振り向いた。麦藁帽子、戦隊ヒーローの絵柄がプリントされた子供用のタンクトップを着てデニムのスカートを身にまとっている。その隣では涼しげな藍色の小袖を纏った家村春子と白いワンピースに麦わら帽子の娘の家村小夏の姿があった。

「凄いよ!外人さんだよ!ほら金髪の人!」 

「おい、シャム。この眼鏡が外人ならオメエは宇宙人じゃねえか!」 

 かなめは冷たくはき捨てる。誠もかなめの言う通りなので苦笑いを浮かべるしかない。

「金髪ならマリアお姉さんとかエンゲルバーグとか居るでしょz?」 

「でも私、この人たち会ったことないよ?」 

 アイシャのその言葉も、シャムには届いていない。

「もしかして……あなたがあの遼南青銅騎士団団長のナンバルゲニア中尉ですか!」 

 そう叫んだのはレベッカだった。彼女はそのままシャムのところまで近づくと。頭をなで始めた。

「この人、日本語うまいね」 

「生まれが長崎なんですよ私」 

 全員がこの奇妙な組み合わせを眺めていた。

「生まれは長崎っと。それでスリーサイズは?」 

 シャムを押しのけていつの間にか隣に立っていた島田とキムを見てレベッカは思わず飛びのいた。

「島田ちゃん。レディーにつまらない質問するとサラに言いつけるわよ」 

「それは勘弁してください。つい出来心で……」 

 アイシャの冷たい視線を浴びて二人は引き下がる。島田がいかにも残念そうな顔をしている。それに対して再びレベッカの前に立ったシャムは興味深そうに金髪のレベッカを観察していた。

「でも本当におっぱい大きいね!」 

 そう言うと手を伸ばそうとするシャムだが、かなめがその手を叩き落とす。

「シャム、餓鬼かテメエは。三馬鹿を喜ばすようなこと言うんじゃねえ!それよりオメエさんら、ただ顔見せに来たってわけか?ご苦労なこった」 

 せせら笑うようなかなめのいつもの表情にもロナルドはうろたえることもなかった。

「まあ嵯峨大佐にとりあえず会ってくれと言われましてね。もし馬が合わないようならそのまま遼南の海軍基地に帰ってもかまわないと言うことでしたが」 

 嵯峨らしい配慮である。誠はあの間抜けな顔をした部隊長がめんどくさそうに画像通信をしている場面を思い浮かべた。

「それでどうするつもりだ?帰るなら早いほうがいいぞ」 

 かなめがサングラスをずらして上目遣いに誠より一回り大きく見えるロナルドを見上げた。

「いえいえ、帰るなんて。なかなかいい環境のようじゃないですか。それに海軍で事前に聞いていたほど、お馬鹿な集まりじゃないと分かりましたし」 

 そんなロナルドの言葉にかなめは複雑な顔で黙り込む。

「そうよねえ、馬鹿なのはこの三人とかなめちゃんだけだもんね」 

 アイシャはそう言って島田、キム、誠を眺めている。

「アイシャ……本当にいっぺん死んで見るか?」 

 かなめがこぶしを握り締めてアイシャをにらみつける。アイシャはいつものようにすばやくかなめから遠ざかると誠の陰に隠れてかなめを覗き見るふりをした。

「ロナルド・スミス・Jr特務大尉……」 

「ロナルドでいいですよ。カウラさん」 

 穏やかにロナルドからファーストネームで呼ばれたカウラが顔を赤くして下を向いた。ロナルドの余裕のある態度。それを見てカウラも気丈に長身の彼を見上げてみせる。

「ああそうだロナルド、そろそろ出かけないと出頭予定時刻に遅れるぞ!」 

 頑丈そうな腕で岡部がロナルドの肩をたたく。ロナルドは髪を両手で撫で付けた後静かに手を振る。

「そうだな。では本部でお会いしましょう」 

 ロナルドはそう言うと、軽く敬礼をして部下達を連れてロビーへと急ぐ。

「隊の形ができたってことか」

「そうか?あのラティーナにしてもただ馬鹿が増えたとしか思えねえけど」

 カウラの言葉にかなめはめんどくさそうにそう答えてロナルド達が去っていったロビーへと歩いていく。

「置いてくぞ!」

 振り返ったかなめの言葉に一同はようやく我に返ってロビーへ続く廊下を進んだ。
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