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第二十五章 どんちゃん騒ぎ

ついてきた外野

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 エレベータが開くとそこにはかなめ、アイシャ、サラ、島田、そしてマリアが乗っていた。

「あのー。何してるんですか?」 

 少しばかり呆れて誠は口走っていた。

「アタシは……その、なんだ、何と言ったらいいか……アイシャが暴走しないようについてきたんだ」 

 かなめは照れるようにうつむいて言葉を搾り出す。

「なんか吉田少佐が言うにはエロスな展開になってるって事だったけど、違うみたいね」 

 アイシャがそう言うとかなめがその顔を睨みつける。サラと島田はなぜか二人してシャム特製の、原材料不明のジャーキーを食べながら缶ビールを飲んでいる。

「吉田少佐が覗いてたんですか?」 

「まあこの船の監視カメラはすべて吉田の脳につながってるから変なことしないほうが身のためだな」 

 マリアは久々に十分に酒を飲んで満足そうな顔をしていた。

「そう言えばカウラ大丈夫?」 

 サラがはじめてカウラを気遣うと言う真っ当な発言をした。

「馬鹿じゃねえの?アイツのは演技だよ」 

 そう言うとかなめはラム酒瓶をラッパ飲みする。

「知ってたんですか?」 

 一口酒を飲み、ようやく落ち着いたかなめに誠は尋ねる。

「まあな。あのくらいで潰れるタマじゃねえよカウラは。それに吉田の馬鹿の覗き趣味もわかってるはずだ。どうせ人畜無害な世間話でもしてたんだろ」 

「その割にはアタシやマリアを殆ど拉致みたいにして引っ張ってきたじゃない」 

「アイシャ!外に出て真空遊泳でもして来い!もちろん生身でな!」 

「助けて!先生!」 

 機会があるとまとわりついてくると言うアイシャの行動パターンも読めてきたが、一応上官であると言うところから黙って誠はアイシャに彼女に抱きつかれた。

 顔を上げればかなめが今にも襲い掛かってきそうな顔をして肩を震わせている。

「でもなあ、神前」 

 缶ビールを飲み干した島田が心配そうに呟く。

「あの吉田少佐の事だ、画像加工して菰田のアホを焚き付けるかもしれないな」 

「それ、ありそうね。私もそれもらおうかしら。いいネタになるかもしれないし」 

「アイシャやめておけ。私から吉田には伝えておくから」 

 にこやかにしている割に、マリアの言葉が何となく恐ろしく感じて全員が吉田のこれから起きるだろう不幸を哀れんでいた。

「カウラちゃん大丈夫だった?」 

 ハンガーのある階で止まったエレベータが開くと、シャムとパーラが待ち構えていた。

「ああ、アイツはそう簡単にくたばらねえよ。シャムまだ肉あるか?」 

 そう言いながら、一向に誠から離れようとしないアイシャをかなめが引き剥がした。

「何かが足りないな」 

 かなめは誠からアイシャを引き剥がしてそう言った。

「何が足りないの?」 

 急に後ろで声を聞いてかなめは明華に気がついた。

「またあんた仕掛けをして神前を潰す算段でもしてるんでしょ?」 

「姐御。酷いですよ!アタシだってそんな何度も同じ事しませんし、明華の姐御がいたら何かしてたらすぐにばれるじゃないですか」 

「それはそうと肉食べないと損よ」 

 そう言うと明華は吉田が一人でなぜか豆腐ばかりを放り込んでいる鍋の方に向かう。

「シャム。どんだけ肉食った?」 

 かなめが恐る恐るそう言うと、シャムは後ろめたそうなしぐさをした。

「無えじゃねえか!シャム!全部喰っちまったのか?」 

「だって煮すぎたら硬くなっちゃうよ!」 

「馬鹿!全部突っ込む必要なんて無いんだよ!こいつの分ぐらい残しておけよ!」 

 親指で誠の事を指差しながらかなめがシャムを怒鳴りつける。

「怒鳴るなよ。おい、俺達そんなに喰わねえから、こっから取れや」 

 嵯峨がそう言うと肉と野菜が半分ぐらい残った皿を指差す。 

「シャム。お前がもってこい」 

「了解!」 

 かなめの一言にシャムはパシリの様に嵯峨から皿を受け取ってくる。

「いいか、シャム。こいつは神前のものだ。お前は余ったのを喰え」 

「うん、わかった!」 

 そう言いながらシャムは誠が具材を入れるのを必要以上に熱心に見つめる。 

「ナンバルゲニア中尉。食べますか?」 

 シャムのその視線に負けて誠はつい口を滑らす。

「駄目だ。こいつは散々食い散らかしてるんだ。全部、神前が喰え」 

 かなめはそう言うと誠と一緒に具材を空の鍋に入れていく。

「私も駄目?」 

 さりげなくアイシャがそう口を挟むが、殺気を帯びたかなめの視線に退散する。

「もう春菊とかはいけるんじゃないか。取ってやろうか?」 

 正直、そんな態度のかなめは信じられなかった。誠はまじまじとかなめの顔を見つめる。

「あのな。お前殆ど喰ってないだろ?」 

 かなめに言われて誠はとりあえず自分の皿を渡す。

「もう肉も行けるだろ」 

 そう言うとかなめはせっせと煮えた具材を誠の皿に盛り分けた。

「じゃあ失礼して。いただきます」 

 誠は肉を拾いポン酢につけて口に入れる。独特の獣臭さの後、濃い肉の味が口に広がる。そして次々と肉を放り込むとさらにその味が口に滞留して気分が晴れるような感覚に襲われた。しかし、その後ろでは西を呼びつけた島田とかなめとサラ、パーラがなにやらひそひそ話を始めていた。とりあえずかなめが怒るだろうと読んで、誠は知らぬふりで鍋に明らかに入れすぎの豆腐をつまんでいた。

「ちょっとしたショーが見れるかもな」 

 同じくなぜか豆腐を突いている吉田がそう誠に呟きかけた。

「ショーですか?」 

 誠がぼんやりと繰り返す。アイシャはと言えばシャムの猫耳を取り外して自分につけたりして遊んでいる。
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