96 / 1,474
第十九章 銘酒一献
戦場の覚悟を語りつつ
しおりを挟む
シミュレーターでの訓練を終えた誠は、一人、自分の私室に向かっていた。角を曲がった誠の部屋の前で一人の男が酒瓶を手に誠を待っていた。
「待ってたぜ……久しぶりに差しで飲もうや」
先回りして待っていた嵯峨は、また普段のダルめの雰囲気を背負いながら手を振った。よれよれの作業服に無精ひげと言ういつものだらしない姿に、誠は苦笑するしかなかった。
「とりあえず入りましょう」
誠はそれだけ言って、指紋認証でドアのキーを解除して私室に入り込んだ。
「結構片付いてるじゃないか」
ただ置くべきものがないだけの部屋を嵯峨はそう評した。そしてそのまま狭い個室の奥に置かれた事務用の椅子に腰を掛けた。
「ああ、コップはあるんだな。俺も念のため持ってきたんだけど」
手にした二つのグラスを出すと、嵯峨は作業用の机の上にコップを並べて酒を注ぎ始めた。誠はベッドに腰をかけその様子を見ていた。
「まあ飲めや」
そう言うと嵯峨は注ぎ終わったコップを誠に渡し、自分もそれを一舐めしたあと悠然と部屋の中を見回した。
「正直どうだい?初の実戦の前の気持ちは」
酒の味の余韻に浸るように、眼を細めながら嵯峨はそう切り出す。
「よく分からないです。これから自分の手で何人かの人を殺す事になるだろうと言う事はこれまで考えた事ありませんから」
「そうか」
それだけだった。嵯峨は特に何の感想も無いとでも言うように静かにうなづくと、再び酒瓶からコップに酒を注ぐ。
「確かにそうだな。脱出装置なんていうものは、所詮、お守りくらいのもんだと思っていたほうがいい。熱核反応式のエンジン搭載の火龍なんかじゃあ、撃墜されればエンジンの爆縮に巻き込まれてまず助からんだろうな」
嵯峨はそう言いながら今度は一息で注いだ酒をのどの奥に流し込んだ。
「ちょっと不安になったみたいだな」
嵯峨はコップに酒を注ぎながらそう言った。表情は特にいつもと変わらない。この部隊に配属後、彼の二つ名「人斬り新三」のことは知ったので、彼が誠に想像する事ができないような修羅場をくぐっている事はわかっていた。誠が今、同じ道を歩き出そうとしているのを見ても。特に感傷を抱くような嵯峨ではなかった。
『人間慣れてしまうものだ』
マリアの言葉が頭から離れない。
嵯峨は明らかに人の死と言うものに慣れている側の人間だ。こうして戦地の目の前で酒を飲む姿も、あまさき屋でのそれと大差ないように誠には見えた。
「いつもと違って進まないじゃないか?そうだ。シャムが作ってる猪の干し肉があるぞ。結構、癖はあるが酒にはあう」
嵯峨はポケットから薄くスライスした猪肉を干したと思われるものを差し出した。
「ちょっといいですか?」
誠はそう言うと一切れ千切り、軽く匂いをかいだ。野趣溢れるというのはこのことを言うんだろう、野生動物特有の臭みが鼻を襲う。
「それと柿の種持ってきたけど食うか?」
今度は右の胸ポケットからビニールに入った柿の種を取り出す。
「俺は制服とか嫌いなんだけどさ、こう言う時はポケットが多い軍服が便利に感じるね」
嵯峨はそう言って取り出した柿の種のビニールを破ると誠に手渡す。手にしながら食べるかどうか躊躇していた干し肉を嵯峨に手渡して柿の種を受け取った。
「いきなりだが、こう言う実力行使部隊には隊長には多くの権限を与える事が多い、それはなぜだと思う?」
いつものいたずらっ子のような自虐的な笑みが嵯峨の顔の口元に光臨する。誠は柿の種を一粒口に放り込んで、コップ酒を傾けた。
「状況の変化に対応するためには、現状を一番理解している指揮官に裁量を与える必要があるからですか?」
誠が思いついた答えに嵯峨は予想がついていたというようににんまりと笑った。
「そりゃあ後付けの理由だ。実際、意外に人間の作る組織ってのは不安定なもんだ。それに常に指揮官が現状を把握できるとは限らん。むしろ情報が多すぎて状況を把握できない指揮官が殆どだな。俺もそう言う状況にゃあずいぶん出くわしたもんだ」
そう言って嵯峨は喉を潤すように酒を口に流し込んだ。
「それじゃあ……作戦の成否や違法性に関して責任を取らせるためですか?」
投げやりに誠が言った言葉を、嵯峨は櫛がしばらく入っていないと言うような髪をかき回しながら受け取った。
「まあ俺の本職は憲兵隊だからな。まさに責任取らして詰め腹切らせるのが仕事だったようなものだ。戦場じゃ隊員の指揮命令系統下での全ての行動は指揮官の責となる」
嵯峨はまたゆっくりと酒を口に運ぶ。
「つまりだ、お前さんは命令違反をしない限り、敵を殺したのはお前さんではなく俺と言うことだ」
いくつかその言葉に対して言い返したいこともあったが、誠は静かにコップ酒を一口、口に含んだ。
「誠。お前さんがそう簡単に物事を割り切れる人間じゃない事は知っているよ。自分の責任の範疇じゃ無いからと言って、すんなり人を殺せと言う命令に納得できる方がどうかしてる。少なくとも初の出撃の時からそれを覚悟しているなら、他の部隊でも行ってくれと言うのが俺の本音だね」
コップのそこに残った酒をあおると、嵯峨はシャム謹製の干し肉をくわえた。
「そんなものですか?」
「そんなものだよ」
嵯峨はまた静かに三杯目の酒をコップに注いだ。
「待ってたぜ……久しぶりに差しで飲もうや」
先回りして待っていた嵯峨は、また普段のダルめの雰囲気を背負いながら手を振った。よれよれの作業服に無精ひげと言ういつものだらしない姿に、誠は苦笑するしかなかった。
「とりあえず入りましょう」
誠はそれだけ言って、指紋認証でドアのキーを解除して私室に入り込んだ。
「結構片付いてるじゃないか」
ただ置くべきものがないだけの部屋を嵯峨はそう評した。そしてそのまま狭い個室の奥に置かれた事務用の椅子に腰を掛けた。
「ああ、コップはあるんだな。俺も念のため持ってきたんだけど」
手にした二つのグラスを出すと、嵯峨は作業用の机の上にコップを並べて酒を注ぎ始めた。誠はベッドに腰をかけその様子を見ていた。
「まあ飲めや」
そう言うと嵯峨は注ぎ終わったコップを誠に渡し、自分もそれを一舐めしたあと悠然と部屋の中を見回した。
「正直どうだい?初の実戦の前の気持ちは」
酒の味の余韻に浸るように、眼を細めながら嵯峨はそう切り出す。
「よく分からないです。これから自分の手で何人かの人を殺す事になるだろうと言う事はこれまで考えた事ありませんから」
「そうか」
それだけだった。嵯峨は特に何の感想も無いとでも言うように静かにうなづくと、再び酒瓶からコップに酒を注ぐ。
「確かにそうだな。脱出装置なんていうものは、所詮、お守りくらいのもんだと思っていたほうがいい。熱核反応式のエンジン搭載の火龍なんかじゃあ、撃墜されればエンジンの爆縮に巻き込まれてまず助からんだろうな」
嵯峨はそう言いながら今度は一息で注いだ酒をのどの奥に流し込んだ。
「ちょっと不安になったみたいだな」
嵯峨はコップに酒を注ぎながらそう言った。表情は特にいつもと変わらない。この部隊に配属後、彼の二つ名「人斬り新三」のことは知ったので、彼が誠に想像する事ができないような修羅場をくぐっている事はわかっていた。誠が今、同じ道を歩き出そうとしているのを見ても。特に感傷を抱くような嵯峨ではなかった。
『人間慣れてしまうものだ』
マリアの言葉が頭から離れない。
嵯峨は明らかに人の死と言うものに慣れている側の人間だ。こうして戦地の目の前で酒を飲む姿も、あまさき屋でのそれと大差ないように誠には見えた。
「いつもと違って進まないじゃないか?そうだ。シャムが作ってる猪の干し肉があるぞ。結構、癖はあるが酒にはあう」
嵯峨はポケットから薄くスライスした猪肉を干したと思われるものを差し出した。
「ちょっといいですか?」
誠はそう言うと一切れ千切り、軽く匂いをかいだ。野趣溢れるというのはこのことを言うんだろう、野生動物特有の臭みが鼻を襲う。
「それと柿の種持ってきたけど食うか?」
今度は右の胸ポケットからビニールに入った柿の種を取り出す。
「俺は制服とか嫌いなんだけどさ、こう言う時はポケットが多い軍服が便利に感じるね」
嵯峨はそう言って取り出した柿の種のビニールを破ると誠に手渡す。手にしながら食べるかどうか躊躇していた干し肉を嵯峨に手渡して柿の種を受け取った。
「いきなりだが、こう言う実力行使部隊には隊長には多くの権限を与える事が多い、それはなぜだと思う?」
いつものいたずらっ子のような自虐的な笑みが嵯峨の顔の口元に光臨する。誠は柿の種を一粒口に放り込んで、コップ酒を傾けた。
「状況の変化に対応するためには、現状を一番理解している指揮官に裁量を与える必要があるからですか?」
誠が思いついた答えに嵯峨は予想がついていたというようににんまりと笑った。
「そりゃあ後付けの理由だ。実際、意外に人間の作る組織ってのは不安定なもんだ。それに常に指揮官が現状を把握できるとは限らん。むしろ情報が多すぎて状況を把握できない指揮官が殆どだな。俺もそう言う状況にゃあずいぶん出くわしたもんだ」
そう言って嵯峨は喉を潤すように酒を口に流し込んだ。
「それじゃあ……作戦の成否や違法性に関して責任を取らせるためですか?」
投げやりに誠が言った言葉を、嵯峨は櫛がしばらく入っていないと言うような髪をかき回しながら受け取った。
「まあ俺の本職は憲兵隊だからな。まさに責任取らして詰め腹切らせるのが仕事だったようなものだ。戦場じゃ隊員の指揮命令系統下での全ての行動は指揮官の責となる」
嵯峨はまたゆっくりと酒を口に運ぶ。
「つまりだ、お前さんは命令違反をしない限り、敵を殺したのはお前さんではなく俺と言うことだ」
いくつかその言葉に対して言い返したいこともあったが、誠は静かにコップ酒を一口、口に含んだ。
「誠。お前さんがそう簡単に物事を割り切れる人間じゃない事は知っているよ。自分の責任の範疇じゃ無いからと言って、すんなり人を殺せと言う命令に納得できる方がどうかしてる。少なくとも初の出撃の時からそれを覚悟しているなら、他の部隊でも行ってくれと言うのが俺の本音だね」
コップのそこに残った酒をあおると、嵯峨はシャム謹製の干し肉をくわえた。
「そんなものですか?」
「そんなものだよ」
嵯峨はまた静かに三杯目の酒をコップに注いだ。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第三部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。
一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。
その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。
この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。
そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。
『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。
誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる