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第十一章 司法局実働部隊運用艦『高雄』
画材と私室
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「ずいぶん深刻な状況なんですねえ」
誠は吉田とかなめの話を頭の中で要約しながら感想を搾り出した。
「うちは司法執行機関だ。戦争をするわけじゃない。近藤一派に逮捕命令があれば淡々とそれをこなすだけだ」
カウラはそう言いながら通路をまっすぐ歩き続ける。
「カウラちゃんはずいぶんと淡白なのね……誠ちゃんはこれからどうする気?」
アイシャはカウラの言葉にわざとらしく驚いた風を装いながら誠に目を移した。
「自分はとりあえず荷物の整理をします」
「私も手伝うわよ。先生の部屋については私も興味あるし」
アイシャの顔にいたずらっ子のような笑みが浮かんだ。誠は断っても無駄だろうことを悟って歩き始めた。汎用戦闘艦は幹部候補研修で何度か乗ったことがあるが、『高雄』の艦内は明らかにそれまで乗った船とは違っていた。嵯峨があれほど得意げだったのもこの艦の居住区画を50メートル歩けば理解できることだった。
第一、通路が非常に広く明るい。対消滅式エンジンの膨大な出力があるからといって、明らかにそれは実用以上の明るさに感じた。
それに食堂の隣が道場、そしてその隣にフリースペースとも言える卓球台と自動麻雀卓を置いた娯楽室のようなものまである。
「やっぱり変でしょ?この船の内装。全部隊長が自腹で改修資金出した施設だから。おかげで定員が1200名から360名に減っちゃったけど」
「それってまずいんじゃないですか?」
技術下士官達が出航までの待ち時間を潰しているのか、ドアを開けたままの部屋が多い下士官用と思われる区画を進む。さすがにここまでくるとどの部屋も狭苦しく感じる。ちらちら覗き込んでいる誠に配慮したように歩みを緩めたアイシャは言葉を続けた。
「うちの持ち味は少数精鋭なのよ。実際、艦内のシステム管理要員は吉田少佐だけで十分だし、マリアのお姐さんの警備部が白兵戦闘時には威力を発揮するから、別にそんなにたくさんの人間は要らないの。じゃあこのエレベーターで……」
アイシャに続いて誠はエレベーターに乗り込む。
「しかし長期待機任務の時はどうするんですか?吉田少佐一人じゃあ」
「部隊編成自体、長期間の戦闘を予測してないのよ。第一、今のところアサルト・モジュール二個小隊しか抱えていない司法局実働部隊に大規模戦闘時に何かできるわけ無いでしょ?それにうちは軍隊じゃなくあくまで司法機関の機動部隊という名目なんだから、そんなことまで考える必要なんてないわね。着いたわよ」
アイシャは開いた扉からパイロット用の個室のある区画に向かって歩き出した。誠は居住区の一番奥の室に通された。個室である、そして広い。正直、彼の下士官用寮の部屋より明らかに広い。そこには誠の着替えなどの荷物を入れたバッグがベッドの上に乗せられていた。
「ずいぶん少ないわね。せっかくいろいろとグッズ見せてもらおうと思ったのに……。これは……ふーん。画材なんだ」
アイシャはそう言うと警備隊員が運んでおいてくれたダンボールを一つを覗き込んだ。誠はベッドの上の着替えなどをバッグから取り出しロッカーに詰め込んだ。それほど物はない。手間がかかるわけでもない。
「ええ、帰りに宇宙でも描こうと思って……」
「宇宙?何にもないだろ?」
カウラのつぶやきに手にスケッチブックを持ってめくっていたアイシャが噴き出す。
「あのねえ、カウラちゃん。宇宙はロマンなのよ。絵師なら描きたくもなるわよねえ」
アイシャの言葉に誠は頭を掻きながらうなづいた。
「そんなもんなのか……」
カウラがどうも納得しきれていない表情を浮かべるのを見ながら誠は着替えなどを片付けることにした。
誠は吉田とかなめの話を頭の中で要約しながら感想を搾り出した。
「うちは司法執行機関だ。戦争をするわけじゃない。近藤一派に逮捕命令があれば淡々とそれをこなすだけだ」
カウラはそう言いながら通路をまっすぐ歩き続ける。
「カウラちゃんはずいぶんと淡白なのね……誠ちゃんはこれからどうする気?」
アイシャはカウラの言葉にわざとらしく驚いた風を装いながら誠に目を移した。
「自分はとりあえず荷物の整理をします」
「私も手伝うわよ。先生の部屋については私も興味あるし」
アイシャの顔にいたずらっ子のような笑みが浮かんだ。誠は断っても無駄だろうことを悟って歩き始めた。汎用戦闘艦は幹部候補研修で何度か乗ったことがあるが、『高雄』の艦内は明らかにそれまで乗った船とは違っていた。嵯峨があれほど得意げだったのもこの艦の居住区画を50メートル歩けば理解できることだった。
第一、通路が非常に広く明るい。対消滅式エンジンの膨大な出力があるからといって、明らかにそれは実用以上の明るさに感じた。
それに食堂の隣が道場、そしてその隣にフリースペースとも言える卓球台と自動麻雀卓を置いた娯楽室のようなものまである。
「やっぱり変でしょ?この船の内装。全部隊長が自腹で改修資金出した施設だから。おかげで定員が1200名から360名に減っちゃったけど」
「それってまずいんじゃないですか?」
技術下士官達が出航までの待ち時間を潰しているのか、ドアを開けたままの部屋が多い下士官用と思われる区画を進む。さすがにここまでくるとどの部屋も狭苦しく感じる。ちらちら覗き込んでいる誠に配慮したように歩みを緩めたアイシャは言葉を続けた。
「うちの持ち味は少数精鋭なのよ。実際、艦内のシステム管理要員は吉田少佐だけで十分だし、マリアのお姐さんの警備部が白兵戦闘時には威力を発揮するから、別にそんなにたくさんの人間は要らないの。じゃあこのエレベーターで……」
アイシャに続いて誠はエレベーターに乗り込む。
「しかし長期待機任務の時はどうするんですか?吉田少佐一人じゃあ」
「部隊編成自体、長期間の戦闘を予測してないのよ。第一、今のところアサルト・モジュール二個小隊しか抱えていない司法局実働部隊に大規模戦闘時に何かできるわけ無いでしょ?それにうちは軍隊じゃなくあくまで司法機関の機動部隊という名目なんだから、そんなことまで考える必要なんてないわね。着いたわよ」
アイシャは開いた扉からパイロット用の個室のある区画に向かって歩き出した。誠は居住区の一番奥の室に通された。個室である、そして広い。正直、彼の下士官用寮の部屋より明らかに広い。そこには誠の着替えなどの荷物を入れたバッグがベッドの上に乗せられていた。
「ずいぶん少ないわね。せっかくいろいろとグッズ見せてもらおうと思ったのに……。これは……ふーん。画材なんだ」
アイシャはそう言うと警備隊員が運んでおいてくれたダンボールを一つを覗き込んだ。誠はベッドの上の着替えなどをバッグから取り出しロッカーに詰め込んだ。それほど物はない。手間がかかるわけでもない。
「ええ、帰りに宇宙でも描こうと思って……」
「宇宙?何にもないだろ?」
カウラのつぶやきに手にスケッチブックを持ってめくっていたアイシャが噴き出す。
「あのねえ、カウラちゃん。宇宙はロマンなのよ。絵師なら描きたくもなるわよねえ」
アイシャの言葉に誠は頭を掻きながらうなづいた。
「そんなもんなのか……」
カウラがどうも納得しきれていない表情を浮かべるのを見ながら誠は着替えなどを片付けることにした。
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