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第六章 司法局実働部隊男子下士官寮

何事かの依頼

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「お疲れ、餓鬼」

 詰め所に入ると、かなめから冷ややかな視線と言葉がランに浴びせられる。ランは無視してそのまま席についた。部屋には隊長室から戻った誠に書類整理中のカウラ、ニヤつきながらパソコンの画面をのぞいているかなめの他に、なぜか着替えを終えて帰り支度の島田の姿があった。

「そうだ、忘れてた。西園寺……例の件、隊長から許可が出たぞ」

 ランの言葉に、それまで浮ついていたかなめの視線が生気を帯びる。

「まじかよ……アイシャにも連絡するか?」

「まあ今メールを送ったから……早いねえもう連絡が来てるぜ。寮で待つだとよ」

 そう言ってランは満面笑みのかなめを見つめた。

「そういうわけで」

 島田が誠の肩に手を伸ばす。

「なんですか?僕がなにかしましたか?」

 誠は今一つ状況が飲み込めずにいた。

「なにがじゃないんだよ!お前さんの力が必要なんだから」

 黄昏ていた誠を技術部整備班班長である茶髪のあんちゃん、島田正人が引っ張って廊下に連れ出す。ただ状況が読めずに、ジタバタとするばかりの誠をかなめ達は生暖かい視線で見送った。

「いいから……早く着替えて着替えて。ようやく隊長の許可も下りたんだから」

 廊下に出るとそこで待っていた、すでに私服姿のパーラやサラまでもが、誠を更衣室へと押していく。その様子で何かめでたいことがあって、これから飲み会が始まることは誠にも予想がついた。

「全く……うちは飲むしかすることがなんですか?」

「まあ確かにそうだな」

 誠を更衣室に押していく島田のの身も蓋もない言葉に、誠はどっと疲れが来るのを感じていた。

「お前等……また飲み会か?」

 後ひとつ先のブロックを曲がれば更衣室というところで警備部長のマリアと行き合った。

「お姐さんも来る?」

 サラの言葉にマリアは心底がっかりしたような顔をした。

「残念、今日は宿直なんだ」

「そう残念……それじゃあ」

「そんなに引っ張らないでくださいよ……ちょっとよそ見してただけじゃないですか?」

 誠の上着をサラが思い切り引っ張る。

「本当に?それだけ?美人が一人減って残念だなあとか思って無かった?」

「思ってません!」

「俺は思ったよ」

「正人!」

 突然肯定した島田にサラが蹴りを入れた。入ったところが良かったのか島田は誠から手を離した。その隙に誠は更衣室の中に逃げ込んだ。

「早くしてね!」

 パーラの声に応えるわけでもないが汗に濡れた上着を脱ぎ捨てるとそのままロッカーに手を伸ばしてTシャツを着る。

「少し待ってくださいね」

 汗で引っかかりつつスラックスを脱ぎ、ジーパンを履いて慌ててベルトを締める。

 そのまま飛び出すと更衣室に向かうかなめとカウラに行き合う。 

「かなめちゃん達も早くね……じゃあ行くわよ」 

 赤いのボブカットの髪とその上に白い野球帽が目立つ。それをかぶり直すとサラはそのまま歩き始めた。

「行くってどうせアンタの車じゃないでしょ?」 

 そう漏らすパーラの言葉はサラと島田に無視された。

 そのまま階段を下りて正面玄関と呼ばれて入るが、警備部以外の隊員が使うことが無い入り口を通り過ぎて、サラ達はその隣に続く駐車場に向かった。
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