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第一部 「覚醒」 第一章 配属先は独立愚連隊?
珍妙な部屋の中
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ゆっくりと電算室のドアが開いた。ひんやりとした空調の聞いたコンピュータルームの風が誠には心地よかった。
「あの人形。いつか潰す」
冗談なのか本気なのかわからないような言葉を吐き捨てて、ランは扉の前で立ち尽くす誠を導くように中を覗き込んだ。
ドアが開かれると誠はそのまま凍りついたような表情を浮かべてランを見つめた。
「ここ、本当に軍の組織ですよね?」
正面を見つめたまま動けない誠はそのままランにそう言った。
「うちは同盟司法局の実力行使部隊だから分類でいえば司法執行機関だ。軍とは言えねーぞ」
ランは先ほどまでの怒りを静めて淡々とそう言った。
「ですがまあ組織としては軍と同じですよね?」
誠の言葉が微妙にかすれていた。
「まあ同盟諸国の軍人上がりが多くを占めてっからな。まあ軍組織と言ってもいいんじゃねえかな」
ランは答えるのもばかばかしいと言うように左手の人差し指で耳の穴を掃除している。
「じゃああそこの奥においてある『銀河戦隊ギャラクシアン』第三十五話で、ギャラクシーピンクに惚れて味方になろうとして、ガルス将軍に自爆させられた、怪人クラウラーの着ぐるみが置いてあるのはなぜですか?」
訴えるようにして誠はランの腕にすがりついた。呆れるを通り越してもう泣きたいと誠は思っていた。ランはそんな誠の手を振りほどくと何事もないとでも言うようにコンピュータルームに入った。
「アタシに言うな!んなこと。第一、そんな細かい設定よく出てくるなあ。やっぱりオメエはうちの隊向きだな。あれはな、シャムの奴がどうしてもこの部屋入りたがらねーから、仕方なくあれを着せて中に押し込む時に使うんだ。あのアホ、あれ着てれば安心してこの部屋に入るかんな」
誠はようやく落ち着いたというようにランに続いて恐る恐る部屋に入った。それ以外にも怪獣のフィギュア、見覚えのあるアニメのぬいぐるみ、作りかけのプラモ、それらが18禁女性向け同人誌や、銃器のカタログや、野球の専門誌の間に置かれている。誠は改めて自分がとんでもないところに来てしまったと後悔していた。
「こんなにちらかしてて誰か文句を言う人はいないんですか?」
誠は呆れたように目の前の異常な光景を見ながらつぶやいた。
「いやあ、ここは冷房が効いてるからな、アタシも疲れた時なんかは時はここ使ってるぞ。それに片付かないことに関しては究極の部屋、隊長室があるから。いつか見ることになるだろうが、あそこはたぶんこの部屋の数倍むちゃくちゃになってるぞ」
そう言うとまたランは野球雑誌を手にしてぱらぱらとページをめくっていた。
「ああ、あの……」
「とりあえずこいつにパスワードとか打ち込んどけ。あんまりお前の趣味に走ったの入れると後で吉田にからかわれるからな、そこんとこ少しは考えていれろよ」
誠は椅子に座るとキーボードの位置を置き換えた。そして手馴れたようにそれとなく聞きかじったアニメロボの制式名のパスワードを設定した。ランは何も気づいていないというようにぼんやりと束の上に置いてある野球雑誌を手にとって読み始めた。
「とりあえず入力終わりましたけど……」
誠の言葉にしばらく反応しなかったランだが、じっと彼を見つめる誠の視線に気付いたのか、再び雑誌を束の上に乗せた。
「あの人形。いつか潰す」
冗談なのか本気なのかわからないような言葉を吐き捨てて、ランは扉の前で立ち尽くす誠を導くように中を覗き込んだ。
ドアが開かれると誠はそのまま凍りついたような表情を浮かべてランを見つめた。
「ここ、本当に軍の組織ですよね?」
正面を見つめたまま動けない誠はそのままランにそう言った。
「うちは同盟司法局の実力行使部隊だから分類でいえば司法執行機関だ。軍とは言えねーぞ」
ランは先ほどまでの怒りを静めて淡々とそう言った。
「ですがまあ組織としては軍と同じですよね?」
誠の言葉が微妙にかすれていた。
「まあ同盟諸国の軍人上がりが多くを占めてっからな。まあ軍組織と言ってもいいんじゃねえかな」
ランは答えるのもばかばかしいと言うように左手の人差し指で耳の穴を掃除している。
「じゃああそこの奥においてある『銀河戦隊ギャラクシアン』第三十五話で、ギャラクシーピンクに惚れて味方になろうとして、ガルス将軍に自爆させられた、怪人クラウラーの着ぐるみが置いてあるのはなぜですか?」
訴えるようにして誠はランの腕にすがりついた。呆れるを通り越してもう泣きたいと誠は思っていた。ランはそんな誠の手を振りほどくと何事もないとでも言うようにコンピュータルームに入った。
「アタシに言うな!んなこと。第一、そんな細かい設定よく出てくるなあ。やっぱりオメエはうちの隊向きだな。あれはな、シャムの奴がどうしてもこの部屋入りたがらねーから、仕方なくあれを着せて中に押し込む時に使うんだ。あのアホ、あれ着てれば安心してこの部屋に入るかんな」
誠はようやく落ち着いたというようにランに続いて恐る恐る部屋に入った。それ以外にも怪獣のフィギュア、見覚えのあるアニメのぬいぐるみ、作りかけのプラモ、それらが18禁女性向け同人誌や、銃器のカタログや、野球の専門誌の間に置かれている。誠は改めて自分がとんでもないところに来てしまったと後悔していた。
「こんなにちらかしてて誰か文句を言う人はいないんですか?」
誠は呆れたように目の前の異常な光景を見ながらつぶやいた。
「いやあ、ここは冷房が効いてるからな、アタシも疲れた時なんかは時はここ使ってるぞ。それに片付かないことに関しては究極の部屋、隊長室があるから。いつか見ることになるだろうが、あそこはたぶんこの部屋の数倍むちゃくちゃになってるぞ」
そう言うとまたランは野球雑誌を手にしてぱらぱらとページをめくっていた。
「ああ、あの……」
「とりあえずこいつにパスワードとか打ち込んどけ。あんまりお前の趣味に走ったの入れると後で吉田にからかわれるからな、そこんとこ少しは考えていれろよ」
誠は椅子に座るとキーボードの位置を置き換えた。そして手馴れたようにそれとなく聞きかじったアニメロボの制式名のパスワードを設定した。ランは何も気づいていないというようにぼんやりと束の上に置いてある野球雑誌を手にとって読み始めた。
「とりあえず入力終わりましたけど……」
誠の言葉にしばらく反応しなかったランだが、じっと彼を見つめる誠の視線に気付いたのか、再び雑誌を束の上に乗せた。
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