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第一部 「覚醒」 第一章 配属先は独立愚連隊?
誠の因縁
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どこでもそうだが東和軍の施設はあまり見られたものではない。ただでさえ『アサルト・モジュール』と言う高価な人型汎用兵器の導入をいち早く決め、正面装備の充実に血道を注いでいる軍隊である。ましてや外様の同盟機構の司法部門の設備に金をかけるつもりなど端から無いに決まっている。
ランはそのまま植え込みが踏み固められているわき道に入り込んだ。痛みの目立つ道路のアスファルトの舗装に比べ、案内の看板はまだこの部隊が創設されて二年しか経過していないだけあって、まだペンキははげてきてはいない。誠も明らかに芝生だったものの上に出来た道を真っ直ぐに歩くランの後を進んだ。
「まあ、連中の警備部もたるんではいるが、アタシの機動部隊に比べたら数倍ましなんだよな……頭痛てえよ」
ランの言葉に、自分が一体これから何を見るのかと誠は恐怖をおぼえていた。
ランはそのまま穴だらけの舗装道路をまっすぐに進んだ。誠も路上に空いた穴に気を付けながら、彼女の後をついていった。
「そう言やあ、オメーあの隊長とは付き合い古いんだよな」
生垣の間を抜けながらランが誠に振り返りそう言った。
「まあ、僕が生まれる前からあの人はうちの道場の師範代をしてましたから。付き合いが長いと言えば長いですけど」
誠のどこか取り繕うような言葉に耳を傾けながらランは後ろを歩く誠を一瞥した。
「『ダークナイト』。アメリカさんはあの御仁をそう呼んでるそうだ。胡州帝国じゃ『人斬り新三(しんざ)、遼南じゃ『黒太子』とか呼ばれてる」
「ええ、僕も軍に入って聞きました」
部隊長、嵯峨惟基の話題が二人の数少ない共通の話題だった。ランは何度か振り返りつつ、中庭の生垣を進む。誠は荷物を抱えてランの軽い足取りに何とかついていった。
「あのおっさんと剣は交えたことあるのか?」
「いいえ、稽古の時もあの人は座つてお茶を飲んでるだけですから」
「まあ……あの人はなかなか手のうちは見せない食えない奴だからな」
誠の言葉が読めていたというように振り返るランの表情は冷めていた。ツツジの生垣を軽く飛び越えたランは話題を変えようというように笑みを浮かべて振り返った。
「それより、オメーは野球が得意らしいじゃねーか」
誠は突然の問いに返事をするべきか迷った。
「高校時代は『都立の星』、東都都立城東高校の不動のエースって……」
「何で知ってる……ああ、師範代ですね」
誠は彼の配属が決まった際に部下達に誠のどうでもいい情報を植え付けている嵯峨の姿を想像して苦笑いを浮かべた。
「野球は高校までですよ。大学からは遊びの飲み会サークルで草野球をやる程度ですから」
「左で150キロ連発。決め球のスライダーは名門校相手に8回まで無失点……」
「高校で終わりなんです!」
話題を引きずろうとするランを誠は強い言葉で制した。
「まあいいや。表の菱川重工の野球部みたいに毎年ドラフト候補を抱え込むのがうちの仕事じゃねーしな。草野球部はあるんで、そっちの入部は決定済みだからな」
ランは頭を掻きながらそう言うと踏み固められた生垣の間の道を進んだ。誠もそれ以上言うべきことも無かったのでそのまま彼女について道を急いだ。
ランはそのまま植え込みが踏み固められているわき道に入り込んだ。痛みの目立つ道路のアスファルトの舗装に比べ、案内の看板はまだこの部隊が創設されて二年しか経過していないだけあって、まだペンキははげてきてはいない。誠も明らかに芝生だったものの上に出来た道を真っ直ぐに歩くランの後を進んだ。
「まあ、連中の警備部もたるんではいるが、アタシの機動部隊に比べたら数倍ましなんだよな……頭痛てえよ」
ランの言葉に、自分が一体これから何を見るのかと誠は恐怖をおぼえていた。
ランはそのまま穴だらけの舗装道路をまっすぐに進んだ。誠も路上に空いた穴に気を付けながら、彼女の後をついていった。
「そう言やあ、オメーあの隊長とは付き合い古いんだよな」
生垣の間を抜けながらランが誠に振り返りそう言った。
「まあ、僕が生まれる前からあの人はうちの道場の師範代をしてましたから。付き合いが長いと言えば長いですけど」
誠のどこか取り繕うような言葉に耳を傾けながらランは後ろを歩く誠を一瞥した。
「『ダークナイト』。アメリカさんはあの御仁をそう呼んでるそうだ。胡州帝国じゃ『人斬り新三(しんざ)、遼南じゃ『黒太子』とか呼ばれてる」
「ええ、僕も軍に入って聞きました」
部隊長、嵯峨惟基の話題が二人の数少ない共通の話題だった。ランは何度か振り返りつつ、中庭の生垣を進む。誠は荷物を抱えてランの軽い足取りに何とかついていった。
「あのおっさんと剣は交えたことあるのか?」
「いいえ、稽古の時もあの人は座つてお茶を飲んでるだけですから」
「まあ……あの人はなかなか手のうちは見せない食えない奴だからな」
誠の言葉が読めていたというように振り返るランの表情は冷めていた。ツツジの生垣を軽く飛び越えたランは話題を変えようというように笑みを浮かべて振り返った。
「それより、オメーは野球が得意らしいじゃねーか」
誠は突然の問いに返事をするべきか迷った。
「高校時代は『都立の星』、東都都立城東高校の不動のエースって……」
「何で知ってる……ああ、師範代ですね」
誠は彼の配属が決まった際に部下達に誠のどうでもいい情報を植え付けている嵯峨の姿を想像して苦笑いを浮かべた。
「野球は高校までですよ。大学からは遊びの飲み会サークルで草野球をやる程度ですから」
「左で150キロ連発。決め球のスライダーは名門校相手に8回まで無失点……」
「高校で終わりなんです!」
話題を引きずろうとするランを誠は強い言葉で制した。
「まあいいや。表の菱川重工の野球部みたいに毎年ドラフト候補を抱え込むのがうちの仕事じゃねーしな。草野球部はあるんで、そっちの入部は決定済みだからな」
ランは頭を掻きながらそう言うと踏み固められた生垣の間の道を進んだ。誠もそれ以上言うべきことも無かったのでそのまま彼女について道を急いだ。
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