2 / 1,536
第一部 「覚醒」 第一章 配属先は独立愚連隊?
幼女と独立愚連隊
しおりを挟む
「バス停がここ……確かに『司法局豊川支部前』と書いてあって……」
あらためて誠はバス停の前に立ったまま途方に暮れていた。
『同盟司法局豊川支部前』というバス停の案内板に書かれているわりに、ただバス停からは延々と続く壁しか見えない。誠はそこに描かれた絵に導かれるように、まっすぐと高いコンクリートの壁に沿って道を急いだ。
工場構内の道路には次から次へと通りには、コンテナを満載したトレーラーや重機の部品を載せたトラックが通り抜ける。その高いモーター音が、彼に湧き上がる不安をさらに増幅させる。
初夏の強烈な日差しの中、流れる汗が目にしみるようになるまで歩いた時、ようやく視界に鉄塔と見張り櫓、そして通用口らしい巨大な鉄の扉が見えてきた。
「間違いじゃないみたいだ」
自分に言い聞かせるようにして、誠はそのまま巨大な影に向かって歩みを速めた。
誠は目の前に現れたゲートの前で、背負っていた荷物を路上に放り投げると、警備員の詰め所を覗き込んだ。
中では二人の白人がカードゲームに興じていた。
その手の札を見ると花札である。その隣には丸められた東和円の札が並べられている。
奥のスキンヘッドの隊員が勝ち続けているようで、手前のGIカットの栗毛色の髪の男はいらだたしげにタバコをくゆらせていた。
「ほら!亥鹿蝶だ!」
スキンヘッドの方が、その大きく筋張った手を振り下ろして、手札を座布団の上に広げた。
「くそったれ!イカサマじゃないのか!」
GIカットの男は、語気を荒げて相手に詰め寄ろうと膝を立てた。
「なに言ってやがんだ!昨日の麻雀で積み込みやった奴にそんなこと言う資格はねえだろ!」
「何だと!この野郎!」
スキンヘッドは右腕を捲り上げて怒鳴り返した。感情的になった二人が日本語での会話を止めてロシア語で怒鳴りあいをはじめる。
GIカットの男はそのまま着ていた勤務服を脱ぎ捨てると、ファイティングポーズをとる。
止めるべきか、それとも何事も無いように無視するべきか。
何も出来ずに黙ったまま立ち尽くしていた誠の背中を、誰かが叩いた。
誠は突然のことに飛び上がるようにして振り向いた。しかし、視線の先には何もなかった。
「神前誠少尉候補生だな?隊長から話は聞いてんよ」
大学時代は常に一番の長身だった誠が視線を下すと。小学校低学年ほどに見える目つきの悪い少女が立っていた。
幼い、それでいて整った顔立ちで頭の後ろでまとめた髪をおさげにしている。その黒い瞳の光る視線は鋭く誠を射抜いた。
その身にまとう制服は東和軍と同じ系統の深い灰色の勤務服だった。しかも誠を驚かせたのはその襟に着く階級章は中佐のものだったことだ。
明らかに自分の視線に当惑があることに気付いてはっとする誠だが、彼女はそのような視線には慣れているようで、そんな誠の視線など気にすることも無く詰め所に向かって歩いていった。
「オイ!テメー等!」
少女が最初に誠に向けた鋭い目つきでの一瞥が、彼女としては『やさしさ』を詰め込んだものだったことが、その鋭い言葉の響きで理解できた。ファイティングポーズのままお互いにけん制しあっていた二人の兵隊が、少女の声を聴いただけで青ざめていくのが誠にもわかった。
「歩哨が何やってんだ!第一……その花札……勤務中だろ!まったく……」
少女がそう言った時には二人はうなだれて、屠殺(とさつ)されるのを待つ子羊のようにおとなしくなっていた。
「しかも金賭けてたな……ってオメー等、給料ただどりする気か!勤務時間は休み時間じゃねーんだよ!特に今日は新入りが来るって聞いてなかったわけじゃねーだろ!それとも何か?その頭には炭酸ジュースでも詰まってて、射撃の的にでも使うしか能がないのか!」
たたみかけるような鋭い口調に、スキンヘッドとGIカットの警備兵はただうなだれて少女の説教を聞いていた。
「あとで機動部隊の詰め所に来い。警備部長の代わりにアタシが説教してやる!」
二人は力を込めて敬礼した。その小さな中佐は彼等を無視するようにして、ゲートのスイッチを押して黄色と白の縦じまの入ったゲートを跳ね上げた。
「なにぼんやりしてんだ?置いてくぞ……」
小さなかわいらしい中佐はそう言って歩き出そうとする。誠はあまりの急展開についていけず、唖然として立ち尽くした。
「ああ、アタシの自己紹介がまだだったな。アタシはクバルカ・ラン中佐。オメーの中隊の中隊長だ。隊長がもうそろそろ着くだろうから、見てこいと言われて来たんだが……ろくでもないもの見せちまったな」
ランの言葉は早口でどこかしら棘があった。
速足で進んでいくランをぼんやり見ていた誠は、遅れないように荷物を掴み上げると、上がったゲートをくぐる。
「どうせ隊長は……いつも通りふらふらしてんだろうからアタシが案内するか」
投げやりなランの言葉を聞きながら、誠は荷物を背負いなおすと歩き始めた。
「あの……質問してもいいですか?」
誠は言いづらそうに口を開いた。おそらく遼州同盟加盟国の一つ、『外惑星共和国』の猛者であろう歩哨達を、一喝で仕留めるランの眼力に、誠はただ圧倒されていた。
「何だ?アタシが餓鬼に見えるって言いたいんだろ?いわゆる医学用語でいうところの『幼生固定』って奴だ。数百万人に一人で突然、体の成長が止まる遺伝病があるんだと。まあ、なりで人を判断すると痛い目見るぜ」
一瞬、彼女の顔に笑顔が浮かんだ。誠は少し緊張を解くとふと思いついた質問をすることにした。
「いえ、っていうかそれもありますけど。司法局実働部隊っていつもああなんですか?」
ランの顔に今度は複雑な苦笑いのようなものが浮かぶ。その笑いはどちらかと言うと、あまりにも同じことを聞かれすぎて答えるのがばかばかしくなった、そんな感じの表情だと誠には思えた。
「まあそんなもんだな。……あの連中もここに来る前はああじゃなかったはずだが、今ではすっかり毒されちまったな」
そう言うとランは再び誠を連れて官舎前のロータリーを進む。突貫工事の化けの皮がはがれたとでも言うような、舗装がはげているのが目立つ路面の上を二人は歩き始めた。
あらためて誠はバス停の前に立ったまま途方に暮れていた。
『同盟司法局豊川支部前』というバス停の案内板に書かれているわりに、ただバス停からは延々と続く壁しか見えない。誠はそこに描かれた絵に導かれるように、まっすぐと高いコンクリートの壁に沿って道を急いだ。
工場構内の道路には次から次へと通りには、コンテナを満載したトレーラーや重機の部品を載せたトラックが通り抜ける。その高いモーター音が、彼に湧き上がる不安をさらに増幅させる。
初夏の強烈な日差しの中、流れる汗が目にしみるようになるまで歩いた時、ようやく視界に鉄塔と見張り櫓、そして通用口らしい巨大な鉄の扉が見えてきた。
「間違いじゃないみたいだ」
自分に言い聞かせるようにして、誠はそのまま巨大な影に向かって歩みを速めた。
誠は目の前に現れたゲートの前で、背負っていた荷物を路上に放り投げると、警備員の詰め所を覗き込んだ。
中では二人の白人がカードゲームに興じていた。
その手の札を見ると花札である。その隣には丸められた東和円の札が並べられている。
奥のスキンヘッドの隊員が勝ち続けているようで、手前のGIカットの栗毛色の髪の男はいらだたしげにタバコをくゆらせていた。
「ほら!亥鹿蝶だ!」
スキンヘッドの方が、その大きく筋張った手を振り下ろして、手札を座布団の上に広げた。
「くそったれ!イカサマじゃないのか!」
GIカットの男は、語気を荒げて相手に詰め寄ろうと膝を立てた。
「なに言ってやがんだ!昨日の麻雀で積み込みやった奴にそんなこと言う資格はねえだろ!」
「何だと!この野郎!」
スキンヘッドは右腕を捲り上げて怒鳴り返した。感情的になった二人が日本語での会話を止めてロシア語で怒鳴りあいをはじめる。
GIカットの男はそのまま着ていた勤務服を脱ぎ捨てると、ファイティングポーズをとる。
止めるべきか、それとも何事も無いように無視するべきか。
何も出来ずに黙ったまま立ち尽くしていた誠の背中を、誰かが叩いた。
誠は突然のことに飛び上がるようにして振り向いた。しかし、視線の先には何もなかった。
「神前誠少尉候補生だな?隊長から話は聞いてんよ」
大学時代は常に一番の長身だった誠が視線を下すと。小学校低学年ほどに見える目つきの悪い少女が立っていた。
幼い、それでいて整った顔立ちで頭の後ろでまとめた髪をおさげにしている。その黒い瞳の光る視線は鋭く誠を射抜いた。
その身にまとう制服は東和軍と同じ系統の深い灰色の勤務服だった。しかも誠を驚かせたのはその襟に着く階級章は中佐のものだったことだ。
明らかに自分の視線に当惑があることに気付いてはっとする誠だが、彼女はそのような視線には慣れているようで、そんな誠の視線など気にすることも無く詰め所に向かって歩いていった。
「オイ!テメー等!」
少女が最初に誠に向けた鋭い目つきでの一瞥が、彼女としては『やさしさ』を詰め込んだものだったことが、その鋭い言葉の響きで理解できた。ファイティングポーズのままお互いにけん制しあっていた二人の兵隊が、少女の声を聴いただけで青ざめていくのが誠にもわかった。
「歩哨が何やってんだ!第一……その花札……勤務中だろ!まったく……」
少女がそう言った時には二人はうなだれて、屠殺(とさつ)されるのを待つ子羊のようにおとなしくなっていた。
「しかも金賭けてたな……ってオメー等、給料ただどりする気か!勤務時間は休み時間じゃねーんだよ!特に今日は新入りが来るって聞いてなかったわけじゃねーだろ!それとも何か?その頭には炭酸ジュースでも詰まってて、射撃の的にでも使うしか能がないのか!」
たたみかけるような鋭い口調に、スキンヘッドとGIカットの警備兵はただうなだれて少女の説教を聞いていた。
「あとで機動部隊の詰め所に来い。警備部長の代わりにアタシが説教してやる!」
二人は力を込めて敬礼した。その小さな中佐は彼等を無視するようにして、ゲートのスイッチを押して黄色と白の縦じまの入ったゲートを跳ね上げた。
「なにぼんやりしてんだ?置いてくぞ……」
小さなかわいらしい中佐はそう言って歩き出そうとする。誠はあまりの急展開についていけず、唖然として立ち尽くした。
「ああ、アタシの自己紹介がまだだったな。アタシはクバルカ・ラン中佐。オメーの中隊の中隊長だ。隊長がもうそろそろ着くだろうから、見てこいと言われて来たんだが……ろくでもないもの見せちまったな」
ランの言葉は早口でどこかしら棘があった。
速足で進んでいくランをぼんやり見ていた誠は、遅れないように荷物を掴み上げると、上がったゲートをくぐる。
「どうせ隊長は……いつも通りふらふらしてんだろうからアタシが案内するか」
投げやりなランの言葉を聞きながら、誠は荷物を背負いなおすと歩き始めた。
「あの……質問してもいいですか?」
誠は言いづらそうに口を開いた。おそらく遼州同盟加盟国の一つ、『外惑星共和国』の猛者であろう歩哨達を、一喝で仕留めるランの眼力に、誠はただ圧倒されていた。
「何だ?アタシが餓鬼に見えるって言いたいんだろ?いわゆる医学用語でいうところの『幼生固定』って奴だ。数百万人に一人で突然、体の成長が止まる遺伝病があるんだと。まあ、なりで人を判断すると痛い目見るぜ」
一瞬、彼女の顔に笑顔が浮かんだ。誠は少し緊張を解くとふと思いついた質問をすることにした。
「いえ、っていうかそれもありますけど。司法局実働部隊っていつもああなんですか?」
ランの顔に今度は複雑な苦笑いのようなものが浮かぶ。その笑いはどちらかと言うと、あまりにも同じことを聞かれすぎて答えるのがばかばかしくなった、そんな感じの表情だと誠には思えた。
「まあそんなもんだな。……あの連中もここに来る前はああじゃなかったはずだが、今ではすっかり毒されちまったな」
そう言うとランは再び誠を連れて官舎前のロータリーを進む。突貫工事の化けの皮がはがれたとでも言うような、舗装がはげているのが目立つ路面の上を二人は歩き始めた。
11
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第五部
遼州人の青年神前誠(しんぜんまこと)が司法局実働部隊機動部隊第一小隊に配属になってからほぼ半年の時が過ぎようとしていた。
訓練場での閉所室内戦闘訓練からの帰りの途中、誠は周りの見慣れない雪景色に目を奪われた。
そんな誠に小隊長のカウラ・ベルガー大尉は彼女がロールアウトした時も同じように雪が降っていたと語った。そして、その日が12月25日であることを告げた。そして彼女がロールアウトして今年で9年になる新しい人造人間であること誠は知った。
同行していた運用艦『ふさ』の艦長であるアメリア・クラウゼ中佐は、クリスマスと重なるこの機会に何かイベントをしようと第二小隊のもう一人の隊員西園寺かなめ大尉に語り掛けた。
こうしてアメリアの企画で誠の実家である『神前一刀流道場』でのカウラのクリスマス会が開催されることになった。
誠の家は母が道場主を務め、父である誠一は全寮制の私立高校の剣道教師としてほとんど家に帰らない家だった。
四人は休みを取り、誠の実家で待つ誠の母、神前薫(しんぜんかおる)のところを訪れた。
そこで待ち受けているのは上流貴族であるかなめのとんでもなく上品なプレゼントを買いに行く行事、誠の『許婚』を自称するかなめの妹で両刀遣いの変態マゾヒスト日野かえで少佐の訪問、アメリアの部下である運航部の面々による蟹パーティーなどの忙しい日々だった。
そんな中、誠はカウラへのプレゼントとしてイラストを描くことを思いつき、様々な妨害に会いながらもなんとか仕上げることが出来たのだが……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第五部 『カウラ・ベルガー大尉の誕生日』
橋本 直
SF
遼州司法局実働部隊に課せられる訓練『閉所白兵戦訓練』
いつもの閉所白兵戦訓練で同時に製造された友人の話から実はクリスマスイブが誕生日と分かったカウラ。
そんな彼女をお祝いすると言う名目でアメリアとかなめは誠の実家でのパーティーを企画することになる。
予想通り趣味に走ったプレゼントを用意するアメリア。いかにもセレブな買い物をするかなめ。そんな二人をしり目に誠は独自でのプレゼントを考える。
誠はいかにも絵師らしくカウラを描くことになった。
閑話休題的物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

びるどあっぷ ふり〜と!
高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。
どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。
ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね?
※すでになろうで完結済みの小説です。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~
アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」
中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。
ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。
『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。
宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。
大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。
『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。
修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる