1 / 25
絵本と適正
しおりを挟む
むかしむかしあるところに、お姫様がいました。
お姫様はとても美しく、見た人はみんなお姫様のことが好きになりました。
それは狂暴なドラゴンも例外ではありません。お姫様に一目惚れしたドラゴンは、嫌がるお姫様を無理矢理連れていってしまいました。
塔に閉じ込められ、泣きながら暮らすお姫様。そんなお姫様を助けるため、1人の勇者がドラゴンに挑みます。
そして、激しい戦いにドラゴンは倒れ、勇者はお姫様を救いだすことができました。
お姫様は勇敢な勇者に恋をして、2人は幸せに暮らしましたーーーー
「ドラゴンが、可哀想……」
読まれていた絵本が終わると、目の前に座っていた子供の一匹がそう言った。
白い細身の尻尾につるりとした角がこめかみから生えたその少年は、マジアという。ここは竜人族の子供が知識を学ぶ場所であり、絵本の読み聞かせは竜人族として適正があるか調べるものであった。
「……可哀想、とは?」
「だって、ドラゴンは殺されちゃったんでしょ? そんなの、あんまりだよ……」
周りで見守っていた大人の一匹に尋ねられ、マジアは答えながらぽろぽろと泣き出してしまう。それはどんな悪行をしたとしても許すべきという慈悲の心の表れのようであり、マジアの白い体も相まって涙を流すその姿は神聖なものの様に見えた。
清い心の優しい子。見ていた者たちの全員がマジアの行動をそう受け取った。
そして、誰もが険しい目をマジアに向けたのだ。
「……他に、思ったことがある者は」
「はい!」
苦々しく顔を歪めた大人が促すと、マジアの隣にいた茶色い尻尾の少年が元気よく手を挙げた。
「僕は、ドラゴンはどうしてお姫様をさっさと食べちゃわなかったのかなって思いました!」
「わ、私は、見た目が好きなら皮を剥がせば逃げなかったのにって……」
「お姫様を連れ去るときに、他の人たちを皆殺しにしちゃえばよかったよ!」
茶色い尻尾の少年の回答を皮切りに、次々と子供たちから出てくる物騒な答え。しかしそれらを大人が止めることはなく、むしろ先ほどとは一転してにこやかに子供たちの姿を眺めていた。
竜人族は、何より力を尊ぶ。それはかつて鱗や皮膜を求めた他種族と争っていた経験から、情などかけることなく力でねじ伏せることが身を守る術だと学んだためであった。
竜人族としての適性とは、つまりはどれほど敵に無情になれるかということ。絵本はドラゴンという竜人族の祖ともいえる存在が虐げられるこの話でどれだけ敵対心を表せるかを知るための手段であり、要はマジアの答えは不正解だったのだ。
あれこれと思い思いに答えを口にする子供たち。その中で、泣いているマジアの他にずっと黙っている子供がいた。
黒い髪に黒い尻尾。角まで黒いその少年は、竜の血を特別濃く宿している存在である。
「お前は、どう思った?」
「……俺はーー」
期待に満ちた目を方々から向けられ、ようやく口を開いた少年。同じ竜人族といえど大人から見つめれれば威圧されてしまう子供がほどんどだというのに、背筋を伸ばして少年、ドラセルは震えることなく声を発したのだった。
お姫様はとても美しく、見た人はみんなお姫様のことが好きになりました。
それは狂暴なドラゴンも例外ではありません。お姫様に一目惚れしたドラゴンは、嫌がるお姫様を無理矢理連れていってしまいました。
塔に閉じ込められ、泣きながら暮らすお姫様。そんなお姫様を助けるため、1人の勇者がドラゴンに挑みます。
そして、激しい戦いにドラゴンは倒れ、勇者はお姫様を救いだすことができました。
お姫様は勇敢な勇者に恋をして、2人は幸せに暮らしましたーーーー
「ドラゴンが、可哀想……」
読まれていた絵本が終わると、目の前に座っていた子供の一匹がそう言った。
白い細身の尻尾につるりとした角がこめかみから生えたその少年は、マジアという。ここは竜人族の子供が知識を学ぶ場所であり、絵本の読み聞かせは竜人族として適正があるか調べるものであった。
「……可哀想、とは?」
「だって、ドラゴンは殺されちゃったんでしょ? そんなの、あんまりだよ……」
周りで見守っていた大人の一匹に尋ねられ、マジアは答えながらぽろぽろと泣き出してしまう。それはどんな悪行をしたとしても許すべきという慈悲の心の表れのようであり、マジアの白い体も相まって涙を流すその姿は神聖なものの様に見えた。
清い心の優しい子。見ていた者たちの全員がマジアの行動をそう受け取った。
そして、誰もが険しい目をマジアに向けたのだ。
「……他に、思ったことがある者は」
「はい!」
苦々しく顔を歪めた大人が促すと、マジアの隣にいた茶色い尻尾の少年が元気よく手を挙げた。
「僕は、ドラゴンはどうしてお姫様をさっさと食べちゃわなかったのかなって思いました!」
「わ、私は、見た目が好きなら皮を剥がせば逃げなかったのにって……」
「お姫様を連れ去るときに、他の人たちを皆殺しにしちゃえばよかったよ!」
茶色い尻尾の少年の回答を皮切りに、次々と子供たちから出てくる物騒な答え。しかしそれらを大人が止めることはなく、むしろ先ほどとは一転してにこやかに子供たちの姿を眺めていた。
竜人族は、何より力を尊ぶ。それはかつて鱗や皮膜を求めた他種族と争っていた経験から、情などかけることなく力でねじ伏せることが身を守る術だと学んだためであった。
竜人族としての適性とは、つまりはどれほど敵に無情になれるかということ。絵本はドラゴンという竜人族の祖ともいえる存在が虐げられるこの話でどれだけ敵対心を表せるかを知るための手段であり、要はマジアの答えは不正解だったのだ。
あれこれと思い思いに答えを口にする子供たち。その中で、泣いているマジアの他にずっと黙っている子供がいた。
黒い髪に黒い尻尾。角まで黒いその少年は、竜の血を特別濃く宿している存在である。
「お前は、どう思った?」
「……俺はーー」
期待に満ちた目を方々から向けられ、ようやく口を開いた少年。同じ竜人族といえど大人から見つめれれば威圧されてしまう子供がほどんどだというのに、背筋を伸ばして少年、ドラセルは震えることなく声を発したのだった。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~
雷音
BL
全12話 本編完結済み
雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ
一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。
※闇堕ち、♂♂寄りとなります※
単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。
(登場人物は全員成人済みです)
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
[R18]エリート一家の長兄が落ちこぼれ弟を(性的に)再教育する話
空き缶太郎
BL
(※R18・完結済)エリート一家・皇家に生まれた兄と弟。
兄は歴代の当主達を遥かに上回る才能の持ち主であったが、弟は対象的に優れた才能を持たない凡人であった。
徹底的に兄と比較され続けた結果グレてしまった弟。
そんな愚弟に現当主となった兄は…
(今回試験的にタイトルを長文系というか内容そのまま系のやつにしてみました)
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
メス堕ち元帥の愉しい騎士性活
環希碧位
BL
政敵の姦計により、捕らわれの身となった騎士二人。
待ち受けるのは身も心も壊し尽くす性奴化調教の数々──
肉体を淫らに改造され、思考すら捻じ曲げられた彼らに待ち受ける運命とは。
非の打ちどころのない高貴な騎士二人を、おちんぽ大好きなマゾメスに堕とすドスケベ小説です。
いわゆる「完堕ちエンド」なので救いはありません。メス堕ち淫乱化したスパダリ騎士が最初から最後まで盛ってアンアン言ってるだけです。
肉体改造を含む調教ものの満漢全席状態になっておりますので、とりあえず、頭の悪いエロ話が読みたい方、男性向けに近いハードな内容のプレイが読みたい方は是非。
※全ての章にハードな成人向描写があります。御注意ください。※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる