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絵本と適正
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むかしむかしあるところに、お姫様がいました。
お姫様はとても美しく、見た人はみんなお姫様のことが好きになりました。
それは狂暴なドラゴンも例外ではありません。お姫様に一目惚れしたドラゴンは、嫌がるお姫様を無理矢理連れていってしまいました。
塔に閉じ込められ、泣きながら暮らすお姫様。そんなお姫様を助けるため、1人の勇者がドラゴンに挑みます。
そして、激しい戦いにドラゴンは倒れ、勇者はお姫様を救いだすことができました。
お姫様は勇敢な勇者に恋をして、2人は幸せに暮らしましたーーーー
「ドラゴンが、可哀想……」
読まれていた絵本が終わると、目の前に座っていた子供の一匹がそう言った。
白い細身の尻尾につるりとした角がこめかみから生えたその少年は、マジアという。ここは竜人族の子供が知識を学ぶ場所であり、絵本の読み聞かせは竜人族として適正があるか調べるものであった。
「……可哀想、とは?」
「だって、ドラゴンは殺されちゃったんでしょ? そんなの、あんまりだよ……」
周りで見守っていた大人の一匹に尋ねられ、マジアは答えながらぽろぽろと泣き出してしまう。それはどんな悪行をしたとしても許すべきという慈悲の心の表れのようであり、マジアの白い体も相まって涙を流すその姿は神聖なものの様に見えた。
清い心の優しい子。見ていた者たちの全員がマジアの行動をそう受け取った。
そして、誰もが険しい目をマジアに向けたのだ。
「……他に、思ったことがある者は」
「はい!」
苦々しく顔を歪めた大人が促すと、マジアの隣にいた茶色い尻尾の少年が元気よく手を挙げた。
「僕は、ドラゴンはどうしてお姫様をさっさと食べちゃわなかったのかなって思いました!」
「わ、私は、見た目が好きなら皮を剥がせば逃げなかったのにって……」
「お姫様を連れ去るときに、他の人たちを皆殺しにしちゃえばよかったよ!」
茶色い尻尾の少年の回答を皮切りに、次々と子供たちから出てくる物騒な答え。しかしそれらを大人が止めることはなく、むしろ先ほどとは一転してにこやかに子供たちの姿を眺めていた。
竜人族は、何より力を尊ぶ。それはかつて鱗や皮膜を求めた他種族と争っていた経験から、情などかけることなく力でねじ伏せることが身を守る術だと学んだためであった。
竜人族としての適性とは、つまりはどれほど敵に無情になれるかということ。絵本はドラゴンという竜人族の祖ともいえる存在が虐げられるこの話でどれだけ敵対心を表せるかを知るための手段であり、要はマジアの答えは不正解だったのだ。
あれこれと思い思いに答えを口にする子供たち。その中で、泣いているマジアの他にずっと黙っている子供がいた。
黒い髪に黒い尻尾。角まで黒いその少年は、竜の血を特別濃く宿している存在である。
「お前は、どう思った?」
「……俺はーー」
期待に満ちた目を方々から向けられ、ようやく口を開いた少年。同じ竜人族といえど大人から見つめれれば威圧されてしまう子供がほどんどだというのに、背筋を伸ばして少年、ドラセルは震えることなく声を発したのだった。
お姫様はとても美しく、見た人はみんなお姫様のことが好きになりました。
それは狂暴なドラゴンも例外ではありません。お姫様に一目惚れしたドラゴンは、嫌がるお姫様を無理矢理連れていってしまいました。
塔に閉じ込められ、泣きながら暮らすお姫様。そんなお姫様を助けるため、1人の勇者がドラゴンに挑みます。
そして、激しい戦いにドラゴンは倒れ、勇者はお姫様を救いだすことができました。
お姫様は勇敢な勇者に恋をして、2人は幸せに暮らしましたーーーー
「ドラゴンが、可哀想……」
読まれていた絵本が終わると、目の前に座っていた子供の一匹がそう言った。
白い細身の尻尾につるりとした角がこめかみから生えたその少年は、マジアという。ここは竜人族の子供が知識を学ぶ場所であり、絵本の読み聞かせは竜人族として適正があるか調べるものであった。
「……可哀想、とは?」
「だって、ドラゴンは殺されちゃったんでしょ? そんなの、あんまりだよ……」
周りで見守っていた大人の一匹に尋ねられ、マジアは答えながらぽろぽろと泣き出してしまう。それはどんな悪行をしたとしても許すべきという慈悲の心の表れのようであり、マジアの白い体も相まって涙を流すその姿は神聖なものの様に見えた。
清い心の優しい子。見ていた者たちの全員がマジアの行動をそう受け取った。
そして、誰もが険しい目をマジアに向けたのだ。
「……他に、思ったことがある者は」
「はい!」
苦々しく顔を歪めた大人が促すと、マジアの隣にいた茶色い尻尾の少年が元気よく手を挙げた。
「僕は、ドラゴンはどうしてお姫様をさっさと食べちゃわなかったのかなって思いました!」
「わ、私は、見た目が好きなら皮を剥がせば逃げなかったのにって……」
「お姫様を連れ去るときに、他の人たちを皆殺しにしちゃえばよかったよ!」
茶色い尻尾の少年の回答を皮切りに、次々と子供たちから出てくる物騒な答え。しかしそれらを大人が止めることはなく、むしろ先ほどとは一転してにこやかに子供たちの姿を眺めていた。
竜人族は、何より力を尊ぶ。それはかつて鱗や皮膜を求めた他種族と争っていた経験から、情などかけることなく力でねじ伏せることが身を守る術だと学んだためであった。
竜人族としての適性とは、つまりはどれほど敵に無情になれるかということ。絵本はドラゴンという竜人族の祖ともいえる存在が虐げられるこの話でどれだけ敵対心を表せるかを知るための手段であり、要はマジアの答えは不正解だったのだ。
あれこれと思い思いに答えを口にする子供たち。その中で、泣いているマジアの他にずっと黙っている子供がいた。
黒い髪に黒い尻尾。角まで黒いその少年は、竜の血を特別濃く宿している存在である。
「お前は、どう思った?」
「……俺はーー」
期待に満ちた目を方々から向けられ、ようやく口を開いた少年。同じ竜人族といえど大人から見つめれれば威圧されてしまう子供がほどんどだというのに、背筋を伸ばして少年、ドラセルは震えることなく声を発したのだった。
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