本町さんの読書旅

アイララ

文字の大きさ
上 下
9 / 17

第二幕-5

しおりを挟む
本町は返事の代わりに、曖昧に微笑んだ。
嬉しい様な、悲しい様な、そんな目で見つめながら。

「読めた方がいい時もあるし、そうじゃない時もある。……まぁ、そんな感じかな?」「そんな感じねぇ……」

その後、ファミレスで満腹になるまで食べ終えて帰宅し。
早速とばかりに、本を開き始めた。
話に聞いていただけの世界を味わう為に。
お陰で今日も寝不足にはなりそうだけど……明日は日曜日か。
読み終え、そうしてもう一度、ペラペラと読み返し。
日曜日も本を読んだり、ネットで感想を調べたり。
確かに……物凄く、しっかりと感想が書いてあるな。
自分で気付かない部分まで読み込んで、自分の知らない感情を味わってて。
……まぁ、俺としては面白かったな~位だけど。

そうして月曜日、いつもより早めに登校すると。
教室には既に本町が、机で本を読みながら到着を待機していた。
本の感想を聞く時は、いつも早めに登校してるから。
わざわざ朝一番を狙わなくても、放課後でも時間はあるのに。
……それだけ、本が好きなんだろうな。
なんて考えると、ちょっとだけ気が重くなった。

「おはよう、本町。読んで来たぞ……一巻だけな」
「一巻? なら……三巻まで行くの、ムリだった?」
「読む速度が遅いだけだよ。ったく、お前に勧められて偶に本を読んだりしてるけどな」
「その内、読むのが速くなるから。期待……それで?」
「んー……面白かった」
「うんうん、それで?」
「……人助けはした方がいいなって、そう思いました。まる」
「ほら、その、主人公についてとか。周りのキャラクターとの交流とか」
「いいんじゃねぇの? 面白いで」

周りの感想が何だろうと、俺は面白かったの感想しかない。
別にそれで構わないし……というか、折角読んだのに感想が出てこないだけだけど。
でも、やっぱし怒られるかなと思っていると……

「……面白いでいい、か。素敵。前永君らしい」
「別に素敵とまで行かないと思うけどな。本町の方が沢山、感想を言えてたし」
「いいの、その方が……だったら、もっと逆行転生の作品、読む? まだまだ読んでない本も多くて」
「それもいいけど、もう少し硬い本も読んでみたいかな。ほら、あの本はラノベというか、文章が軽いというか……そんな感じだろ?」
「文章の軽さが、内容の良し悪しを決める訳ではないと思うけど」
「じゃなくて、そっちの方が感想を話せるんじゃないかって……多分」
「なら、お勧めの本があるから。期待。今度の金曜日にあげるね」「そうだな……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

新訳 軽装歩兵アランR(Re:boot)

たくp
キャラ文芸
1918年、第一次世界大戦終戦前のフランス・ソンム地方の駐屯地で最新兵器『機械人形(マシンドール)』がUE(アンノウンエネミー)によって強奪されてしまう。 それから1年後の1919年、第一次大戦終結後のヴェルサイユ条約締結とは程遠い荒野を、軽装歩兵アラン・バイエルは駆け抜ける。 アラン・バイエル 元ジャン・クロード軽装歩兵小隊の一等兵、右肩の軽傷により戦後に除隊、表向きはマモー商会の商人を務めつつ、裏では軽装歩兵としてUEを追う。 武装は対戦車ライフル、手りゅう弾、ガトリングガン『ジョワユーズ』 デスカ 貴族院出身の情報将校で大佐、アランを雇い、対UE同盟を締結する。 貴族にしては軽いノリの人物で、誰にでも分け隔てなく接する珍しい人物。 エンフィールドリボルバーを携帯している。

女装バーならドクターストップ!

緒方あきら
キャラ文芸
 ホストをこころざし、お客さんの悲しい目を救いたいと願った青年・藤岡彰人。  夢破れ行き倒れていた彼を拾った女装バー『ドクターストップ』の主、エリザベス茂美。  見た目はゴリラ、しかし心は女神の如き懐の深さと、相手の心情を瞬時に察する洞察力の持ち主である。茂美の接客に憧れ女装バーに勤務することになった彰人は、誰もが見惚れるほどの可愛い男の娘へとなっていく。  閉ざされていた彰人の心はスタッフである美少女男の娘(!?)ナルとバーテンダー古賀との出会いや、訪れるお客さんたちの悲しい物語に触れて変わり始めていった。  そして、あらゆる悲しみを優しく包み込む茂美を目の当たりにして、『悲しい目を変えてあげたい』という思いは募っていく。  ドクターストップでの仕事に追われながら、様々な人々との交流が彰人を少しずつ変えていき――  そんなある日、茂美が倒れてしまう。  茂美のいない店を任されたのは、ほかでもない彰人であった。  茂美不在のドクターストップの最終日、心に大きな傷を負った女性を前に、彰人は心の中で何度も茂美に問いかける。そして彼女の傷を少しずつ、そっと包み込んでいくのであった。  シリアスあり、女装あり、コメディありのお手軽グルメもちょっとあり。  盛りだくさんなひとりの青年の成長物語。

ハバナイスデイズ~きっと完璧には勝てない~

415
ファンタジー
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」 普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。 何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。 死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。

戦国武将と晩ごはん

戦国さん
キャラ文芸
 ある地方都市で暮らす女子高校生・御角 倫(みかど りん)。  彼女の家には、なぜか織田信長を筆頭に、週に一度さまざまな武将が訪れてくる。  織田信長と伊達政宗との出会い。  真田兄弟の時空を超えた絆の強さ。  信長と敗走する明智光秀や関白・豊臣秀吉との邂逅。  時間も時空も超えて訪れる武将たちは、倫が振る舞う美味しい現代飯の虜になっていく。  今日も武将たちと倫の間に起こる日常の『飯』物語。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

処理中です...